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“ 嵐が吹き消した 恵みのろうそくを 再び取り上げ、それに新しい明かりを灯さなければならぬ。” 教皇ヨハネ二十三世

file.no-54 『SILENT HILL』

2006-08-13 04:34:58 | 映画
ゲーム『サイレントヒル』シリーズが、海外で実写映画となった・・・それが映画『サイレントヒル(原題:SILENT HILL)』。
七月に日本公開。まだ、上映中の映画館もあることでしょう。
私は、もちろん公開初日に観劇に行きました。レイトショーでしたが。
仕事から帰り、入浴し、映画館に滑り込んだのが、上映五分前。
ドタバタとしましたが、前々から公開を期待して待っていたものですから、そうまでしてでも観たかったのです。

  『SILENT HILL』(邦題:サイレントヒル)
  2006年世界公開。


では、レヴューを。

【あらすじ】
ローズとクリストファーの養女・シャロン。
9歳になるこの少女は、最近、奇妙な行動が多かった。
真夜中、家の周りを彷徨う夢遊病にかかっていたのだ。
半狂乱になりシャロンを探す、母親ローズ。父親クリストファーは、娘を精神病院に入れることすら考えていた。
ある夜、ついにシャロンは自宅近くの川の縁をさまよい、滝壺へと落ちかける。

意識のない彼女を前にして、滝壺が姿を変える。それはどこかの炭鉱らしき大穴。
眼もくらむような深さがあり、その底には劫火が燃え盛っていた。
ありえない。それは幻だったのか・・・。

意識をなくす娘の姿に心痛のあまり憔悴するローズ。
その時、シャロンがつぶやく。「 サイレントヒル 」と・・・。

サイレントヒル、それは、三十年前に大火災に見舞われ、多くの住人が焼け死んだ街。
今も、地下の炭鉱が燃え続け、人が住めぬ街。
ローズは、シャロンの毎夜の夢遊病の原因が、その街にあるのだと直感する。クリストファーに黙って、シャロンと共にサイレントヒルに向かう。

途中、警邏中であった婦人警官シビルとカーチェイスを繰り広げ、ついに彼女たち三人はサイレントヒルにたどり着く。
濃い霧に覆われ、空から灰の舞い降りる、外界と隔絶した感のあるサイレントヒル。
事実、その街は悪意によって、外界からは閉ざされていたのだ。

ありえざる悪夢そのものの生物。街に閉じ込められていた狂信者たち。サイレンとともに、悪意が具現化する危険な世界。
ローズは、シビルとともに、消えてしまった愛娘シャロンを探して、この街を駆け巡るのである。

・・・とまぁ、こんな感じに物語は始まります。
世界観とストーリィは、ゲーム・サイレントヒルに忠実。おぞましくも美しい、ホラー・ゲームの世界を実に忠実に映画へと転写していると思います。
ゲーム会社コナミの作品を映画化し、成功したのは、近年では『バイオハザード』が記憶に新しいですが、本作『サイレントヒル』もそれに続くものだと思います。

ホラー映画、ではありますが、出演者たちは、なかなかに好演。
ローズ、シャロンを心配する父親クリストファー役のショーン・ビーン。
映画『ロード・オヴ・ザ・リング』のボロミア卿を好演した、英国人俳優として認知されていますね。近作『フライトプラン』では、ジョディ・フォスター演じる飛行機内で消えた娘を探しまくる母親に対して、冷徹に対応する機長役を演じていたのをご記憶の方もいるのではありますまいか。
本作では、自分の言葉足りなさから、妻たちだけでサイレントヒルに向かわせ、そこで消息を絶った二人を心底から案じる夫役を見事に演じきっています。特に、世界を隔てて、妻の気配を敏感に察知する彼の演技には、いっそ「ストーカー?」「電波?」と思わせられるほど。

狂信者たちの女首領・クリスタベラ。狂信者にして、扇動家である彼女を演じるのは、英国でキャリアを積んだアリス・クリーグ。
同じく、英国で演技を修行したパトリック・スチュワートと共演した、映画『スタートレック/ファーストコンタクト』にて人類に敵対する異種知性体の指導者役が、最も印象が強いでしょうか。
脇役が味があるので、誰の演技も気が抜けず、楽しめました。

『サイレントヒル』には、興味深い要素が含まれています。
ホラー映画だという商品タグをはずせば、その要素は大変に示唆的です。
作中に登場する狂信者たちと、その教会。これには、最近何かと世間を騒がす大小の宗教団体のことを考えさせられます。
狂信者達が、不義密通の子であるからと、幼女を火あぶりにする場面。その報いに悪夢の世界に囚われたことを、信仰への試練だと捉える場面。
また、悪意を向けられた人間が、それ以上の悪意でもって復讐することは、至極尤もではないかと考えさせられる場面。

ただ観るだけでも楽しませてくれるのが映画です。ある種の示唆をも感じられるとなると、これはもう「ご馳走様」といわざるを得ない。
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