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ラフレシソミト

金木犀の香り

2016-10-27 11:11:11 | 小説
 会社から歩いて5分の場所に皆が移動するとき、後輩が私にひっついてくるのかと思ったら、そいつは若い仲間に声をかけ道を歩いていった。
なんとなく気まずいのでとりあえず私は声をかけてみた。
今日残業してって言われた?
聞こえなかったのか、何も答えず二人はなにか話した。
その二人の会話がまったく聞こえずに私は二人から少しずつ距離をあけた。
世間は狭いだって?ならば、何故私はこんなにも孤独なんだい?
 小学校のころ友達が一緒に帰ってるとき私は離れて一人で帰ったことを思い出した。
間違いだらけの道順 なにかに逆らって走った
誰かが 教えてくれた
とても寂しくて悲しかったから
家族と一緒の時間を過ごせば、孤独なんかじゃない。
ずっとそうだった。
家族の一番大事な人を失ったらどうすればいい?
形のないもの?
この先いいことあるのかな?
Tiitaはあの人に一番近いって気づいた。
睡眠導入剤を飲まないようにしてたのに異常に眠気を覚える。
 そう言えばいつも買い物でTiitaのものを探していた。
ずっとまえに賽の河原の話を教えてくれた。
親より先に死んだ子どもが賽の河原で親の供養のために石を積む。
ちゃんと積めたら三途の川を渡れるのに
鬼が出てきて積み終えるまえに石を崩してしまう。
別の人が教えてくれた。
親が死ぬまで子供に三途の川を渡るのをとどめている鬼の優しさだって。
 金木犀の香りをかぐと祭りの季節だって毎年言ってた。
神出鬼没のイタコ。
他人のために尽くす。
年配が出てドン引きされるよりずっとマシ
部屋の前まで来て会ったつもりになって帰った。


──吉高浩司──