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ファウンデーションの夢 第四部 嵐の気配 第2話 帝国辞書編纂図書館

2022-10-29 20:19:38 | プロローグ
22第2話帝国辞書編纂図書館

ファウンデーションの夢

第四部 

嵐の気配

第2話 

帝国辞書編纂図書館

前史

銀河暦 12028年 

 ダニール・オリヴォー、宰相を辞任。ハリ・ セルダン、宰相になる。

銀河暦 12038年 

 ハリ・セルダン、宰相を辞任。

銀河暦 12040年 

 ウオンダ・セルダン生まれる。

銀河暦 12048年 

 ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。

 ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。

銀河暦 12067年 

 ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委 員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。

物語の大枠

第一部 ダニールの地球探索

第二部 ガイア

第三部 ウォンダとガールの地球探索

第四部 嵐の気配

第五部 Tee Tree

第六部 ベイタ・ダレル

第七部 アルカディア・ダレル

第八部 アルカディアの遺言

第四部の大枠

21 第1話 涙の黒い太陽

22 第2話 帝国辞書編纂図書館

23 第3話 ドースと孤児レイチ

24 第4話 時間霊廟

25 第5話 嵐の気配

あらすじ

 ガールは、久しぶりのヒューミンとの再会に歓喜するやいなや、突如として眠気を催して、睡眠に陥ってしまう。

 ガールは、催眠術に懸けられていたのだろう、気がつけば見知らぬ航宙船のなかにいる自分に気がついた。見上げれば、容姿端麗な女性が立っていた。

 そして親しげにガールに話しかけてくる。

 

 無事に任務が完了した。放射能防御シールドのカーテンに護られ、二人は荒涼とした地球の大地を踏みしめた。ガールは朧気ながらに地球の光景を眺め、また遊んで走り回るウォンダを目を円くして眺めていただけであった。もう一つの使命など忘れていたように。

 ただウォンダが地面の割れ目から湧きだしている水に狂喜して、なにやら汲んでいるのは覚えていた。しかもその泉の回りにはクローバーが密集していたことも。

 再生の命というものなのであろうか!

 ウォンダが汲んだ水は三つに分けられ、それぞれ透明、紫、黄色のシリンダー・ペンダントに入れられ、そのうち紫のシリンダーはターミナスに避難した彼女の妹ベリスに渡してくれるようにウォンダがガールに頼んだ。

 ターミナスのパークサイドで彼女を見失った。地球の大地から脇だした泉に狂喜していたウォンダの姿にオーバーラップし、「星界の涯」の意味を沈思するガールであった。

 方や、ウォンダの妹のベリスは、その場所を訪れていた経緯をその日のうちに母マネルラに手紙をしたためていた。

 

 なぜか祖母ドースが夢に現れて、不思議な一連の作法で新たに新設された公園のある場所を訪れるように指示されていた。

 これは不思議な事件で、後に、ジョン・ナックの『歴史思想書』たる書籍はその図書館には存在せず、ベリスが訪れた涙の黒い太陽の像は次の日には消えていた。誰一人ターミナス人は、知らなかったということになる。

 

 それから数十年が過ぎ、銀河帝国はハリ・セルダンの予測通り、随処に綻びが生じ、衰退の兆候が現れ始める。

 ターミナスは、ファウンデーションの名が示すように名目上、トランターによる銀河帝国の辞書編纂図書館設立財団として、ひっそりとその役目を果たしていたが、ターミナスが所属するアナクレオン星区の独立運動が勃発するやいなや、ターミナスは一気にアナクレオン星区を制圧下においてしまう。

 その立役者がサルヴァー・ハーディン、その人であった。彼の活躍にはもう十年の月日が必要である。

 

 ドーニック家は、ベリスの娘、ドースの時代になっていた。あらかじめ、お断りいたしますが、ドースと言っても、ハリの奥さんと同じファーストネームのドースであるが、もう一人のドースである。

 ガールの盟友ボー・アルーリンは、トランターの仲間との紐帯を強く守り続け、大いにガールを助け、ガール亡き後は、ガール家を支え続けていた。方や、アルーリンは、ターミナスの次の段階への準備を着実に進めていった。

 読者には、残念ながら、その詳細については、Yi Yin の『ミーターの大冒険』のエピローグと第一部を参照してもらいたい。

 

 ここからがその次の世代の物語である。

22

(『ドース・ドーニックの日記』より)

「あの母さん、ベリス。ずっと綺麗でガールに愛された幸せな人生。不思議な力を内に秘めていたけれど、それを決して表に出さなかった女性。最後に渡されたのが三色に輝くシリンダー。そして私は何をすればいいのか?優しさだけが人の生きる意味だと言ってた!その他のことは、どうでもいい、とも言ってたわ。

 

 以前、叔母ウォンダと親しかったというボー・アルーリン(心理歴史学者)が、彼は、トランターとターミナスとの間を行き来していたが、そのときはトランターに長く滞在していて、わざわざトランターから私に会いに来たことがあった。ウォンダは死期が迫っていて、私に逢いたいと。

 そして8年経ったら、帝国辞書編纂図書館でハリ・セルダンの第一回目の『時間霊廟』のホログラフが公開されると伝えてくれた。すべてお膳立ては、父ガールがトランターにいた最後の年に用意した、という。ホログラフには写らないだろうけどガールが側にいるはずだという。是非見たい。ハリ・セルダンの姿を!

 あのベリスは、私のことを愛してくれたことは当然であるが、隣の子、サルヴァー・ハーディンをとても可愛がっていたのを覚えてる。あの子は今、市議会議員になったばかりだが。ひょっとするとここターミナスの命運を握ることになる人物かもしれない!」(『ドース・ドーニックの日記』)

yatcha john s. 「帝国辞書編纂図書館」


ファウンデーションの夢 第四部 嵐の気配 第1話 涙の黒い太陽

2022-10-29 11:13:02 | プロローグ
21第1話涙の黒い太陽
ファウンデーションの夢 
第四部
嵐の気配
第1話

涙の黒い太陽

前史

銀河暦 12028年 
 ダニール・オリヴォー、宰相を辞任。ハリ・  セルダン、宰相になる。
銀河暦 12038年 
 ハリ・セルダン、宰相を辞任。
銀河暦 12040年 
 ウオンダ・セルダン生まれる。
銀河暦 12048年 
 ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。
 ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。
銀河暦 12067年 
 ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委  員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。

物語の大枠

第一部 ダニールの地球探索
第二部 ガイア
第三部 ウォンダとガールの地球探索
第四部 嵐の気配
第五部 Tee Tree
第六部 ベイタ・ダレル
第七部 アルカディア・ダレル
第八部 アルカディアの遺言

第四部の大枠

21 第1話 涙の黒い太陽
22 第2話 帝国辞書編纂図書館
23 第3話 ドースと孤児レイチ
24 第4話 時間霊廟
25 第5話 嵐の気配

あらすじ

 ガールは、久しぶりのヒューミンとの再会に歓喜するやいなや、突如として眠気を催して、睡眠に陥ってしまう。

 ガールは、催眠術に懸けられていたのだろう、気がつけば見知らぬ航宙船のなかにいる自分に気がついた。見上げれば、容姿端麗な女性が立っていた。
 そして親しげにガールに話しかけてくる。
 
 無事に任務が完了した。放射能防御シールドのカーテンに護られ、二人は荒涼とした地球の大地を踏みしめた。ガールは朧気ながらに地球の光景を眺め、また遊んで走り回るウォンダを目を円くして眺めていただけであった。もう一つの使命など忘れていたように。

 ただウォンダが地面の割れ目から湧きだしている水に狂喜して、なにやら汲んでいるのは覚えていた。しかもその泉の回りにはクローバーが密集していたことも。

 再生の命というものなのであろうか!
 ウォンダが汲んだ水は三つに分けられ、それぞれ透明、紫、黄色のシリンダー・ペンダントに入れられ、そのうち紫のシリンダーはターミナスに避難した彼女の妹ベリスに渡してくれるようにウォンダがガールに頼んだ。

 ターミナスのパークサイドで彼女を見失った。地球の大地から脇だした泉に狂喜していたウォンダの姿にオーバーラップし、「星界の涯」の意味を沈思するガールであった。

 方や、ウォンダの妹のベリスは、その場所を訪れていた経緯をその日のうちに母マネルラに手紙をしたためていた。
 
 なぜか祖母ドースが夢に現れて、不思議な一連の作法で新たに新設された公園のある場所を訪れるように指示されていた。

 これは不思議な事件で、後に、ジョン・ナックの『歴史思想書』たる書籍はその図書館には存在せず、ベリスが訪れた涙の黒い太陽の像は次の日には消えていた。誰一人ターミナス人は、知らなかったということになる。

 これが、後の後のベイタ・マロウによって発見されるまでは。

21

「もう十分、読者は理解できたであろう結論を再確認してもらおう。要するに科学の進歩は人類の想像力の範囲内を一歩でも出てしまえば、危険極まりなく、自らに破滅をもたらすのである。ニフが選民と呼ばれることをある民族は、嫉妬し、原子力のなんたるかを既に獲得していた理論を盗み、その事実を闇に葬ろうとした。それが二度の原子爆弾投下という、戦争を終結させるという美名のもとに極めて少数の意見である時暴走した。
 ニフとは現地語で『二不』であり、皮肉にも人類の歴史上、どこの場所にもあり得なかった一回のみ原爆投下されたという意味であり、その痛みを知っている唯一の民という意味なのである。その悪魔は、嫉妬という人間の醜い奇形を生むのである。諸君、そのことを最後の警句としてこの書を閉じることとする。」『ジョン・ナックの歴史思想書(22世紀の思想家)の結論部』

 お母様マネルラへ。サリプでの暮しはいかがですか?
 こちらは一人でも大丈夫です。

 実は大変なことがありましたのでお手紙書きました。
 でも全然心配はいりません。

 昨夜、お祖母さんドースが夢に現れて、「図書館でジョン・ナックの本を読んでから例の公園へ行くように、家に咲いているジンジャーの花を髪にさしてね。」と言われました。

 その通りに言われた場所には、昨日までなかった丸い黒い顔の像が土に埋まっていたのです。 私が手をかざすと黒い部分が黄金に輝いて初めて見る文字が浮かび上がりました。
 そうしたらなぜだかその文章の意味が分かったのです。その分は次のようです。

 『我らはニフ人、シンナックスを経由してここ銀河のはずれまでやってきた。
 ここに「涙の黒い太陽」の像を埋める。
 放射能の悲惨さを忘れないためだ。
 我らが〇〇のニフから宇宙に飛び出したのはいうまでもない。
 空が放射能で黒く覆い光を遮り四十日の間、太陽を見ることがなかったからだ。
 その教訓のため、ここにこの像を埋める。ここに記念として別紫蘇(ラベンダー)の種を撒いていく。
 宇宙が蘇る、その礎を開く時が来る。
 そして一人のシンナックスの青年がその意味を理解するであろう。』

 その青年とは誰でしょう。萌葱色の霧雨が降っていました。大地が霞んでいました。
 公園は泉のせせらぎと小鳥が囀ずる声だけでした。
 空には虹がかかっていました。
 今日の不思議な出来事に物思いを寄せていました。
 お姉さんウォンダは今頃どうしているんでしょう。
 その時、誰かが私を見ているような気配を感じたのですが! 
            
ベリスより。

yatcha john s. 「涙の黒い太陽」


ファウンデーションの夢  第三部  ウォンダとガールの地球探索  第10話  星界の涯

2022-10-28 18:34:06 | ウォンダとガールの地球探訪
20第10話星界の涯
ファウンデーションの夢 
第三部
ウォンダとガールの地球探索
第10話

星界の涯

前史

銀河暦 12028年 
 ダニール・オリヴォー、宰相を辞任。ハリ・  セルダン、宰相になる。
銀河暦 12038年 
 ハリ・セルダン、宰相を辞任。
銀河暦 12040年 
 ウオンダ・セルダン生まれる。
銀河暦 12048年 
 ドース・ヴェナビリ、死去。ベリス・セルダン生まれる。
 ハリ・セルダンの盟友ユーゴ・アマリル没。
銀河暦 12067年 
 ハリ・セルダンに対する裁判の結果、公安委  員会は百科辞典財団をターミナスに放逐。ガール・ドーニックファウンデーションの51番目の委員になり、第1ファウンデーション全般を仕切る。ボー・アルーリン、ガールを補佐し、第2ファウンデーションとの繋がりを助ける。

前話までの大枠

第一部 ダニールの地球探索
1 第1話 探索のはじまり
2 第2話 Synnax
3 第3話 精神感応力者
4 第4話 What a genius!
5 第5話 Gaia

第二部 ガイア
6 第1話 来たかった、来たくはなかった
7 第2話 Peter Ferdinand Drucker
8 第3話 Albert Einstein
9 第4話 yamabuki
10 第5話 時間も感応できる!

第三部 ウォンダとガールの地球探索

11 第1話 狂乱
12 第2話 聴かずんばこれを去らん
13 第3話 もう一つの任務
14 第4話 Y市の謎、おそらく蝶番の謎
15 第5話 ウォンダ・セルダン
16 第6話 What on earth !
17 第7話 地球は一つの生命体
18 第8話 クローバー
19 第9話 パークサイド

あらすじ

 ガールは、久しぶりのヒューミンとの再会に歓喜するやいなや、突如として眠気を催して、睡眠に陥ってしまう。

 ガールは、催眠術に懸けられていたのだろう、気がつけば見知らぬ航宙船のなかにいる自分に気がついた。見上げれば、容姿端麗な女性が立っていた。
 そして親しげにガールに話しかけてくる。
 
 無事に任務が完了した。放射能防御シールドのカーテンに護られ、二人は荒涼とした地球の大地を踏みしめた。ガールは朧気ながらに地球の光景を眺め、また遊んで走り回るウォンダを目を円くして眺めていただけであった。もう一つの使命など忘れていたように。

 ただウォンダが地面の割れ目から湧きだしている水に狂喜して、なにやら汲んでいるのは覚えていた。しかもその泉の回りにはクローバーが密集していたことも。

 再生の命というものなのであろうか!
 ウォンダが汲んだ水は三つに分けられ、それぞれ透明、紫、黄色のシリンダー・ペンダントに入れられ、そのうち紫のシリンダーはターミナスに避難した彼女の妹ベリスに渡してくれるようにウォンダがガールに頼んだ。

 ターミナスのパークサイドで彼女を見失った。地球の大地から脇だした泉に狂喜していたウォンダの姿にオーバーラップし、「星界の涯」の意味を沈思するガールであった。

20

「確かにあのとき、あの小さい島全体輝いて、ウォンダがその光に包まれるのを見た。目撃した。そのとき以来、それまでになかった感覚、もしかしてずっと以前にはあったような感覚に気がついた。戻ったというのが正しいのかも。ヒューミンさんと再会したあと、スペースワゴンで目覚める間、怪力の女性に担がれていた。そして今、あの少女を見た瞬間、ウォンダが包まれたとき以上の強い光を見た。きっと、ウォンダが言っていた彼女の妹に違いない。少しずつわかって来たぞ。きっと、ウォンダとステッティンはハリの面倒を看るためだけにトランターに残ったのではないのだな!ハリとヒューミンのなにかしらの計らいなのだろう。そうだ。ウォンダがつい口から漏らした言葉を思い出した。『星界の涯』だ。ターミナスではないということなのか。それはなんのためなのか?これ以上は、もう問うてはならないかもしれないというのか。
 そんなことより、もう一度あの少女、ベリス・セルダンに会いたい。そして、ウォンダから託された三色に輝くシリンダー、ウォンダが名付けた『ベニ・サラの水』を渡すことだ。」(『ガール・ドーニックのターミナス到着当時の日記』からドース・ドーニックによる)

yatcha john s. 「星界の涯」


ファウンデーションの夢  第三部  ウオンダとガールの地球探訪  第9話  パークサイド

2022-10-27 05:52:18 | ウォンダとガールの地球探訪
19第9話パークサイド
ファウンデーションの夢 
第三部 
ウオンダとガールの地球探訪 
第9話 

パークサイド

あらすじ

 セルダンの裁判が始まる前の年、つまり銀河暦12066年、ダニール・オリヴォーは、ガール・ドーニックをシンナックスから招き寄せるため、かつハリ・セルダンの「心理歴史学」と2つのファウンデーションを補強するため、人類の最古の故郷星「地球」への探索の旅に出る。

 漸くダニールは、天の川銀河の半球過ぎに、それらしき海洋惑星を見つけた。

 ダニールは、以前にしたようにヒューミンと名前を変えてシンナックス大学に何食わぬ顔で入り込み、ガール・ドーニックを待ち構えていた。

 ガールは、どうしたわけか、彼が見いだしたことがらをとめどもなくヒューミンに話しはじめた。ダニールは、ガール・ドーニックの非凡な閃きを強く受けとめて、ロボットでありながら絶句する。

 ダニールのこの探索からファウンデーションの新たな叙事詩がはじまろうとしていた。ハリ・セルダンの故郷を目指したのは、ロボットにない人間の潜在能力に彼の第零法則を挑戦させたかったためであった。そこから何かが生まれそうな予感を抱いて!

 ガールは、ダニールの指示通り、ダニールの多額のクレジット・バッグを抱えて、トランターに着いた。まではよかったが、ハリ・セルダンに会うやいなや、当のハリ共々裁判のために留置所に入れられてしまった。

 ハリの未来予測は、将来500年以内に92・5パーセントの確率でトランター銀河帝国が滅亡するというものだった。

 そこへ、弁護人としてハリ・セルダンから遣わされたロース・アヴァキャムが、ハリ・セルダンの代わりにガールにこの件に至った経緯を語る。

 ガールはしばらくして釈放され、ハリ・セルダンからあらためて心理歴史学とファウンデーションについての計画を打ち明けられる。
 それからもう一つの任務についても。

 ハリが、ガールにモーヴ建設の要件を語り、宰相デマーゼルの秘密を漏らそうとした瞬間、背後からヒューミン(デマーゼル)が突如現れ、ハリを制した。

 話しは、それより約半世紀前のハリの逃避行において行った出来事の回想に触れなければならない。
 ハリは学会出席のために故郷ヘリコンからトランターに来たのであったが、なぜか意に反してトランター中を駆け巡らなければならなくなった。
 逃避行の末、それまで不確かだった推測が、完璧に正しかったことを知った。何ものかが、ハリの逃避行を企てた、ということ。何ものかが、ハリに目指す「心理歴史学」の中心原理を考案させるように誘導している、ということ。ハリの目指す「心理歴史学」を担う新たな組織、それを維持する施設を、より堅固にするのに、何を乗り越えなければならないか、をY 市の反乱事件で示されたように思った。
 その背後の人物、それはチェッター・ヒューミンであり、ロボット・ダニール・オリヴォーであり、宰相エトー・デマーゼルだったということ。そしてドース・ヴェナビリも彼のお膳立てによるものだと。

 話しを元の状態に戻す。ヒューミンは、何食わぬ顔で現れ、ハリに禍福の入り混じりあったニュースを伝えた。

 ガールは、久しぶりのヒューミンとの再会に歓喜するやいなや、突如として眠気を催して、睡眠に陥ってしまう。

 ガールは、催眠術に懸けられていたのだろう、気がつけば見知らぬ航宙船のなかにいる自分に気がついた。見上げれば、容姿端麗な女性が立っていた。
 そして親しげにガールに話しかけてくる。
 
 無事に任務が完了した。放射能防御シールドのカーテンに護られ、二人は荒涼とした地球の大地を踏みしめた。ガールは朧気ながらに地球の光景を眺め、また遊んで走り回るウォンダを目を円くして眺めていただけであった。もう一つの使命など忘れていたように。
 ただウォンダが地面の割れ目から湧きだしている水に狂喜して、なにやら汲んでいるのは覚えていた。しかもその泉の回りにはクローバーが密集していたことも。
 再生の命というものなのであろうか!
 ウォンダが汲んだ水は三つに分けられ、それぞれ透明、紫、黄色のシリンダー・ペンダントに入れられ、そのうち紫のシリンダーはターミナスに避難したの彼女の妹ベリスに渡してくれるようにウォンダがガールに頼んだ。

19
「このメモは公には出ないであろう。しかし聡明な我が娘ドースはこれを見つけ出すかも知れないが、どうしても書いておかなくてはならない。なぜなら、両方を知っているのは人間では私一人なのだから。」『父ガールのメモ書き(ドース・ドーニックによる)』

 三人と別れた。セルダン先生はあと二年ももたまい。
 モーブの町には仕事が山ほどある、国会議事堂とそれに付随する行政機関、そして公園を完成させたばかりだ。大事な図書館こそ丁寧に豪勢につくらねばならない。なにしろ、ターミナスの存在は表立っては、銀河帝国の全歴史の辞書編纂にあるのだから、その名は、「百科辞書編纂ファウンデーション」。

 仕事を早めに切り上げて、自宅へ向かう公園の側を歩いていたときであった。萌葱色の霧雨。大地が霞んでいた。公園のなかは少しばかりの谷になっていて、泉のせせらぎが聞こえ、小鳥が囀ずっていた。公園の森は木々が緑色に染まり、大空には虹がかかっていた。その虹を見上げていた少女がいた。物思いに耽っているような、憂いを帯びた。アッと叫びそうになった、「ウォンダ」っと叫んでいたのかも知れない。その時脳裏に浮かんだのは小さな島に咲き誇ってたクローバーを摘んでいたウォンダの姿であった。目を斜め下に戻した時にはその姿は消えていた。

 
yatcha john s. 「 park side 」


Someone you loved

2022-10-26 19:08:57 | 日記
いつか手を繋ぐ時期が突然終わりを告げて
寂しい秋の風が心に吹きすさむ頃が訪れて
すべてがゼロになったと嘆くことが何千回訪れても
なんて僕は馬鹿だったなんだろうと苦い吐息を吐いたとき

そして
何もその経験から何も学びはしないと悟ったとしても

秋の昼下がりに寂しい風に揺れて抗う
ツートンの白いすすきの姿にふっと気がつく

陽気な穏やかな暮らしが長すぎて
すっかり平和という甘さに慣れ過ぎた自分に気がつく

そして今日という日に
陽の傾く気配に心に吹きすさむのに涙も出ない

それでも
なんとかして
あの日たしかに日だまりのなか
手を繋ぎあったことを

もう一度思いおこして

昔タイダイの花咲く遠くの平原で
今は兵士たちの靴の音が聞こえ
そして近くの海で小さな美しい島を取り巻く
悪魔の気配を感じていても
この愛しい土地を飛び越してくる飛翔体
に悲しみがまして唇を噛んでも

この僕が誰かを愛して
誰かがこの僕を愛して
心を癒してくれた

その思い出の記憶があるなら
この秋の寒い風に

一輪の色鮮やかに咲き続けている花に
その姿を思い描き
敢えて精一杯の歌で称えたい

https://youtu.be/4LzJRHCVdtk

yatcha john s. Someone you loved