【季語・ホトトギス】
季節外れの季語ですが、だいぶ昔に「ホトトギス」という季語を歳時記で調べたときに「うん?・・どうしてこんなにホトトギスという漢字があるんだろう」と思ったことがあり、ちびりちびり調べたことがあった。それを今回は記事にいたします。
まず、「ホトトギス」の漢字ですが、①不如帰②杜鵑③杜宇④蜀魂⑤蜀鳥⑥沓手鳥⑦橘鳥⑧卯月鳥⑨賤鳥⑩田長鳥⑪妹背鳥⑫郭公⑬雷公鳥⑭思帰⑮子規等々。(これでホトトギスと読ますのか!)
しかし一番ポピュラーな漢字は「時鳥」でしょうネ。
俳句では、鳥らしい名前で読めない漢字があったら〃ほととぎす〃と読めと言われているくらい、多種多様な漢字表現に溢れている。
しかしよく調べてみると①~⑤は中国の故事からの由来。「蜀の神話に杜宇(とう)という王が居て望帝と号していた。配下の大臣の妻と淫してしまい、そのことを愧じて大臣に王位を譲り、自分は山中に隠棲し帰ることはなかった。毎年種まきの時期になると、民衆に報せるべく声を振り絞った。
人々は、ホトトギスの血を吐くような啼き声を聞き、あれは望帝だと偲だ。」という内容らしい。
⑥の沓手鳥ですが、なんと前生が沓屋であったというのですが、それは鵙(もず)との絡みの話からのものだそうだ。
⑦橘鳥ですが、ホトトギスは橘の木に宿り、⑧の卯月鳥は卯の花の咲くころ日本に渡ってくることからの命名。
そして一番ポピュラーな「時鳥」は、田植えを始める時期を告げるということで、時を告げる鳥、すなわち「時鳥」になったと。
(他はながくなりますので、今回は略します 笑)
しかし角川俳句歳時記(夏)を開いて、解説の隣に「●考証」という項目がありますが、なんと2ページ半もあり、それにはまだまだうんざりするほどの名前がありますのでご覧になってみてください。
また「ホトトギス」に関しては『枕草子』の中にも面白い話もあり、近代では徳富蘆花の『不如帰』などが有名ですネ。
さて道元禅師の歌に
春は花夏ほととぎす秋は月
冬雪さえてすずしかりけり
とあり、雪月花に匹敵するほどの夏を代表する季語でもあります。
有名な「夏は来ぬ」(作詞 佐々木信綱 作曲 小山作之助)でも、卯の花の匂う垣根に ほととぎす♪とあり、夏を告げる鳥として作詞されている。
因みに、『万葉集』には、百五十三首も詠まれて第一位。(二位は雁四十九首)『古今和歌集 巻三』の夏歌全三十四首のうち二十八首も詠まれている。
そして「ホトトギス」は昼夜、血を吐くまで鳴くということからご存じ正岡子規の俳号の由来にもなった。天下人の信長、秀吉、家康の性格を的確に表現した川柳にもホトトギスが使われている。フィギュアスケーターの織田信成は子孫だが、信長のそれをもじって「鳴かぬならそれでいいじゃんホトトギス」と詠んで笑いを誘った。
さて鳴き方なども「テッペンカケタカ♪」「トッキョキョカキョク♪」などと多数あり、また烏、鶏、雀、鶯ぐらいでしたら聞き分けることはできますが、それ以外の鳥の鳴き声はまったくもって駄目ですね!今度、吟行に行ったら、どなたか御教示願いたい(笑)
この「ホトトギス」は、巣を作らず鶯の巣に托卵することでも知られている。8、9月頃には南方に帰ってしまうそうだ。
※典比古
たまには一つの季語に絞っていろいろ調べてみると面白い発見があるかもしれません!
目には青葉山ほととぎす初鰹 山口素堂
中村修さん ※兄弟みたいだね(笑)