連休にゆっくり本を読もうと思い、図書館で借りてきました。
宮部みゆきの時代小説を読むのは久しぶりなので、期待して読んだのですが…。
時は江戸時代。上総国搗根藩(とうがねはん)で小納戸役を仰せつかる古橋家の次男・笙之介は、わけあって深川の長屋に身を寄せていた。
収賄の疑いをかけられた上に自刃した父・宗左右衛門事件の汚名を雪ぐため、藩の重臣坂崎の助けを得て、写本で生計を立てながら江戸での生活を続けていた笙之介だったが、事件のカギを握る人物を突き止めようとしたそのとき、笙之介は思いもかけない真実を目の当たりにすることになる…。
※ここから先はネタバレがありますのでご注意ください。
読みながら、「これNHKの木曜時代劇でドラマ化するのにぴったりじゃね?」なんて思っていたのですが、今年の正月にすでにドラマになってました。連ドラじゃなくて正月のスペシャルドラマだったみたいです。見逃してショック…かと思いきや、主演が玉木宏だったことを知って気持ちががらりと変わりました。
なんだよ!そりゃないよ!!
主人公の笙之介は22歳なんだよ!!!
玉木宏じゃおっさんすぎるやん!!
わかってない、NHKはわかってなさすぎる!!宮部先生のお心を!!
22歳で剣より筆を持つほうが好きな、女心のわからないひょろりとした朴念仁なんだよ笙之介は!!
なんて宮部先生の「神木隆之介君を主役に据えてください」って心の声を聞こうとしないんだ!!ああもったいない!!
(注:別に玉木宏に恨みはありません)
あ、あと笙之介が思いを寄せる和香役は橋本愛ちゃんがよかったです。彼女ほどぱっつん前髪のおかっぱヘアーが似合う女子がいるだろうか!(いるはずがない!!)
…はっ!小説の感想を書く前に、見てもいないドラマへの愚痴を垂れ流してしまいました。すいません。
で、感想のほうですが、さすが宮部みゆき、安定した読み応えのある、時代ミステリー小説でした。主人公の笙之介が、父の汚名を雪ぐために江戸で探偵役として活躍する話かと思いきや、事件のカギを握る代書屋はなかなか姿を現さず、やっと出てきたと思ったらその後に大どんでん返しが待ち構えていた、と。その返しっぷりがすごくて、もし自分が笙之介だったら間違いなく人間不信になれる自信が持てるほどでした。
小説は4つの章にわかれていて、笙之介の周りで事件が起きたり謎解きをもちかけられたりと、それぞれに盛り上がりがあるのですが、残念ながら最後まで大事にとってあったクライマックスまで場を持たせるほどの力はありませんでした。もし、この本が宮部さん以外の、まだ若手でキャリアもそれほどない作家の作品だったら、褒めたいところなんですが。
宮部さんがこれまでに世に出された、傑作と謳われる他の作品に比べると、いささか軽く感じます。もちろん、どんな作品を書くのも作家の自由なんですが。
貧しくてもあっけらかんと、つつましやかに日々の暮らしを営む長屋の人々、美味しそうな江戸庶民の食べ物、優しいけれどひよわな青年と陰のある美少女の恋。面白かったけれど読んだ後に心に残るものはあまりないかもしれない、そんな物足りなさを感じました。
それというのも、出来物の長男・勝之介を溺愛し、父親に似て野心がなくおっとりした笙之介を粗末に扱った母親の里江への処遇に対して不満が残ったからかもしれません。自分を愛してくれない母親を許す笙之介の姿が、ものわかりよすぎて、かわりにこちらが笙之介の分も里江に腹を立ててやったような気になりました。まあ、笙之介のそういうところが、宮部作品の主人公らしいっちゃらしいのですが。
玉木宏主演でNHKがドラマ化してしまったので、映像化はもうあきらめたほうがよさそうですが、もし続編が書かれるのなら、今度はもっと原作に沿った形でドラマ化してほしいです。そのときはぜひ主役を神木隆(もうええっちゅうねん
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