能勢謙三の鹿児島まち案内日記

新幹線景気の陰で こぼれ36

 21日と22日の土日、熊本からの来客を車に乗せて県内を案内した。初日は知覧経由で枕崎へ、そして坊津、笠沙、加世田、吹上を経て鹿児島市に戻った。

 客をまず驚かせたのは、知覧の広大な茶畑である。四方に広がる緑のじゅうたんは、初めて見る人ばかりでなく、見慣れている地元の人間にとっても感動もの。遠くには開聞岳もそびえている。よそではあまり見られないダイナミックな風景だ。

 枕崎では、かつお節作りに使われる薪が街のあちこちに積まれているさまが新鮮に映ったようだ。漁港のお魚センターに立ち寄る。客が少なくて閑散としている。あいにくの強風に加えて雨も降る悪天とはいえ、週末にしては寂しい。

 枕崎から大浦に至る海岸線は、何度通ってもあきさせない。ところどころ新設されたショートカットの道路には白けるが、まだまだ残る手つかずの自然に圧倒される。

 枕崎のお魚センター同様に寂しかったのが笠沙恵比寿だ。入館者は他に1組しかいなかった。職員も手持ち無沙汰で、若い男性が、ちょっとうるさいくらい付きっ切りで丁寧に案内してくれた。今年で開館12周年。まだきれいに保たれている立派な施設に客は感心していたが、新幹線全線開通効果は「ない」という。JR九州の列車や駅舎などのデザイナーである人がデザインした施設というのに、何だか皮肉だ。

 笠沙から大浦に至る海沿いにそそり立つ段々畑も見ものである。知覧の茶畑と同じように、よそであまり見られない貴重な風景。熊本で農業を営む客は、早々と田植えされた大浦干拓地ともども、大いに関心を示した。

 2日目は鹿児島市池之上町の福昌寺跡を訪ねた。近くに住んでいた少年時代、放課後の遊び場だった場所だ。玉龍山のボリュームのある緑を背にした広くて起伏のある敷地に、島津6代から28代まで歴代の藩主とその夫人、住職たちの墓石が累々と並ぶさまは客を大変感動させたよう。「もっとPRして、多くの観光客に来てもらえばいいのに」と話した。同感である。石碑や看板ばかりで、現物が乏しいと言われる鹿児島市内の史跡の中で、貴重な形のある史跡。もっと知られていい、と感じた。
 
 効果が偏っているといわれる新幹線景気の陰で、まだまだ目を向けていい場所が県内にはある。


 

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