Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

和田竜「忍びの国」

2016-06-24 21:12:49 | 読書感想文(時代小説)



嵐の大野君主演で映画化すると聞いて、和田竜の「忍びの国」を読みました。
同じ作者の「のぼうの城」は、映画は見たけど原作は未読です。天邪鬼なもんで、あんまり売れてるから読む気になれなかったんですよね。映画が面白かったので、いつか読んでみようとは思うのですが。

「忍びの国」は、「のぼうの城」と同じく時代は戦国ですが主人公は武士ではなく忍者です。タイトルに「忍び」ってあるんだから当たり前ですが、忍者の視点で語られる戦国モノを読んだことがなかったので、いろいろと新鮮でした。ま、この小説に出てくる忍者の有り様が忍者のデフォルトなのかどうかはわかりませんけどね。

忍者の無門は、伊賀一の腕を持つのに怠け者で、妻のお国から稼ぎが少ないことを責められて頭が上がらない。
あるとき、無門は褒美目当てに他家の伊賀者を殺めるが、それをきっかけに伊賀攻略を狙う織田信雄軍と伊賀忍び軍団との壮絶な戦いが始まった…というのが裏表紙に書いてあったあらすじ、を更にかいつまんだものですが、実際の内容はもうちょっとややこしいです。基本、小説というのは神目線の作者が登場人物を動かしてストーリーを進めていくものだと思うのですが、この小説の場合、伊賀忍者も戦国武将も、果ては無門の妻のお国まで、何を考えているのかわからず、次に何をしでかすのか予測がつかなくて、読みながら「え、そうなの?」とか「え~、そこでそうなるか~?」と驚きつつ突っ込むことがしばしばありました。まさか、「史実をベースに創作されている」小説が、こんな奇想天外なエンタメ小説だとは思いもよらなかったので。

ややこしいと思ったのにはもうひとつ理由があって、それは登場人物がやたら多いこと。主人公の無門が登場するまでに、いったい何人の主要な登場人物が出てきたことか。このまま映画になったら、多分大野君は本編開始から30分は画面に現れません。私は映画が面白ければそれでいいけど、あの事務所がそれを許すかどうか…なので、主人公の無門が出てこない第一章は、プロローグとしてとても面白いのだけれど、映画化するときに割愛されたり大幅に改変されたりするのではないかとちと心配になりました。主人公いなくても他にキャラが立ってる人がばんばん出てくるから、充分面白いんだけどねぇ。

さらに付け加えると、この冒頭から出てくる武将たちが、歴史に疎い私には聞いたことない名前ばかりで、誰かがしゃべるたびに「この人誰だっけ」と首をひねりながらページを遡って確認しながら読みました。その昔、友人宅にあった「アンナ・カレーニナ」を手に取ったら、中に挟んであった友人のお父さんが書いたと思しき登場人物の説明書きが落ちてきたことがあったのを思い出しました。あの頃の友人のお父さんは、今の私はほぼ同い年…きっと私のように、読んでる最中に誰が誰だかわかなくなって、メモをとりながら読んだんでしょうなぁ(遠い目)。

そうはいっても小説の中盤まで読めば、壮絶な合戦のスペクタクルの中に主人公の無門が颯爽と現れて活躍…するかと思ったらざーんねーん!怠け者キャラなだけに、そうやすやすとは動いてくれません。ページをめくってもめくっても織田方の武将や他の伊賀者があれこれ知恵を巡らせて駆け引きしたり、戦を回避しようとしたりしていて無門の出番が少ないので、しまいには「映画での大野君の出演シーンはトータルで30分になるかも」という不安が頭をよぎりました。つか敵の武将の日置大膳、キャラ立ち過ぎだろ。映画やドラマならともかく、小説で主役を食う敵役なんてあんまり聞いた事ないよ。

しかし焦らしに焦らされた挙げ句、やっと出てきた無門の活躍シーンは、待った甲斐のある面白さで、これが視覚化されるのかと思うとワクワクしました。縄抜けの術とか、無門の操る忍びの術には、「ありえねー!」って突っ込みたくなる要素も多々ありましたが、まあなんとかなるでしょう。これは重厚な歴史小説ではなく、血沸き肉躍る歴史エンタメ小説なのだし。久しぶりに小説を読んでアドレナリンが出ました。多分。測ってないけど。

出番が少ないのに存在感が半端ない人は、主人公の無門以外にもう一人いました。戦国武将と言えば誰もが知っているあの人、織田信長です。織田信雄軍と伊賀忍び軍団の戦いの、発端と結末を作った男。まさにラスボス、魔王です。その魔王もこの戦いの数年後には…なのですから、この時代は「一寸先は闇」の時代だったんでしょうねぇ。もっとも、この小説を読むと、「一寸先が闇であるのには理由があって、それは己の弱さや迷い、あるいは驕りのせいである」とも思えてきます。痛快な娯楽小説だけれど、めでたしめでたしで終わるわけではなく、読み手の心にちくりと刺さる毒もあって、面白みと悲しみを同時に味わうこともできました。

主役以外の映画のキャストはまだ発表されていませんが、主人公以外の登場人物のキャストに興味があります。事務所の後輩が忍びの役や信雄の役で出るのは想像がつきますが、信長や日置大膳、無門の妻のお国を誰が演じるのか。信長はいっそヒガシ先輩でもいいかな~なんて気もしますが、それはそれでベタすぎかな。「のぼうの城」の時みたいに、渋い役者さんを大量投入してほしいな~って願います。お国は…思いつかないからいっそ榮倉奈々続投でもいいよ!(←超テキトー)



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