19第9話パークサイド
ファウンデーションの夢
第三部
ウオンダとガールの地球探訪
第9話
パークサイド
あらすじ
セルダンの裁判が始まる前の年、つまり銀河暦12066年、ダニール・オリヴォーは、ガール・ドーニックをシンナックスから招き寄せるため、かつハリ・セルダンの「心理歴史学」と2つのファウンデーションを補強するため、人類の最古の故郷星「地球」への探索の旅に出る。
漸くダニールは、天の川銀河の半球過ぎに、それらしき海洋惑星を見つけた。
ダニールは、以前にしたようにヒューミンと名前を変えてシンナックス大学に何食わぬ顔で入り込み、ガール・ドーニックを待ち構えていた。
ガールは、どうしたわけか、彼が見いだしたことがらをとめどもなくヒューミンに話しはじめた。ダニールは、ガール・ドーニックの非凡な閃きを強く受けとめて、ロボットでありながら絶句する。
ダニールのこの探索からファウンデーションの新たな叙事詩がはじまろうとしていた。ハリ・セルダンの故郷を目指したのは、ロボットにない人間の潜在能力に彼の第零法則を挑戦させたかったためであった。そこから何かが生まれそうな予感を抱いて!
ガールは、ダニールの指示通り、ダニールの多額のクレジット・バッグを抱えて、トランターに着いた。まではよかったが、ハリ・セルダンに会うやいなや、当のハリ共々裁判のために留置所に入れられてしまった。
ハリの未来予測は、将来500年以内に92・5パーセントの確率でトランター銀河帝国が滅亡するというものだった。
そこへ、弁護人としてハリ・セルダンから遣わされたロース・アヴァキャムが、ハリ・セルダンの代わりにガールにこの件に至った経緯を語る。
ガールはしばらくして釈放され、ハリ・セルダンからあらためて心理歴史学とファウンデーションについての計画を打ち明けられる。
それからもう一つの任務についても。
ハリが、ガールにモーヴ建設の要件を語り、宰相デマーゼルの秘密を漏らそうとした瞬間、背後からヒューミン(デマーゼル)が突如現れ、ハリを制した。
話しは、それより約半世紀前のハリの逃避行において行った出来事の回想に触れなければならない。
ハリは学会出席のために故郷ヘリコンからトランターに来たのであったが、なぜか意に反してトランター中を駆け巡らなければならなくなった。
逃避行の末、それまで不確かだった推測が、完璧に正しかったことを知った。何ものかが、ハリの逃避行を企てた、ということ。何ものかが、ハリに目指す「心理歴史学」の中心原理を考案させるように誘導している、ということ。ハリの目指す「心理歴史学」を担う新たな組織、それを維持する施設を、より堅固にするのに、何を乗り越えなければならないか、をY 市の反乱事件で示されたように思った。
その背後の人物、それはチェッター・ヒューミンであり、ロボット・ダニール・オリヴォーであり、宰相エトー・デマーゼルだったということ。そしてドース・ヴェナビリも彼のお膳立てによるものだと。
話しを元の状態に戻す。ヒューミンは、何食わぬ顔で現れ、ハリに禍福の入り混じりあったニュースを伝えた。
ガールは、久しぶりのヒューミンとの再会に歓喜するやいなや、突如として眠気を催して、睡眠に陥ってしまう。
ガールは、催眠術に懸けられていたのだろう、気がつけば見知らぬ航宙船のなかにいる自分に気がついた。見上げれば、容姿端麗な女性が立っていた。
そして親しげにガールに話しかけてくる。
無事に任務が完了した。放射能防御シールドのカーテンに護られ、二人は荒涼とした地球の大地を踏みしめた。ガールは朧気ながらに地球の光景を眺め、また遊んで走り回るウォンダを目を円くして眺めていただけであった。もう一つの使命など忘れていたように。
ただウォンダが地面の割れ目から湧きだしている水に狂喜して、なにやら汲んでいるのは覚えていた。しかもその泉の回りにはクローバーが密集していたことも。
再生の命というものなのであろうか!
ウォンダが汲んだ水は三つに分けられ、それぞれ透明、紫、黄色のシリンダー・ペンダントに入れられ、そのうち紫のシリンダーはターミナスに避難したの彼女の妹ベリスに渡してくれるようにウォンダがガールに頼んだ。
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「このメモは公には出ないであろう。しかし聡明な我が娘ドースはこれを見つけ出すかも知れないが、どうしても書いておかなくてはならない。なぜなら、両方を知っているのは人間では私一人なのだから。」『父ガールのメモ書き(ドース・ドーニックによる)』
三人と別れた。セルダン先生はあと二年ももたまい。
モーブの町には仕事が山ほどある、国会議事堂とそれに付随する行政機関、そして公園を完成させたばかりだ。大事な図書館こそ丁寧に豪勢につくらねばならない。なにしろ、ターミナスの存在は表立っては、銀河帝国の全歴史の辞書編纂にあるのだから、その名は、「百科辞書編纂ファウンデーション」。
仕事を早めに切り上げて、自宅へ向かう公園の側を歩いていたときであった。萌葱色の霧雨。大地が霞んでいた。公園のなかは少しばかりの谷になっていて、泉のせせらぎが聞こえ、小鳥が囀ずっていた。公園の森は木々が緑色に染まり、大空には虹がかかっていた。その虹を見上げていた少女がいた。物思いに耽っているような、憂いを帯びた。アッと叫びそうになった、「ウォンダ」っと叫んでいたのかも知れない。その時脳裏に浮かんだのは小さな島に咲き誇ってたクローバーを摘んでいたウォンダの姿であった。目を斜め下に戻した時にはその姿は消えていた。
yatcha john s. 「 park side 」