時計回りを選ぶ。起点は中央駅東口外階段下としよう。霧島神宮の本殿へ向かう幅広の石段を思わせる階段は、以前、最上段に喫煙所があり、よく利用していた。駅前の風景を見下ろしながら一服するのは気持ちのいいものだった。
「ここに喫煙所があるのは、鹿児島の玄関口としてふさわしくない」との理由で、喫煙所が遠くへ追いやられてから、この階段が縁遠くなった。どう使おうが、利用されてこその階段と思うのに。
以前は大人も利用していたが、今では主に若者がたむろする場所になってしまった。ああ、つまらない。ともあれ階段は、アミュプラザの増築に伴い、姿を消す運命にある。
一番街アーケードへ進む。入り口左手の果物売りのおばちゃんは、腰かけていつもテレビか新聞を見ている。冬場も、風よけのついたてを立てて、じっと座ったままだ。
やがて左手に現れる数軒の土産物屋は、泥臭さが残り、飾り気もなく、駅ビル内の近代的なそれと一線を画す。庶民的な一番街を象徴するたたずまいである。
うどん屋ふくわうちは、よく昼食で使う店。決まって、うどん定食を頼む。この前珍しくカウンター席に着いたら、目の前で調理していた主人が、「うどん定?」と機先を制した。
自分と同じ年の主人は親しみを覚えるのか、行くと必ず小鉢を一品添えてくれる。刺し身が多い。少しだからなおさらおいしく感じられる。いつもすみません、といつも主人に声をかけて食べる。
食べ物屋といえば、右手にある、やまちゃんラーメンもいい。普通の倍はありそうな大きなどんぶりに入ったチャンポンをよく注文する。ここの女性2人は、以前易居町にあった南日本新聞会館の地下の店で働いていた人たち。新聞社の移転に伴い、ここへ移った。なつかしい顔ぶれだ。
一角を再開発してできた近代的なアエールプラザがあまりにぎわっていないのが気にかかる。一帯はやっぱり泥臭さに徹した方がいいのではないだろうか。既存の洋品店、時計店、ふとん店、雑貨屋にしても、それほどおしゃれでないところがいいと思うのだが。
一番街の突き当たりを右へ。右手に焼き鳥屋や肉屋が間近に並ぶ。JRの宮田踏切を越える。商店街をつなぐ踏切のせいか、人通りが多くて活気がある。自転車も、若者も、年寄りも行き交う。
宮田踏切は、鹿児島線と指宿枕崎線、それに日豊線回送の多彩な列車を見ることができるポイントでもある。鉄道ファンは、喜ぶかもしれない。
宮田通りのスーパー・タイヨー先を右へ。ギョーザ専門の河童屋という店がある。名前も面白く、いつか買ってみたいと思いながら、まだ実現していない。
駅西口へ至る道は、さしずめJRロード。JR九州の関連会社が並ぶ。駅が近付くと、乗務に向かう社員、乗務を終えた社員の制服姿が目立つ。
西口コンコースを抜けて、ゾウさんのはな通りへ。新しいホテルや飲食店が軒を連ね、ここ数年で最も様相を変えた通りの一つだろう。右手に現れるゲストハウス・リトルアジアは、まち案内をしていて最近よく外国人たちに尋ねられる宿。一泊1500円はありがたいに違いない。
黒田踏切へ向かう交差点の曲がり角にあるみゆき酒店は、店内で酒が飲める。昼から男性たちが時々飲んでいる姿を見かける。いいな、と思いながら通り過ぎる。
踏切を越え、餃子の王将を右に見て、西銀座通りへ。左に現れる西春屋かまぼこ店が「絶景」だ。店の奥の開け放した茶の間が丸見えで、夕方通りかかると、三世代家族が肩を寄せ合って夕食をとっているのが見える。現代人が失ってしまったような光景を目のあたりにして、何ともうれしくなるのである。
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ずん
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