
時を超えてつながる想い
以下、作品のネタバレを含みますのでご注意ください。
今、異例の大ヒットを飛ばしている新海誠監督の最新作、『君の名は。』を観てきました。結論から言うと、非常に面白かったです。映像・音楽・ストーリー。そのすべてがマッチしていて、アニメーション映画としての完成度の高さをひしひしと感じさせられました。
『君の名は。』というタイトルからも連想できるとおり、本作は「思春期の男女の身体の入れ替わり」という青春SFストーリーのド定番ネタを用いた物語であり、設定としての目新しさはありません。でも、この王道ストーリーがとても言葉では表現しきれないくらい心に突き刺さってきたのです。
お互いにどこに住んでいるのかもわからないほど遠くで暮らしていた高校生の男女が奇跡的な現象を通じて出逢う。序盤は2人が生きる田舎と都会を対照的に描き、それぞれの生活に困惑するコミカルなタッチで視聴者の笑いを誘います。胸を揉むくだりなんかは、それこそお約束中のお約束かもしれませんが、男性視聴者の目線で言えば、やはり面白おかしく感じてしまうものでした。
時間軸から見る巧妙なストーリー
そして、話が進むにつれ徐々に2人の置かれている状況が明かされていきます。非常に面白いと思ったのは瀧くんと三葉さんの生活する時間軸には3年もの時差があったという真実。これがこの作品のキモであり、2人の切ない距離感を表現するのに十分すぎるほどのインパクトを与えています。この時間の流れとつながりが本作にとって重要なポイントです。
時間軸の整理
・2013年 9月頃
三葉さんが瀧くんの身体へ入れ替わり開始
・2013年 10月3日(ティアマト彗星落下前日)
三葉さん東京へ、瀧くんと出逢う (組紐を渡す)
三葉さん髪を切る
・2013年 10月4日(ティアマト彗星落下当日)
三葉さん亡くなる
~3年後~
・2016年 9月頃
瀧くんが三葉さんの身体へ入れ替わり開始
・2016年 10月3日
奥寺先輩とのデートの日。
・2016年 10月4日
瀧くんが三葉さんの身体へ入れ替わりが出来なくなる
・2016年 10月5日以後
瀧くん、三葉さんに会いに糸守町へと行く
瀧くん、3年前の糸守町の災害と三葉さんの死を知る
瀧くん、三葉さんの口噛み酒を飲み、再び、三葉さんと身体を入れ替える
~3年前~
・2013年 10月4日(ティアマト彗星落下当日)
瀧くん、彗星落下日の朝の三葉さんの身体へ入れ替わる
お互いの身体が入れ替わった状態の瀧くんと三葉さんが出逢う (カタワレ時)
三葉さんが自分の身体を引き継ぎ、お父さんを説得。過去が変わる
2021年
・瀧くんと三葉さんの再会(←ハッピーエンド)
・2013年 9月頃
三葉さんが瀧くんの身体へ入れ替わり開始
・2013年 10月3日(ティアマト彗星落下前日)
三葉さん東京へ、瀧くんと出逢う (組紐を渡す)
三葉さん髪を切る
・2013年 10月4日(ティアマト彗星落下当日)
三葉さん亡くなる
~3年後~
・2016年 9月頃
瀧くんが三葉さんの身体へ入れ替わり開始
・2016年 10月3日
奥寺先輩とのデートの日。
・2016年 10月4日
瀧くんが三葉さんの身体へ入れ替わりが出来なくなる
・2016年 10月5日以後
瀧くん、三葉さんに会いに糸守町へと行く
瀧くん、3年前の糸守町の災害と三葉さんの死を知る
瀧くん、三葉さんの口噛み酒を飲み、再び、三葉さんと身体を入れ替える
~3年前~
・2013年 10月4日(ティアマト彗星落下当日)
瀧くん、彗星落下日の朝の三葉さんの身体へ入れ替わる
お互いの身体が入れ替わった状態の瀧くんと三葉さんが出逢う (カタワレ時)
三葉さんが自分の身体を引き継ぎ、お父さんを説得。過去が変わる
2021年
・瀧くんと三葉さんの再会(←ハッピーエンド)
ざっくりと覚えている範囲で作中の時間軸を整理すると上記の通り。こう整理をしてみると、時間軸から見る脚本作りの上手さを実感させられます。瀧くんの生活する時間軸の3年前に彗星の片割れとなった隕石が落下し、三葉さんの住む糸守町は500人余りの犠牲を出す災害に見舞われる。中盤~終盤にかけてはこの事件による被害を防ぐために奮闘する2人の姿が描かれていました。
この世ならざるものに出会う時間である「カタワレ時」で三葉さんと瀧くんが出逢う場面。黄昏の語源である「誰そ彼」 ――つまり「彼は誰?」という言葉は作品のタイトルである『君の名は。』を象徴しており、再会を果たし、こみあげる嬉しさを抑えきれずに涙を流す三葉さんの姿に涙腺が決壊するわけですが、カタワレ時が終わりを迎えた後、絶対に忘れないと心に誓った「三葉」という大切な人の名前が瀧くんの中から消えていくシーンは本当に堪らなかったですね。
そして、三葉さんが髪留めとして身につけ、瀧くんの元へと渡った組紐もまた作品の中で重要な役割を果たしていた...というのも本当に素晴らしくて...。3年という時間。遠くにいる2人。組紐が時間のつながり、人のつながりといったあらゆるつながりを示す非常に効果的なアイテムとして機能していた点も物語を惹き立てるのに一役買っていたと思います。組紐が瀧くんと三葉さんの二人の赤い糸になってるという演出もまた視聴者の心をときめかせる要素になっていました。
ラブストーリーとしての名作
入れ替わり現象と時間軸のズレ。この2つの設定が作品を大いに盛り上げたことは言うまでもないでしょう。しかし、設定上の違和感があるのも確かだとは思います。原因不明の入れ替わり現象に始まり、2人はお互いの生活を体験してもなお真実を知るまで3年という時間軸のズレに気付かないというのも多少の無理があったようにも感じられるかもしれません。過去改変後にお互いの記憶があやふやになっているのも疑問符が浮かばないこともない。けれど、この作品の本質はそこではないと思うのです。
本来は出逢うべくもない2人が時間を超えて出逢い、その想いの強さで過去を変える。そして、お互いの記憶がないはずの2人が5年後、東京のすれ違う電車の中でお互いの顔を見合わせ走り出す。瀧くんと三葉さんが再び時間を超えて再会した瞬間。この瞬間にこそ、視聴者が一番待っていた瞬間がある。この2人が出逢えて良かったと、ラストにそう思わせるだけのストーリーがこの作品の随所に散りばめられている。物語の最後に2人が再び出逢えたことを視聴者が祝福した時点でエンタメ作品としてはもう大成功なんですよ。入れ替わり現象も時間軸のギミックも、全てはこのラストの2人のシーンのために存在するのですから。だからこそ、この作品はラブストーリーとして最高の出来であったと断ずるのに何の躊躇いもいりません。
視聴後に興奮覚めやらぬ気持ちで、こんな青春がしたい!と、そう感じられたらそれでいい。そう思わせる最高のハッピーエンドにありがとうと言いたいです。背景の描き込みもキャラの心情に寄り添える話・演技も抜群でストーリーを知ったうえでもう一度見ても絶対に楽しめる内容でした。いやー、2回目も観に行きたいですね。
これハッピーエンドになるのか?って
ラストのシーン観て安心させられたあたり製作の思惑通りなんだろうな
おもしろかったわ
走り出すシーンが青春を象徴していて背景作画と相まって映像にひきこまれる
観終わった後の心地良さがこの作品の強さだな
君の名は。はハッピーエンドでホッとしたなあ。やはり泣いたんだけど。。。笑
主役二人の友人たちも本当いい味出してた