Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

東野圭吾「プラチナデータ」

2012-09-09 01:02:52 | 読書感想文(国内ミステリー)




来年の春に、嵐のニノ主演で映画化すると聞いたので、文庫を買って読みました。
私の場合、今の時期に読んだら映画が公開されるまでに内容を忘れる可能性もありますが…。

国民の遺伝子情報をデータ化し、犯人を特定するDNA捜査システムが開発された。
しかし、その開発者である蓼科兄妹が何者かによって殺害されてしまう。
システムを管理する科学警察研究所の解析員・神楽龍平は現場に残された毛髪からDNA照合を行うが、
その結果を知って愕然とした。コンピューターが示した犯人は龍平本人だったからだ。
捜査の手が及ぶ前に、龍平は逃亡を図り、事件の真相を暴こうとするが…




※ややネタバレ含みます。未読の方はご注意ください。







読み終わった直後の私の感想は、


「えっ…もう終わり?」

でした。自分が読んでたのが実は「プラチナデータ<前編>」なんじゃないかと思って、タイトルを確認するために
表紙を何度も見直しましたもん。


犯行現場に残された毛髪や皮膚などと照合するために、国民のDNAをデータベース化して管理するという設定は
SF系の小説や映画などではおなじみですが、東野圭吾はこれを未来世界ではなく現代の日本を舞台にしました。
そのため、SFの世界なら大目に見てもらえそうな設定や小道具がやたら大げさに感じられて、とてもミステリー界の
大御所の作品とは思えない青臭さが鼻につきました。何も考えずに読んじゃったけど、もしかしたらこの小説は
少し若い世代向けに書かれたものなのかもしれませんね。迂闊でした。

「犯罪捜査に使用するために、国民のDNAをデータ化して管理する」という設定は、DNAの解読がもっと進んだ未来の
世界なら可能なのでしょうが、日本を含め現代の世界の技術では無理だということは、この小説の中でのDNA解読
プログラムについて説明するくだりの雑さでよくわかります。だってDNAがどういうものなのかについての詳しい記述が
全っ然ないんだもん。ガリレオシリーズの湯川なんて、毎回自信たっぷりに講釈たれてるのに。
東野さん自身、DNA研究にあまり興味がないのかもしれませんね。ミステリーのアイテムのひとつとしてしか
見てないのかな。

もっとも、説明は雑でも「DNAによって国民が国家に管理される社会」の恐ろしさは、読者を突き放すかのように
冷たく、はっきりと伝わってきました。この小説に出てくるDNA捜査は、DNA登録が任意によるものであったり、本人に
無許可で行われたものであったりするので、罪を犯した本人に直接たどり着くのではなく、たまたまDNA登録していた
犯人の血縁者からたどり着く場合が多い。なのでその場合、捜査の段階で犯罪加害者の身内の人間が世間の目に
さらされてしまう。ただ、血がつながっているというだけで。それだけで。
その恐ろしさを、DNA登録に対する反論を熱く語るのではなく、まだ事件が起きる前の神楽の

「周囲から妙な目で見られたくなければ、身内から犯罪者を出さなければいい」

という、とりつくしまのない発想で切り捨てることで表現しているのを読んで、背中に冷たいものが走りました。
この小説はフィクションですが、これと似たような発想をする政治指導者を、最近どこかで見たことがあるからです。
それは誰かというと…いや、やめときましょう。いくらなんでも、ここまで無茶苦茶なことはやらない人だと思いたいので。

DNA捜査の他に、この小説のキーになるのが、龍平のもうひとつの人格“リュウ”の存在…なのですが、このリュウに
対する扱いもいまいち雑というか浅いというか。リュウの存在がストーリーに都合よく扱われすぎててもったいないなーと
思いました。

リュウの恋人“スズラン”は、龍平の前に現れたときから「多分この子は龍平にしか見えないんだろうな」と思ってましたが、
その正体には驚きました。意外というか、強引というか。でも映像化するときはどうするんでしょうね。

バッドエンドとまではいかないものの、すっきりしない結末に「まさか続編もあるのか?」と期待もしましたが、
続編を作ると今以上にスケールを大きくしないといけないだろうし、実験的作品としてこのまま終わる可能性のほうが
高いですね。

しかし、一番肩すかしだったのは白鳥里沙。ヒロイン的ポジションになるのかと思いきや…非常に残念な役でした。
映画化したときに彼女の役を栗山千明様がされないことを切に願います。
文庫のオビに「二宮和也・豊川悦司出演」とあったから、神楽に協力する刑事・浅間役はトヨエツなことは間違いないけど。

でもまあ、散々文句を書きましたが、ニノの多重人格演技には興味があるので、映画が公開されれば観に行きたいと
思います。地元で上映があれば、の話だけど…(ニノだから多分ある、と思いたい)


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (misachi68)
2012-09-09 22:48:06
こんばんは!
映画は楽しみですね。

私は東野圭吾作品はすごく好きって思うことがあまりないのですが、
なぜか映像化(特にTV)されると面白い!ってハマることが多いです。
脚本とか演出によってずいぶんと印象が変わりますもんね。
ガリレオも原作よりはドラマが良かった!

なので、この作品も読んだ時よりもさらに
映画で盛り上がれたらいいなあ~と願ってます(*^_^*)
返信する
こんばんは♪ (もちきち)
2012-09-10 00:26:32
>misachi68さん
コメントありがとうございます~

>なぜか映像化(特にTV)されると面白い!ってハマることが多いです。
>脚本とか演出によってずいぶんと印象が変わりますもんね。
そうですね~私も「流星の絆」はドラマのほうが楽しめました。
「プラチナデータ」も映画化したらだいぶ印象が変わるかもしれませんね。期待しておきます。
返信する

コメントを投稿