能勢謙三の鹿児島まち案内日記

思い出の店6

はやし

 天文館でエンパイヤといえば、それがなくなった今でも「エンパイヤの近く」などど名前が使われる存在ですが、その周りに張り付くように肩を並べて建っていた小さな店々も、それぞれ個性的でした。
 「はやし」もその1つです。文化通りから見れば、ねぎらあめんの角を入った細い筋、山之口本通りから見れば、第2三木ビルの裏筋にありました。
 カウンターだけ5、6席ほどの小さな小さな居酒屋。天文館の名クラブ出身の林さんというおかみさんが1人で営んでいました。いつも、しょうゆ仕立てのおでんがあったような気がします。ビールが好きなおかみさんでした。
 店は1階だけですが、逆L字型の急な階段を上ると2階もあり、酒や荷物が置いてありました。店を閉めてから、ここで休むこともあったのかもしれません。
 壁には、有名な誰かに書いてもらった色紙が張ってありました。いつか酔って自分のメモ帳に何かを書き、それを破って張ってもらったことがありました。おかみさんは、ありがたがってずっと張っていました。何と書いたのか全然覚えていません。どうせ思いつきで書いた駄文だったのでしょうが。酔えば何かを書きたくなる癖がありました。今でも時々その癖が出ます。
 トイレが印象的でした。便器は普通サイズなのですが、スペースがとても狭くて、肩幅くらいしかありませんでした。両側の壁に挟まれて用を足すといった感じでした。ここまで書いて思い出しました。メモ紙には、こんなトイレのことを書きました。ここで小便をすると、自分の小ささ、狭さを思い知る、というようなことを書いた気がします。
 見かけも店内も、煮物や煮しめのような、いわばしょうゆ味のこんな店が天文館に少なくなってきました。残るのは、二本松馬場通りから入った新宿街や、祇園会館あたりくらいでしょうか。
 飲み屋街は、小汚いくらいが居心地が良いものです。こぎれいな新築・屋台村の行方が今から気になります。
  
 
 
 

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