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みふりの逗子ライフ

逗子で送るノンビリ自分ペースの日々

ロレンツォのオイル/命の詩

2009年09月13日 | movies
この先どんな困難に直面しようとも、この映画が僕に与えてくれた衝撃を思い出し、
何とか乗り越えられるはずだ、いや、乗り越えて行かなければならない。

それだけの衝撃を与えられた映画だった

この話が事実に基づいていることを考えれば、その思いは一層強くなり、心が震えた

熱い気持ちを感じたい時に、お勧めの作品。

制作: 1992年 アメリカ
監督: ジョージ・ミラー
出演: ニック・ノルティ、スーザン・サランドン、ピーター・ユスチノフ









■ストーリー
息子を襲った副腎白質ジストロフィー(Adrenoleukodystrophy, ALD)を直す医療方法が
存在しないと知ったオドーネ夫妻が、医学知識が全く無い中、自分達で医学の専門書や
関連する科学実験の文献を調べ尽くし、治療法を探していくストーリー。


■集合知
オーギュス(父)とミケーネ(母)は、文献を読み、ヒントを得るが、その先の
治療方法を見付けられない。そこで、医学会だけでなく、関連する分野の専門家を
集めてシンポジウムを開き、分断された知識をつなぎ合せようと努力する。

また、オリーブオイルに菜種油から取れるエルカ酸を加えることで、ALDの決定的な
治療薬を作れるという確信にたどり着いた時も、エルカ酸の大量投与は心臓障害を
引き起こす恐れがあり、医者も科学者も、その抽出を手伝ってくれない。そこで100社
以上に問合せ、遂にその抽出を手伝ってくれる科学者と出会う。

この話によって、自分達の手にしたインターネットの力を別の意味で強く思い知らされた。

インターネットの集合知と言う概念は、分断された知識がネットを通じて簡易に、
そして瞬時に結びつくことで、これまで得ることのできなかった知識の力を獲得するもの。

先週紹介した山川夫妻が翻訳するスピリチュアル本では、「人類全体の知が、
スピリチュアルに成長していく」という考え方が頻出する。
僕は、ネットによる集合知が、大小さまざまなレベルで問題を解決させる様は、
この人類全体の成長へとつながっているのではないかと思う。


■情熱
自分の息子が死に向かっている現実に日々突きつけられているオドーネ夫妻は、
専門家も発見できなかった2つの大きな発見をすることとなる。

これだけの情熱を持って生きているか?生きることができるか?
この映画を見ながら、何度も自分へ問い掛けた。

オドーネ夫妻は科学的に偉大な発見を与えてくれたが、それを映画化して世界に
広めたことで、沢山の人達に、情熱の火を与えてくれた、この偉大な映画制作の
業績にも深い感謝の念を持った。
製作者、監督、ニック・ノルティー、スーザン・サランドン、その他、本当に素晴らしいです。


■誰の正義も間違っていない、そこに悲劇がある
科学者、専門医は、多くの患者にとって安全で効果の出る治療法を、時間を掛けて
見付けて行かなければならない。

ALD財団(患者を持つ家族の会)の会長夫妻は、直る見込みの無い難病の親達を
如何に支援していくか?を全力で探し求めている。

オドーネ夫妻は、息子を治す治療方法の探求に全てをかける。

一方の正義にとって、他方の正義は間違った考えとなる。お互いが全身全霊で
事に取組んでいるだけに、それは大きな衝突と亀裂を残す。

今の社会でも同じようなことが沢山おき、そして自分自身過ちを犯す可能性が
あるんだと改めて気づかされた。

正義についてのこの学びを、生きる糧として残さなければいけない。
「全体感」
「他者を受け容れること」
「相手方の正義を知ろうと努力すること」

ブラス!

2009年06月20日 | movies
ブラス!

1997年作品
監督 マーク・ハーマン
出演 ピート・ポスルスウェイト、ユアン・マクレガー、タラ・フィッツジェラルド

■作品
1980年代のイギリス。サッチャー首相の構造改革により、産業の再生が進む中、炭鉱閉鎖の波が全土を襲う。会社経営陣との闘い、失業、貧困、家族の絆の崩壊に直面した炭鉱工夫達が、音楽を通じて人間の威信を保とうとする姿を描く、ヒューマン・ストーリー。

音楽を愛する者達が、様々な思いを持ちながら続ける演奏活動。名曲の演奏シーンに心が震える。

工夫とその家族は、組合活動を通じて炭鉱の存続をかけて闘う。10年前は交渉に打ち勝ち、炭鉱が存続する。しかし、1980年代になると、イギリス全土の炭鉱が閉鎖に向かうのは時間の問題となっていく。

賃金の大幅なカット、町全体の経済活動の停滞、貧困化、住宅ローンの重荷、家族の崩壊。

花形、安泰と思われていた一つの産業が終焉を迎えるこの町に、ブラスバンド活動を通じて、人間の威信を保とうとした人々の姿。

病床のリーダーに送る夜の野外演奏、イギリス ブラスバンドの聖地 ロイヤル・アルバートホールでの決勝演奏会、それぞれの場面で、それぞれの思いが交錯しながら演奏が続く。


■経済・政策の視点
30年前のイギリス構造改革の話が、今の時代にも同じ問題を抱えていることを改めて気付かされる、経済の視点からも意義深い作品。

炭鉱という産業が石油の登場と共に廃れていく、大きな時代の流れとしては止めようのない事実。

「鉄の女」と呼ばたサッチャー元英国首相が、構造改革、規制緩和、市場メカニズムの浸透を通じて、国の産業の再生を推し進めていく。

大きな流れとしては逆らえないが、市民一人一人のレベルでは、賃金の大幅カット、町の産業の衰退による貧困化、そして失業、住宅ローンの重荷と、改革の痛みが直撃する。

どこかで聞いた話?小泉構造改革と貧富の差の拡大、2極化。「痛み」を伴う構造改革を悪と断じれば、そのノスタルジーのせいで、保護された産業は次々と衰退し、国そのものの競争力が落ちていく。米国の繁栄を支えた自動車産業でさえも、その危機を迎える。

「構造改革は必要!」、しかし、1980年代のイギリスも、今の日本にも足りないものがある。構造改革で滅んでいく産業に従事する労働者=消費者=国民、この大切な人間の生活を守ってあげること、人々の再起を支援してあげる仕組み、この政策部分が圧倒的に足らずに、強者と弱者、勝ち組と負け組みの2極化が生まれてしまう。

1980年代に行われたサッチャー元首相の政策が悪いわけではない。10~20年スパンで見れば、その後、英国は国際金融の中心地として、経済の復活、成長を遂げるのだから。しかし30年後となった今、住宅バブル崩壊、金融資本主義の崩壊を迎えてみると、30年前と変わらず、改革や経済再生の痛みを受けるのは、いつの時代も一般市民(労働者=消費者)だということに、改めて気付かされる。



ONCE ダブリンの街角で

2009年03月07日 | movies
突然のタイトルコールに、

「えー(終わりなの?)」
「続編ないのかー?」

と思える映画に、何度出会えるだろう?


決して大きな予算の付いた大作映画なんかじゃない。

でもその映画の雰囲気に、
はがゆいストーリーに、
いつまでも浸っていたかった。


恋が遠のいて行きそうな時、
その恋をつなぎとめようとする気持ちと、
それが叶わぬ辛さから、”その他の恋(のようなもの)”を、
探してしまう気持ちがある。

この映画は、音楽を通じて知り合った2人が見付ける、
”その他の恋”の方の話。

気持ちを込めて歌う彼の表情も、
出会いから最後まで、トキメキと前向きさを見せてくれる彼女の表情も、
とてもチャーミングだった。

「後で又来るね」という言葉を、
何度も悩んだ末に、口から押し出した時の彼女の表情が、僕は好きだった。

その決断が、僕は大好きだった。




ONCE ダブリンの街角で

2008年アカデミー賞歌曲賞
2007年サンダンス映画祭ワールドシネマ部門観客賞
2007年ダブリン国際映画祭観客賞

出演: グレン・ハンサード、 マルケタ・イルグロヴァ
監督: ジョン・カーニー