file.no-100 『KINGDOM HEARTS Ⅱ』 parte2

　
ＫＨ２作中の「ノーバディ」とは、「存在しない者」の意。
存在するが、「心」が無い。
虚無に消えゆく、さだめの者。

心を求めてあがく、ノーバディたちの組織：ⅩⅢ機関（全員イケメン美男美女）が、今作の敵ですが…敵役に、どこまでも味をつけるのがスクウェアの素晴らしいところ。
FF１２と違い、背後関係こそ複雑ですが、「誰がメインか」はっきりしており、主人公「空」にも心の闇の要素を加味して、彼のノーバディとして「六サス」をキャスティング。
その六サスにも「6日間」のドラマを与えたことで、シナリオの深みがグッと増していると思います。

賢者暗セムは、六サスを、本体「空」に戻すために、彼を仮想世界トワイライトタウンに置く。
六サスが「ともだち」と信じていたものは――「夏休み」の思い出は、すべてが紛い物。
暗セムの創りだした、偽物。
「六サス」としての意識が消える寸前のシーンは、観ていて涙腺がゆるむぐらい。
暗セムの容赦ないセリフもよい。
自身がノーバディであり、ⅩⅢ機関の一人でもあった事を思い出した六サスに、

　「おまえが何を知っても、運命が変わるわけではない。」
　「ノーバディに権利など、ない。 そもそもノーバディは、存在すら許されない者。」

お前など、早く死ね、と言わんばかり。
プレイヤーが操作してきたキャラへのセリフとしては、秀逸。 ここまでキッツイセリフを投げるゲームは、少年向けとしては珍しいのでは？ そしてこの後、ホントに消えますし。
ⅩⅢ機関を「悪者だよな？」と尋ねる問いにも、

　「善悪はわからない。不完全な人たちの集まり。…完全を、求めている。」

…と答えさせてますし。シナリオが、グッジョブ。 善悪でばっさり切っていないところが、私好み。
ムービーとプレイ動画をミックスしたＤＶＤがあれば、買いたいところ。
…ニコニコ動画で、高技能でのプレイ動画、それをムービー、シナリオ、ＢＧＭを編集したものが公開されてます。
そして、その動画のレヴューこそが、本題。

『 劇場版（ウソ）キングダムハーツⅡ 』
（ ニコニコ動画で、王様の実家からの電話にビクビクしながら、上映中 ）

…こういうものを観ると、日本人の凝り性と云うか、欲得ではない無償の「原作への愛」を感じます。
オリジナルゲームの素晴らしさを、知ってほしいという、ただそれだけの想いのために。

ムービーやフラッシュバックを巧みに入れ替え、ゲームオリジナルの持ち味を損なうことなく編集。
パロディで『劇場版』と銘打っていますが、文句なしに劇場版でいいと思います。

　第１部　-PROOF OF BEING-　トワイライトタウンでの六サス
　アニメ　-EPISODE OF PIECES-　空御一行のネズミー世界での冒険
　第２部　-NOBODY KNOWS-　ホロウバスティオンでの前哨戦
　第３部　-FINAL MIX めぐりあう二人 完全版-　最終決戦

…という時系列ですが、トータル８時間オーヴァーの動画です。
正月でもなければ、連続して視聴は困難でしょう。私も、コーヒーとポテチを肴にして、半年ぶりに観ました。

ゲームとして良作であることは、世界出荷数600万本ともいわれ、ヒットしたことで実証されていますが、ゲームに、ここまでシナリオのクオリティを追求してよいものか。
オリジナルにしろ、動画の編集者にしろ…。
意識として消えかけている「六サス」が、空と戦うシーンがありますが…、

　六サス；
　　「教えてくれ、お前が選ばれたわけを。」
　空；
　　「“俺” の心はみんなとつながっている　大切な人と――大切なともだちと！
　　誰かが “俺” のことを思っていてくれたら――
　　たったひとりでも忘れずにいてくれたら――
　　“俺” の心は消えない！
　　繋がる心が “俺” の力だ！」
　六サス；
　　「…わかったよ、空。」

思っていてくれたら。 たったひとりでも、忘れずにいてくれたら。 繋がる心が――。
――偽りの世界で、ともだちと信じたものは、暗セムの用意した 仮想人格でしかなかった。
同じノーバディであり、最後には決別した 悪セルも、もういない。
そんな六サスへの言葉としては…残酷で…涙腺が緩みます。
セリフは改変されているものの、繋ぎ方は…オリジナルより、はるかにイイ。
ムービーは、たぶんＫＨ２ＦＭのもの。フラッシュバックを工夫。ＢＧＭも変更。字幕もフォントを原作と統一させる凝り様。
変更探しなどする気も起きず、ただただ、魅入るばかりですよ。


フツーに、心響く名シーンとして仕上がっています。
第１部副題－PROOF OF BEING－…意味は「生きた あかし」。
さすがに、こういった副題をつけるセンスのあるヒトだけあって、オリジナルも文句は言いますまい。
『358/2 Days』 をプレイしたヒトには、嬉しいと思います。
ギャラをもらう訳でもないのに、よくここまで創り込む…そう思います。
「無償の愛」という言葉は、まさしくこのためにあるのでしょう。

「観てみようか」「久しぶりに、ゲーム世界の薬湯に浸かってみようか」
…と思われたらば、ニコ動画にて観劇してみては。検索で、わりあい早く検出できます。
ＵＰされた当時は、ガンガンとエコノミー発動されてましたが、一般回線でもストレスなく観れると思います。
本当に、ＤＶＤ企画されたら、ヒットすると思うんですがねぇ…。

　＊＊＊

FF12以降、どうも迷走が続いているスクウェア・エニックスにガッカリ感を抱いてしまったら、ＫＨシリーズに目を向けるのもイイかも知れません。
しかし、この動画を編集したヒトですが、
まさしく、ネットの世界の申し子と書いて、「神」だと…実感しました。

次でラストです。

( 2011/01/05 一部修正
　2011/01/09 データが吹っ飛んだので再ＵＰ )