「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」(米・食味鑑定士協会主催)の都道府県代表お米選手権部門で昨年11月、4年連続の金賞を受賞した。
滋賀県竜王町の又八、若井農園代表・若井康徳さんは、稲作農家の16代目。
子どもの頃から父の背中を見て田んぼを手伝ってきた。コシヒカリ、にこまる、日本晴、みずかがみ、龍の瞳…。栽培する米は35品種に上る。
「いろんなお米を食べたいから」と笑うが、異なる種類の米を育てるのは管理が大変。一方で「たくさんのデータが取れ、苗や稲を強くするヒントが得られる。リスクも分散できる」とプラスに捉える。
竜王町北西部の鏡山の麓で、山の水の恵みを生かす。栽培面積は32ヘクタール。砂地が多い。「肥料を入れても抜けてしまい、多くの収量は望めない。量より質で勝負です」
光合成を行うラン藻を使ったピロール農法と、米ぬかはぼかし肥料に。もみ殻はくん炭にして田に返す手法を組み合わせ、「土の味は米の味」を信条に質の良い土づくりに励む。
一本一本の苗に風や光が十分に届くよう、田植えの際には苗と苗の間隔を広めにとる。「収量は普通の田の半分か、それ以下になってしまうこともある」という。それだけに、質にこだわる。炊きあがったときの艶と香り。視覚と嗅覚からも食欲を刺激する。そんな理想を追い続ける。
名刺には屋号「又八」の前に、「米師」の文字が刻まれる。米師とは「作るところから食べるところまで提案できる、米作りの匠(たくみ)」を意味するという。
全国的に米の消費量は昭和中期の半分程度に落ち込み、食の多様化が進む。取り巻く環境は厳しさを増すが、「卸業者にお米を渡して、お金が入れば終わりではない。『おいしい』という、食べた人のひと言が最大のやりがい。だから手は抜けない」と力を込める。
<中日新聞より>