能勢謙三の鹿児島まち案内日記

思い出の店5

井之上食堂

 中央町の宮田踏切近くにありました。豚汁のような味噌煮込みうどんが名物でした。
 先日近くを通りかかると建物が壊されて、更地になっていました。あれよあれよという感じの結末でした。
何の変哲もない店でした。飾り気もなく、ただそこにありました。
 3姉妹が店を切り盛りしていました。商売っ気のない3人でした。そう見えました。
 いつか店の歴史について聞いたことがありました。ご両親が始めた店だったそうです。
 何があったのか、なかったのか、3姉妹が力を合わせて店を続けていました。
 面白い店で、調理場の奥に奥座敷がありました。表の入り口と他に、もう1つ入り口があったようでした。
 店に入ると1人1人出されるアルマイトのお茶が好きでした。何だかぜいたくな気分になりました。
 かといって、メニューは至って庶民的で、600円以上の品があったかどうか。
 店も店なら、お客もお客。なぜか親しみを覚えるのでした。なぜか皆言葉少なで、肩ひじ張った人は、ほとんどい ないような。
 時々踏切を渡る列車の音も聞こえてきました。鹿児島中央駅というより、西鹿児島駅発、あるいは着の列車。日本 列島の際ぎわにある駅の、その際ぎわをしのばせる食堂でした。
 旅立つ人もいれば、たどり着いた人もいたでしょう。何が始まるのか、何が終わるのか、誰にもわからない運命の 中に、煮込みうどんが煮立っていました。
 時々、小ライスを頼みたくなりました。時々アルマイトのお茶も飲みたくなりました。つい小指を立てる自分がイヤ になりました。
 
 3姉妹といえば、近くのモーカルも、西田の伊佐も3姉妹の店でした。鹿児島中央駅近くには、なぜか3姉妹の店 が多かったのです。伊佐は1人欠けました。井之上食堂は消滅しました。モーカルだけが健在なようです。

 
 
 

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「思い出の店」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事