八ヶ岳 濃淡庵画廊

画工房濃淡庵で製作した作品の公開。

朝の祈り

2019-07-02 19:11:32 | 画廊
 濃淡庵製作の第五作目。

 一つの作品を仕上げるのには人一倍時間を要す。
なぜなら製作途中の絵を、ただひたすら見続けるだけという行為も製作時間として加算されてしまうからだ。
この見ているだけの時間の長い事長い事。つまり、自分としては決してサボっているわけではないと言い訳したい。

 筆を動かしている時間と、ただ見つめているだけの時間の割合は、たぶん3:7ぐらいだろうか。
長々と見ることによって漸く完成とした、ある日の朝の風景。







 もののけ森の朝。
愛娘マフィンと一緒に仲良く散歩する。
木立の中を好き勝手に歩いて、胸いっぱいに朝の森の空気を吸い込む。

 この作品の中のマフィンが咥えているのは鹿の頭蓋骨。

 マフィンは鹿の骨を見つけると、小さなカケラでもじつに嬉しそうに持ち帰る。
この日は特に立派な頭蓋骨をゲットした。
こうなるともうマフィンはお散歩はどうでもよくなって、早く家に帰りたいばっかになる。
本当に、おもちゃを買ってもらった子どものようだ。

 「わかった、わかった、よしよし、イイの見つけたねえ、じゃあ帰ろうかあ」

 そんな嬉しそうなマフィンと家路についた時の、思い出のワンシーン。

 この聖なる森には、鹿の骨が散乱している。
時には見事な角の立派な頭蓋骨を発見する。
かつて、この森には多くの鹿が生息していた証である。

 鹿は山の神の使いと言われる。
この森は山の神と、その使い達の御霊で満ちているのだ。
だから、散歩をするだけで、厳かな祈りの気持ちが湧いてくる。

 我が家にはマフィンが持ち帰った立派な神の使いの頭蓋骨がゴロゴロしている。
なんだか、罰当たりのような気もするが、怖いとか気持ち悪いとかいう事はまったくない。
なにしろ可愛い我が子との大切な思い出の品なのだから。



 (91.0㎝ × 91.0㎝    キャンバスに油彩)