昨日パートナーの手術が無事に終わったので、病院に面会に行くことにした。本人の様子は既に元気そうであり、それ自体は心配はなかったのだったのだが... どうも朝からいつもより強めの怯え症状が身体に出ている。普段と違ったことをしなければならないことに対する不安だろうか?
その病院は交通の便の悪い場所にあり、バスを乗り継がねばならなかった。乗り継ぎのバスは30分に一本であり、バス停を探しているうちに目の前を通り過ぎていってしまった。気温が高かった上にバス停は直射日光が当たっていてつらいため、多少もったいなかったがタクシーを使うことにした。そのタクシーも待っている人が行列になっていて20分待ちであり、やはり直射日光が当たってきつかった。唯一良かったことは、バスのルートが大回りなのに対してストレートに病院に向かうため、逃したバスよりも速く病院に到着することができたことだ。
やっと辿り着いたという感じである。とても大きな大学病院であった。小さな病院では内科、眼科、耳鼻科というように別れているところ、それが耳慣れない専門用語で細分化されている。さすが大学病院という印象を受けた。
面会の受け付けで手続きをすると、入院病棟のエレベーターまでの案内図を渡された。思考の弱まっている私の頭では、それはまるで迷路のように見えた。途中コーヒーショップに寄り道しようとしたら通路が分らなくなってしまい、また一からスタートするという情けなさである。比較的短めの通路を幾つか曲がって歩いていくと、くねくねした通路に辿り着いた。歩いている最中はときどき医療関係者がすれ違うが、たまたまなのか人通りが妙に少なかった。途中ICUなどの表示がある部屋をみると、ざわざわが更にに強くなっていった。カーブ状曲の通路に沿って歩いていくと、突然まっすぐなとても長い通路が現れる。真新しい白い壁、白い床、何処に続くか分らない長い廊下。その白さが不安を煽り、恐怖に似た感覚が湧いてきた。頬がひきつり、背筋がぞくぞくして足が竦む。果たして目的のエレベーターに辿り着くことが出来るのだろうか?まるでいつまでも城に辿り着けない測量士Kになった気分だ。
結局その長い廊下の途中に案内図にある通り病室に行くエレベーターのある通路があり、ようやく辿り着くことが出来た。しかしあの長い、白い無表情の廊下から受けた恐怖に似た感覚は、無事面会が終わってもなかなか身体から抜けなかった。理屈では説明出来ない根源的恐怖であった。
無理矢理プラスに考えると、不安神経症になって健常者には経験できないホラー感を現実で味わえたと思えばよいのだろうか。ちなみにパートナーは予想以上に元気そうであった。こちらは本当に良かった。