オフィス・ソガ 曽我傑 

曽我傑 関係イベント年度予定

オフィス・ソガ 関連トピックス

2020年11月29日 | weblog

≪  東京両国シアターXにて試行しておりました「シアターXテクニカル・ユニオン」の常設化は諸般の都合(新型コロナウイルス問題や対応人事の課題、活動概念理念などの多様性、その他)により一旦白紙に戻します。とは言え試行開始以来既に多くの有能な方々との出会いもあり現在相当の劇場の強力な支えの部門になっているのは事実であります。今後とも引き続きユニオン(互助、相互補助、文化耕作)の考え方を元に人々が自由に交流し出会い新たな創造に繋ぐ事の出来る場として協同したいと考えております。ユニオンの名称は一旦出なくなりますが態勢は変わらずに門戸はいつでも開かれておりますので劇場技術に関心を持たれる方のスタッフ参加は歓迎するところです。

≪  福井県小浜市に現在「杉田玄白記念ミュージアム(仮名)」開設準備が進行しています。解体新書に起源する現代日本医学発祥の地でありながらこれまで余り知られずに過ぎておりますが昨今のウイルス感染状況などの社会状況から新たに近代現代日本の医学に焦点が当てられることとなったものです。開設準備室は小浜市に設けられ地元の行政、文化関係者らにより組織されて徐々にその形を見せ始めております。今後更に施設紹介などの詳細は発信されますが、近代現代文化の重要な柱の一つとしての再認識がなされる好機です。

≪  2019年度より東京両国の劇場シアターX(カイ)において試行開始している「シアターXテクニカル・ユニオン」が現時点は未だ試行段階ではあるが徐々に方向性と体制を整えつつある。劇場に関する技術的な研修機会にとどまらず制作に関しても様々な可能性が開けてくるように、更に無条件の入会後にはシアターX主催公演についてフリーパスが与えられより多くの体験実習の機会が得られる。不定期ではあるがワークショップに特化したプログラムも組まれ集中して技術実習、研修が受けられる。欧米では一般的なシステムだが日本においては未だなじみが薄く定着には時間も掛るが、この制度には劇場における新たな才能や刺激に出会える大きな可能性を見るものである。

   1983年に群馬県利根郡片品村花咲 武尊(ホタカ)地区で始まったHOTAKA MUSIC WEEK(武尊音楽週間)と、同時期にインドネシア・ジョクジャカルタで開かれていたInternational Dance and Theater Intarakusi の関係者らがその後出会い様々な共働作業を経て後に2006年より始められた大イベントASIA TRI.(アジアトライ)が2020年度をもって第15回目の記念すべき節目を迎える。一貫してアーティスト達による手作りイベントであり入場料を徴収すること無く、またいかなる企業。行政に依存しないままに続けてきている。その間には多くの支援もあり継続することが出来た。本拠地であるインドネシア以外の例えば韓国、日本、シンガポールなどでの開催には多くの経済的、時期的、規模において開催条件が異なり困難な場面も多くあるが総合的に成功の路線にあるものと見られるようになっている。2020年度の開催については特別な思いを持つ者も集まり、またこれまでに失った大切な友人や家族を悼むものでもあり舞台と共に既に計画が始まっている。

  2015年度アジア・トライ・ジャパンは第十回目を記念して両国シアターX(カイ)を中心に開催いたします。11月中旬の約一週間にわたる計画でこれからその準備が始まります。このプロジェクトはインドネシア、韓国においても同時に進められ、例年にない内容と参加規模が予定されており、それに伴うコストカバーの高いハードルを越えなければならないが、なによりも先ず参加者の共通の意志の集合こそがこのプロジェクトの土台であり力でもある。「いったい何をする会なんですか?」と訊ねられ続けて十年間やってこられた事実には現代社会の求める、或いは今後こうあるべきフェスティバルのプロトタイプとして世に示されるものである。

≪  2014年12月17日から三日間、「ピアニッシモのテロリズム」のタイトルの下、東京中野テルプシコールにてライブ演奏と舞踏による公演を予定している。演奏は連日、多田正美と曽我傑だが各日毎に共演する舞踏家が異なり、またそれぞれのサブタイトルも付けられる。第一夜は武内靖彦の舞踏で「沈黙と真珠」、第二夜は大森政秀「危険な夜」、第三夜は上杉満代「涙のパヴァーヌ」。詳細はフライヤーなどでご確認頂くことにして、この顔ぶれが集まる三日間を大勢の観客、特に若い世代の人達と時間を共有したいところである。各日毎に終演後は会場にて出演者と共に語り合う時間を設けております。

≪  滋賀県大津市葛川で開催された「アジア・トライ・ジャパン 2014」にはインドネシアより25人のダンサー、ミュージシャン、更に劇場ワークはじめ様々なプロジェクト運営サポートボランティアが参加した。日本からも江戸糸あやつり人形座や安田理恵、川本裕子、ラヴィの舞踏ユニット、地元より尺八演奏の塚本茂氏らの参加を得て多彩な内容が展開した。開演時はまだ日中の太陽の下だったが三時間近い公演のうちに気が付けば山間の深い闇へと誘われ、通常の街中の劇場では味わえない特異な感覚にさせられる催しとなった。しかしこの季節この地方は既に寒冷期に差し掛かり出演者、観客共に同じ寒さと付き合う事になる。ジョクジャカルタ州スレマン県の行政府関係者も十人ほど来日参加して日本側関係者らと共に次年度十周年記念事業に向けての協議も行われた。本イベントを通じ、今後の継続の課題と同時に大いなる可能性、社会的インパクトの強さなど様々な視座を得ることが出来た。

≪  2015年はタデウシュ・カントル生誕100年となり各地で関連の催しが予定されている。演劇におけるその位置は既に周知で、多くはカントルを巡る知識のツアーの様な形で再び展開されようとしているが私達に必要なのは「お勉強」では無く「カントル現象に至るプロセス解析と、共通する芸術の動機」なのであり、勿論、個の才能以外の時代背景やら当時の辺境の価値観のアナライズが冷静になされねばならない。その上で現代の劇場や創作行為に関する様相についても異なる景色が見えてきて新たなる芸術行為を刺激する。日本では早稲田小劇場はじめ、多くの前衛演劇集団から大野一雄に至る舞踏の人々を通じて正面から社会と時代を見直す時でもあり、基本的価値について考える良い機会でもある。先達てのジョン・ケージの百年もそうだったが大事な事柄について記憶喪失になりかかることからの防衛としても、とても重要な機会となるのは言うまでも無い。オフィス・ソガとしてもいくつかの関連事業に参加する事になる。

≪    ジョクジャを中心に開催している「アジア・トライ」が来年2015年度に第10回目の記念イベントを開催するまでになった。今年2014年度開催はその意味でも記念開催のプレイヴェント的なものとなる予定。しかし先日の火山噴火による地域のダメージや会場側の諸事情により本年度の開催場所に変更が予想される事は大変残念な事態である。それでも、諸々の困難を乗り越えてきた人々が土台を支えるこのイヴェントはおそらくこれを機に、私たちの予想に収まらないだろう結果をまた見せてくれるはずと新たに楽しみが増すところでもある。本物のコンテンポラリーがここで生まれるのだろう。

≪ 2014年お正月早々の秀島実舞踏公演(鎌倉)は満員の観客の中で実に舞踏が展開された。観客の中には舞踏に慣れて辛口な見方をする人達も大勢来ていたようだが、この時代に私達が向き合わねばならないこととは何であるかを突き付けられるような、かと言って決して社会的にどうこうと言う月並みな内容ではなく、あくまでも自身に対しての問いかけの様であった。質としてダンサーであり本当に踊りの出来る人でありながら、抑制の効いた秀島の舞台には沢山の感動が満ちていた。以前行われた浄智寺公演、長谷の水道施設跡公演とは違って、基本的には劇場型ソロ公演だが、大野一雄、土方巽の50年を通過した舞踏家として今後も更に私達を刺激し続けて欲しいと思う。

 2013年12月2日と3日に吉祥寺シアターにて開催される「ダンスリンクリング」において、この時代にとても重要で貴重であろう公演が行われる。 『三つの神話』のタイトルの下、石井かほる、上杉満代、加藤みや子の三氏によるコラボで、いずれ神話では無く伝説になるかもしれないほどの濃厚な時間密度を予感させる。それぞれが日頃大きな一枚看板として追随を許さないほどのキャリアの先端で再び出会う事の奇跡の瞬間に現れるスパークによって、観る者が大いに刺激され触発される愉快を味わうに違いない。特に若い世代には、彼らの人生にとって貴重なチャンスとなるだろう。

≪ 「即興・即響・触境」の試みから多くの収穫を得る事が出来ました。充分な広報活動も出来ないままで公演の三日間を過ごしましたが、まるで雑然とした倉庫の中の出来事の様な環境に沢山のゲストと共に出演者のキャリアと存在感のある時間で埋め尽くされた感じで、充実した結果が現れたのではと感じています。またサポートに徹してくれた方々にも改めて本イベントに対する期待感と好奇心の旺盛ぶりを痛感させられ、主催した者の今後の責任を思い知らされました。本来、充分なレポートをしなければならないところですが、余にも内容の厚さに圧倒されてどうにも手が付かない状況ですが、ともかくご支援いただいた皆様方にこの場で厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

≪ 7月13日に行われた「長谷川恵美子 舞踏公演 蛍」では、舞踏本来の力や感動を見せて頂きました。今年で90歳という年齢と舞台キャリアの底力が、小柄な長谷川さんの存在感自体に満ち溢れ、飾らず作らず徹底した簡素の中に豊饒なる生の力を見せつける、或る意味で究極の舞台だったとも言えるのではないだろうか。この事態は舞踏に限らず、後続の若者にとり「今後如何に生きるか」について、とても重要な指針となるだろうし、その一つの答えを教えて頂いたようにも思える。この舞台に立ち会えた事を深く感謝するのみです。

≪ 8月29日(木) 30日(金) 31日(土)  18:00~

 「 即興・即響・触境—SOKKYOH 」 Dream in a landscape of John Cage 101 (中野テルプシコール) 

      開場・開演は午後6時ですが早めのご来場者は会場内にお入り頂けます。

                 チケット:パスチケット(三日間出入り自由) 2,000円(学生以下無料)

      舞踏 : 武内靖彦  上杉満代

      演奏 : 多田正美(サウンド・エンカウンター)

            河合孝治(サウンド・コンセプター)

            曽我 傑(サウンド・ドロワー)

     (使用楽器、音具 — ピアノ、シンセサイザー、ゴング、ギター、キーボード、PC、その他)

 日本、インドネシア、シンガポール、中国での開催が計画されていたBIMO DANCE THEATERとDYNIOSのコラボレーション公演が、後援機関の関係により、今回は延期し近い将来、適切なところで新たに時期設定するとのこと。理由は主たる後援者がシンガポールに本社を持ち天然ガスと石油を扱う中国系の会社で、先般の尖閣問題により現況下での開催が特に中国内で危ぶまれると言うもの。予想はされていたがやはり残念なことである。しかし主催者の舞台への情熱には変わり無く、今回の延期が更に彼らの、公演実現に向けた期待感を増長させるものと思われる。近々に当事者達により今後について話し合われる場が京都で持たれる予定。

 舞踏家・長谷川恵美子さんの舞台が7月に有ります。今年90歳で『ほたる』と題された舞台は、上杉満代氏の言葉も大いに受けて現在熟成中の様子。希有な舞踏の身体を目の当たりに出来る事は、その場に居合わせた者にとって貴重な「解かれた時間」を体感するものと思います。

≪  2013年6月20日~23日、韓国ソウル・アートセンターに於いて再びジョン・ケージを公演します。今回はFour Wallsの他にThe Perilous Night(危険な夜)を追加して紹介します。二曲共に1944年作で、「危険な夜」はケージが様々にプリペアードを試行する中でも成熟した作品であり、プリペアード素材にまで入念な具体的イメージを織り込んだ秀逸の作品です。後にジャスパー・ジョーンズの作品にも再生されるこの音色とリズムの音楽は踊りの身体にも反映されます。ニューヨーク時代にケージやフルクサスの連中と活動を共にしていた舞踊家シンチャ・ホンのダンス、日本での先鋭的現代音楽グループGAPのメンバーでもあり現代美術家としても活動を続ける多田正美のピアノ演奏が主な公演核を成すこの機会はケージ生誕101年目にして実現する感動を見せてくれるでしょう。

≪ 2013年3月23日(土)24日(日)の二日間、福岡吉塚駅近くの倉庫の二階に劇衆上海素麺工場が操業再開。昨年の横浜公演から半年、この間にも浮世の波はただならず、そろそろ車椅子の男の拳銃が選び出す的の姿が現れ出す頃。会場となる倉庫は普段は何やらお宝の山だとか。蔵の出来事だが現代に於いては「お蔵になるもの」こそに価値が見出せるのかも知れない。この浮世草子は西鶴の日本永代蔵現代版「羅紗面天麩羅その四−的」をあぶり出す。小さなスマホ画面の範囲に標的を求めるような敵の見えない「的外れ」社会がこの際、「的」にされているのかも。血ん潟の産物がまた一つ増えることになる。 

≪ 2013年3月に地球に接触するかもしれない小惑星が現在確認されているとか。サイズは直径200m前後で、かなりの確率で衝突が予想されるらしい。飛行コースがアメリカ・カリフォルニア~東京~北京~、辺りが計算されているが、更に詳細についてはもう少し接近してからでないと質量を量れないので読めないそうだ。「お願いです、あそこに落ちてくれませんか!そしたら、もうちょっとマシな時代に戻るのだけど。」

≪  先日(2012年10月18,19日)韓国ソウルのSeoul National Theaterで行われた「世界の芸術祭」の一環で行った「ジョン・ケージ生誕100年記念公演」において韓国の前衛舞踊家ホン・シンジャの踊りと多田正美のピアノ演奏での公演「Four Walls」が人々に深い感銘を与えたという事で、フェスティバルでの最高の評価を得、11月に再度アンコール公演が決定いたしました。ホン・シンジャはNY活動時期にジョン・ケージとの親交も深くこの作品でも数々の舞台を行っており、私もそのいくつかには以前より関わってきましたが、今回ほどシンプルで緊張感のある舞台は大変刺激的なものでした。大げさで派手な大向こうを張ったような舞台を好む韓国に於いてこのような舞台に最高賞を与える現在の韓国の観客レベルの高さにも驚きですが、そのために再度公演の機会を設けて「なぜこれが良いのか」を皆で改めて確認したいという制作委員会の姿勢にも頭が下がる思いです。日本の公演環境、事情などを顧みるに、先日開催のアジア・トライ・ジャパンの大変さと併せてその違いを痛感します。しかし、作って行く側としては、こういうことを何度も超えられるかどうかが試されて後にそれぞれの人生の「是か非か」の答えが出されるのでしょうか。

≪ 2012年度アジア・トライは日本(横浜)とインドネシア(ジョクジャカルタ、ジャカルタ)開催を無事終了致しました。ご協力下さいました方々には心から御礼申し上げます。特に今回、ジョクジャカルタでの大成功を報告致します。久し振りに三日間の開催を実現できましたが、その全てが超満員の観客の中で行われ、会場に入りきらない観客のために会場外の駐車場に2面の大スクリーンを設置して中の公演の様子を実況中継したほどでした。公演中はインドネシアの日常の雰囲気とは全く異なり、全体が静まり返り集中した空気で、あたかも神聖な時間のようでした。入場料は完全無料で、飲み物や簡単な食べ物は会場提供者であるウレンセンタル(バティック・ミュージアム)の代表者Mr.トーマスからの来場者に対する感謝の気持ちから毎回提供されました。頭の下がる思いです。

ジョクジャの成功は以前より広くインドネシアの他、東南アジア圏に伝わっており、この数年は数箇所のアジア・トライ新規開催が要請され模索されておりましたが、本年開催を機にジャカルタのハリス・ギャラリーコミュニティを主催とした"ASIA TRI. Jakarta”(来年本開催)のプレイベントをジョクジャの後に行い、これも連日の雨の中でしたが大好評でした。ここから本開催のイメージを関係者間で確認し共有することとし、具体的会場となるスペースのグランドプラン作成まで進みました。今後の展開が大いに期待されます。

≪ 日本インドネシア友好年事業の一つとして2008年に開催された「ビモ・ダンスシアター&ディニオスダンスコンサート」は多くの感動とインパクトを人々に残したが、その後、音楽で参加していた私達のかけがえのない友人イニシスリの死によって、熱く舞台の再演を望む声の中、中断していた。そんな中でシンガポールのナショナル・オーケストラ・オフィスからの途切れる事のない要望を受け、最近検討が始められた。ディニオスの本拠地である京都にこの度関係者一同集い、故イニシスリに想いを寄せつつ再び実現の道を探ることとなった。諸々の開催条件をクリアしなければならないが、もし仮に計画が順調に運べばこの秋以降にはシンガポールと京都において、もう一度あの感動の舞台が実現することになる。作品はリメイクするがビモ、ディニオス両者は前作「JIWA」のコンセプトを生かしたいとしているので、また舞台に新しい花が咲く事だろう。

≪ 先日のTPAM(横浜BankARTにて開催)に参加した美学校主催「結晶への憧憬」で、若手6人の女性舞踏家が同じ舞台空間でそれぞれの時間を示した。似た企画は他にもいくつかあるが、これには一貫した企画軸があり、そこでのメッセージには主催者の確かな現代の舞踏の方向を探る意思が観るものに充分に伝えられた。観客の一人としての感想は以下のようなものである。

 (高橋理通子)微細な異化の力、時間感覚のシャープな動きに反映した舞踏体の輪郭は「瞬間即永遠」のリアリズムを見せてくれた。

 (横滑ナナ)背景の言葉達を乗り越える「物質としての身体」性、不確定空間に放出された無垢な不安定感など、舞踏の多彩な在りようの一つが確実に現れてきていた。

 (ラヴィ)舞台プロセスを拠り代にしての幅の有る高い作品性は、後半に組み込んだ(声)に立ち現れる先端の身体状況を生み出した。これは実に挑戦的な出来事であり、当然演劇的との反応を引き受けてあえて踏み込んだ領域で、舞踏の幅をもう一段拡張するものとして鑑賞できた。

 (大倉摩矢子)中空に漂う様な存在感で、決して大きいとは言えないスケールの彼女の舞台は逆にこの企画のタイトルである「結晶への憧憬」を感じさせた。内なる景色が明確に外化する様を見た。

 (田村のん)人が立つためにはどれほどの内的過程に出会う事かと思わせるほど、限りなく訪れる時間の波に翻弄される身体を示した。またそのことに素直に従う心の置き所さえも見せてくれた。

 (百合子)空間に似合ったフォルムとスケール感があり、いわゆる美術作品としても成立しそうな印象の瞬間であった。「アイデアを欲する」身体の動機、背景の深さを見せてくれた。

≪ 今年(2012年)は作曲家ジョン・ケージ生誕からちょうど百年にあたり、様々な記念の催しが世界で開催される予定。彼の誕生日が9月なので(日にちまで詳しくは何かの資料で参照して下さい)、その時期に合わせて沢山のコンサートやイベントが計画されているようだ。近いところでは韓国でニューヨーク時代にジョン・ケージ、ヨーゼフ・ボイス、ナムジュン・パイク、カニングハムらと活動を共にしていた舞踊家ホン・シンジャが中心となってのイベントが計画されている。ケージには今の日本にも縁の深い作曲家、演奏家、美術家など多く、改めて彼の現代への反映の意義を考える機会が改めて訪れる。

≪ 大牟田の古いキャバレー街に出現した劇衆・上海素麺工場の公演「羅紗面天麩羅 其の二 青」は満員御礼の中、まるで水蒸気爆発のようなインパクトを残し、あっという間の出来事が過ぎました。どこかフランス現代劇の様なエスプリの効いた時間のうねりは、とかくアングラに在りがちの大向こうを張った演出や、過剰な表現、エログロナンセンスなどを全く感じさせず、演者達の身体性そのものから発する力、感性から生まれてくるようで、一瞬一瞬に真の前衛を見せてくれました。戯作者でもある役者の支那海 東が座する車いすの足元に拡がる古賀忠昭の「血ん潟」の潮の満ち引きに誘われて見え隠れする舞踏家 上杉満代の醸成する空気や風は、キャリアと実力のある役者達と共に現代に対する最も大切な「人の感性」の姿を示してくれたように思います。おかしく重く、時にはとても軽く、カラカラとしていたり、ガチャガチャだったり、冗談の様な本気の様な、実に多彩に表情を変える、まるでもう一つの有明の干潟を観たようでした。

≪ 皆さん、セシウムの色をご存知ですか?見当もつかない方は11月20日(日)福岡県大牟田市“クラブ富士”で上演される劇衆・上海素麺工場「羅紗面天麩羅 其の二」作:支那海 東)のチラシをゲットしてご覧になり更にはその舞台を観られますと、良っくお分かりになります。

≪ 武内靖彦舞踏公演“舞踏よりの召喚・20世紀牡丹”(踏業40周年記念独舞リサイタル)が座・高円寺において開踏されました。三日間の公演はいずれも盛況で、踏業40年を経てなお前衛で在り続ける孤高の舞踏家の姿を目前にしました。特に若い世代へのインパクトが強かったようで、シアター舞踏以外は通常スタジオ規模の粘質な空気の中で行われる事が多い舞踏状況にあって、座・高円寺の抜けた空間での公演は舞踏の本質、汎用性の高さを垣間見せました。特に武内の舞台では一切の空間装飾を省き(唯一のポイントとして床に開けた穴が一つのみ)劇場環境のハードウェアむき出しの中で展開した事が大いに成功の要因の一つに考えられます。また40年の過去を振り返る感傷も一切無く、いさぎよく「ここから再び始める」決意の様なものまで見せてくれました。いづれこの会は「伝説」になるのだろうが、確実に将来の価値創造に資したものになったことは間違いないことと思います。

≪ 舞踏家・上杉満代が主催するワークショップ「火曜会」が毎月2回のペースで中野スタジオ・サイプレスにおいて開かれており、多くの参加者と共に充実した時間を過ごしているようです。自分の身体と向き合い謙虚に自由について感覚を研ぐ神経を開発してゆくような時間で、ここから新しい舞踏が生まれ新たな舞踏の才能が出てくる事が期待されます。

≪ 去る5月28日に舞踏家、高井富子さんが急逝されました。長い舞台生活の中でたびたびご一緒させて頂く機会も多く、最近ではインドネシア・ジョクジャカルタで開催した「Butoh Exhibition - Life of BUTOH」にもご参加いただき、現地にたくさんの舞踏ファンを創って下さいました。彼女の足跡、功績にたいして私たちの心からの感謝を捧げたいと思います。一旦、高井富子さんの舞台の幕は下ります。

≪ 2011年秋、いよいよ支那海東劇衆上海素麺工場が操業再開に向けて燃料チャージを始めました。強烈作品「羅紗面天麩羅」のニューヴァージョンで大いなる有明の海から時間と空間の大海を目指します。当初目標は大牟田市に亡霊のごとく残されたままの古いキャバレーの建物での公演。船長 支那海東の見ている羅針盤がいずれを指し示すのか、まるで明日の遠足を思い描いて不可思議な興奮で眠られない子供のような日々を私達もこれから過ごします。

≪ 尺八の中村明一が立ち上げた「スタジオ・サウンド ポット」(京王線芦花公園駅又は八幡山駅が最寄り駅)に伺いました。彼の音感覚がそのままスタジオの構造に表現されていると思えるほどに、綿密な設計と徹底して微細音にこだわった素晴らしいスタジオ環境を作り上げています。特に繊細を極めなければならない倍音世界にどこまでも迫ってゆこうとする気迫は、設備を構成する各要素隅々まで行き届き、後は「この場所で人がどこまで音の微細世界に遊べるか、迫れるか、拡げられるか」を試そうとするかのような完成度の高さです。ここまで純粋に音を追求する姿に現代の虚無僧を重ねて見る思いがすると同時に、音楽の精神性の高さに直接触れられた時間でした。

 2011年度インドネシアでのASIA TRI.Jogjaは9月23日~28日の間に開催を予定してますが、その会場の一つにメラピ火山の噴火や度重なる地震災害を粘り強く乗り越えてきている(地域としては現在もなお復興途中ではあるが)カリウラン−ウレンセンタル(バティック・ミュージアム)をメインとして開かれます。世界中から多くのアーティストの参加が予定されており、今の日本の状況に照らしても自分達文化に携わる者の立ち位置について教わるものが多いだろう。ジョグジャに引き続き日本、韓国においてもそれぞれのアジア・トライを計画するが、一番の課題がいつもコストや価値観の問題があり、インドネシアにおけるほどのダイナミズムには程遠いものがありますが、彼らと共にぜひ実現し続けたいものです。

≪ 舞踏の百合子が2010年度舞踊批評家協会賞新人賞を受賞しました。「デルメトーレ」シリーズを通じて着実に舞踏を獲得している姿を評価されたものと思います。一貫して生活基盤である「福祉園」という強力な背景を持ち、日々、多くの人と接するチャンスが有ることが、独特な世界の大きな劇場動機と力を得るきっかけになっているのではと想像されます。若手の一人として更に今後に期待したいものです。

≪ 北京から帰ってまもなくの東北地震で多くの方々にご心配頂きました。私も友人知人の安否確認をとアクションしましたが、通信制限か回線飽和でほとんど不通状態でした。インターネットはほぼ大丈夫ということでこの場で改めて平常通りなのをお知らせいたします。それにしても阪神淡路に続き、同時代人の人生の中でも相当レアケースの災害です。

≪ Landscape Encounters として多田正美の個展が、日本橋高島屋6階美術画廊Xにおいて2011年2月14日まで開催されています。多田正美はボーダーレスアートの前衛者として70年代より変わらずに創作し続けており、美学校当時からのライブパフォーマンスの延長上に美術作品が新鮮に生まれてきます。会場にはサウンドインスタレーションと共に多くの時間が展示されていますので是非一度体験して下さい。

≪ 2010年暮れに友人の相川正明が亡くなった。何とも寂しい。彼とは舞台を通じて35年以上を共に生きてきた。最近は同じ舞台を創る機会が少なくなってしまっていたが、それでも彼の名前をあちらこちらで見かけては内心「すごいな~!」と刺激された。以前は海外の現場で偶然にも良く出くわしたものだ。お互いに「あれーッ?相川さん?」「おーッ!あれーッ、ソガケツじゃん、そっちは何やってんの?」で始まって、時間があればそれぞれの舞台を見せ合ったものだ。思い出す瞬間だけでもエジンバラ、ソウル、インドネシア、成田空港、テルプシコールなどなど。また、芥正彦氏の縁で出会った初め頃は私はほとんど演奏や作曲専門で舞台に関わりその際の照明はほとんど相川さんと先に逝ってしまった赤坂正だった。この二人の優れた芸術家の存在が私の皮膚から剥がれてしまって、新しく生まれた寂しい気持ちと、またこれから付き合わねばならなくなってしまった。もう一回奴らと一緒に、世の中のくだらない部分をアジテイトして清涼な風を吹かせたい!

≪ 舞踏の長谷川恵美子さんの公演が若く新しい多くの舞踏の観客を呼びました。87歳という年齢を忘れさせるほどに集中して一時間に及ぶ会を中野テルプシコールに於いて11月13日と14日両日にかけて行い、独特の舞踏の世界を展開し、また更に自由なイメージを創出するエネルギーを私達に感じさせてくれました。

≪ 昨年惜しくも若くして他界したインドネシアのスーパーミュージシャンINNISISURIを愛してやまない多くの人々によって、生前彼も数多く名演奏で参加し、また大勢の弟子達を伴って私達と一緒にやってきたASIA TRI.を彼の住んでいたジャカルタでも開催しようという動きが本格的になってきています。実現すればASIA TRI. JAKARTAが今後、プロジェクトの大きな柱になってきそうです。
≪ ASIA TRI. Japan が10月28日、29日に大井町きゅりあんホールにおいて、舞踊家の武元賀寿子さんの場をお借りして小規模ながら開かれます。インドネシアより昨年の「越後妻有アート・トリエンナーレ 大地の芸術祭」に出演したTEMBI Dance Company が参加します。諸般の都合で残念ながら今回は前回までのようなツアーが組めず、また韓国からの参加も出来ませんでしたが、それでも多くの日本人ダンサーと共にする舞台はダンスシアターの楽しみを広げてくれるものです。
≪ インドネシア・ジョクジャカルタにまた一つ楽しみな場所が出来ます。以前ジャワ舞踊の巨匠バゴンの創設した芸術学校PADEPOKANの多くの施設を現在、日本でもおなじみのBESAR WIDODOらがディレクションしてリノベイトしており、素晴らしい劇場群に生まれ変わろうとしています。広大な敷地の各所に舞台となる空間が配され、スタジオやカフェ、エキジビションスペースなども併設しており、特にメインの劇場は理想的な空間バランスをもっていて訪れる人は誰もが創造意欲を掻き立てられると思います。今後、アジア・トライ、JOGJA International Arts Performing Festivalの共同開催も協議されているところです。
 劇衆上海素麺工場の微振動が始まります。2010年12月10日(金)11日(土)12日(日)の三日間、福岡の劇団拠点にて開催。タイトル「羅紗面天麩羅」(作 支那海 東)。近未来の大噴火の予兆がここで見られます。出演者の花々も既に痙攣が始まっているようです。
≪ 2010年度のASIA TRI.JOGJAアジア・トライ・ジョクジャが10月7日、盛会裏に終了しました。今年は異常気象で例年開催していたKaliuranの野外舞台が設営出来ず、またメラピ火山活動が活発化していることもあり、そのハイリスクを避けました。代わりにTEMBIの舞台での開催となり、この伝統的雰囲気の舞台で繰り広げられたコンテンポラリーダンスや熱いパーカッションコンサートは独特のエネルギーあるイベントになりました。 また10月3日から三日間開催のJogja International Performing Arts Festival(昨年までJAF Jogja Art Festivalと称していた)が恒例のTAMAN BUDAYA SOCIETEDで開催され、連日通路はじめ立ち見の隙間もないほどの大勢の観客で埋まりました。出演者はインド、チリ、ベネズエラ、日本、フランス、スペイン、インドネシアなど様々な地域から参加を頂きました。
≪ 2010年12月22,23日両日に、上杉満代大森政秀武内靖彦
の3人による舞踏公演が中野テルプシコールに於いて開催されることが決定しました。共に大野一雄に深く関わりを持ち、今日までに大きく影響を受けたその巨星を失ったことについて、大野一雄に対するオマージュ、レクイエム、追悼の心を持ち寄るものでもあります。それぞれが一枚看板を持って活躍する彼らが揃って一つの舞台を創るのはこれが初めてでの事でもあり、土方巽、大野一雄亡き後の舞踏を新たに生みだしてゆこうとする決意の舞台とも見えます。多くの方々に、この記念すべき公演を見届けてもらいたいものです。

 先日、青森県弘前市のSpace DENEGA(スペース・デネガ)に於いて、現地在住の山田スイッチさん制作で、“雪雄子舞踏ソロ公演「復活」”が実現した。これは先達て宇都宮の「ギャラリー悠日」で紹介されたものを再演したのだが、会場の条件や環境、地域の違いなどからか、全く別の息吹となって出現した。会場のスペース・デネガは煉瓦作りで中庭があり、実に北欧か東欧風でもあり、落ち着いた環境で、劇場実現に集中するのに大きな受け皿の条件を持っていた。また、山田スイッチさんを中心に、会場のスタッフの方々、地元ボランティアの方々の打算の全く無い関わりに、本当に気持ちの良い時間を過ごすことが出来た。

 演劇の笛田宇一朗さん(笛田宇一朗演劇事務所主催)と糸操り人形の田中純さん(先代の結城孫三郎さん)お二人が中心となり、山梨の方での新たな演劇祭開催計画があります。今年、7月に山梨での『マクベス』公演を機にその後、9月1日~5日の早稲田公演を通して、計画は更に進展するものと思われます。この時代の“演劇祭”の姿が楽しみなところです。

 南宇都宮駅近くの“ギャラリー悠日(ユウジツ)”で、雪雄子(舞踏)と田口ランディ(公演テキストと朗読)がコラボする公演が行われました。天才放浪絵師“香川大介”個展のオープニングイベントの一つとして、彼の長さ9mに及ぶ圧倒的作品の他、数点の作品に囲まれての公演『復活』は大変充実したものとなり、たくさんの観客に来て頂きました。またこの会場の建物は元大谷石で作られた米蔵だったそうで、「ギャラリー悠日」としてちょうど5年の実績を持ち、既に数々の優れた作品が紹介されており、更に数日前には“ナベサダ”コンサートを行うなど、パフォーマンスも多彩に展開されています。

 舞踏の上杉満代さんが「2009年度 第41回 舞踊批評家協会賞」を受賞されました。

  連続ソロ舞踏公演「ベイビーメランコリア−夢六夜−」(2009年から2010年にかけて中野テルプシコールで行った計6回の公演)が特に評価されたものです。

 昨年度(2009年)の“越後妻有アート・トリエンナーレ 大地の芸術祭”開催を機に、松代地区メイン会場である“農舞台”イベントスペースに約400人収容可能な仮設の客席が用意されました。会期終了後には撤収され資材庫に保管された状態ですが、地元の腕の良い大工さんによって制作され、通常の劇場感覚とは全く違った方式のツールとなりました。取り扱いは、そのスケールからも容易ではないですが、様々なレイアウトの可能性もあり、今後のイベント展開において大いに空間モチベーションが高まったと評価できます。また、この組み立て式客席と共に桟敷席なども加えると、農舞台全体として500~700名程度の収容が可能となりました。開催されるイベント内容もその可能性、バリエーションが飛躍的に広がります。

 支那海東(しなかい あずま)率いる劇団「上海素麺工場」が2009年に福岡県百通地浜(ももちはま)で行った公演「セカンドハネムーン」の記録DVDがリリースされています。全編3時間を超える大作で、海岸に特設の舞台の様子と共に、観客と主演者達の熱気溢れる現場の臨場感が記録されており、そのスケールの大きさがよく伝わって来るような内容になっています。

 プロトシアターが主催する“アジアミーツアジア”が、今年10月に開催され、アジア各地から多くの演劇グループが高田馬場プロトシアターに集い、カンファレンス初め舞台公演など様々に活動が展開されます。お楽しみに。

 先日、群馬県桐生市で行った工藤丈輝(舞踏)石坂亥士(打楽器・神楽太鼓)の公演会場となった“桐生 有鄰館 旧酒蔵”は、現在様々な公演などに使用しながら、文化財として保存されている建物で、内部の特徴的な柱の他、壁を構成するもの全てが現役当時そのままに残されており、周囲の町の状況と調和して、現代に貴重な時間を与えてくれる。また、ここを劇場として活用出来ることに幸運を感じるものです。

 「越後妻有アートトリエンナーレ2009 大地の芸術祭」公式記録集が現代企画室より出版されています。インドネシアから招聘したビモ・ダンスシアタータンビ・ダンスカンパニーの舞台写真、ブラックステージ制作のヘンリク・ハカンソン作品「音の波」の様子などが、他のすべての参加作品と共に紹介されております。


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