子どもの頃に見たあるドキュメンタリー番組のことです。
エベレストなどの山に登って登山ごみを回収するボランティア活動についての特集でした。当時はわかりませんでしたが、おそらく野口健のことだと思います。
いろんな国の人々と一緒にエベレストに登り、たくさんのごみを回収しました。集めたごみをよく見ると、やたら目立つのが中国の文字が書かれた中国人登山家のものと思われるごみでした。
登山清掃の参加者には中国人もいたのですが、その彼が中国ごみの山を見て発した言葉が衝撃的なものだったのです。
「このごみの山は中国の恥だ。今すぐこの場で燃やしてなかったことにしないといけない。」
こども心に「世の中にはこういう考えをする人がいるんだ」と非常に驚いたことを覚えています。
すぐに野口さんと思しき日本人から「このごみを祖国に持ち帰って中国の人々に現実を知ってもらい、登山マナーの向上に役立てることこそあなたの重要な使命です。」と諭され、納得したようでした。
ちなみにこの中国人男性はその翌日、勝手にチームを離れて単独行動をしてしまい、エベレストで一時的に迷子な状態になってしまいました。幸いすぐに合流できたのですが「こういったボランティア活動で死者や負傷者が出てしまうと活動を続けていくことが困難になる。責任と自覚をもって行動してもらわないと…」と注意を受けることになりました。
いまだにこの番組の内容が頭の片隅に残っているということは、自分にとってよほど印象が強かったのだろうと思います。
ただこのときは、学校の先生のいうことをよく聞く普通の子どもでしたから、こんな変わった人はこの人だけだろうと思っていた気がします。
国民性だったと知ったのは比較的最近のことです。
日本では恥ずかしいことをすれば「恥を知りなさい」と諭されます。
中国では恥ずかしいことをすると「恥を隠しなさい」と教わるのでしょう。
隠してしまえば何が恥ずかしいことなのかわからないまま大人になってしまうと思うのです。