先日、NHKBSで久しぶりにベルリンフィルのピクニックコンサートを観た。
これは毎年開かれる野外コンサートで、人気も知名度も大変高いイベント。
2005年は「フレンチ・ナイト」と銘打って、ラヴェルのボレロやサン=サーンスなんかやっていた。
お客さんは本当にピクニック気分でお弁当を持ち寄り、
暗くなってくるとロウソクに火をともしワインを口にしながら音楽を楽しむのだ。
みんなとってもリラックスしていて、ゆるやかでいい空気が漂っている。ああァ、行ってみたい。
そこでタクトを振っていた芸術監督、サイモン・ラトルがとてもチャーミングだったので
前から少し気になっていた「ベルリンフィルと子どもたち(2004/ドイツ)」を観てみた。
前出のラトル氏の企画で、ベルリンの一般の子ども(日本なら小中学生くらい)に
ベルリンフィルの演奏でバレエ「春の祭典」を踊らせることになる。
この映画は、子どもたちの中でも恵まれない環境にある生徒数人をクローズアップして追っている。
彼らは、はにかんでなのか「真剣」を知らないからかなかなか集中してバレエの練習が出来ない。
この企画のダンス教育を引き受けた振付師ロイストン・マルドゥーム氏が
真正面からの姿勢を絶対に崩さず、彼らに「集中しろ、自信を持て」と言い続ける。
そしてレッスンを続けるうちに子どもたちは何かを掴み、本番を成功させる…
これをキャストを立ててドラマ映画にしちゃったら、
とたんにお涙ちょうだい臭い映画になってしまうだろう。
それくらいシンプルな流れだった。言ってしまえば単調。
だけれど、そこははそれドキュメンタリーの強みで
静かに静かに第三者として子どもをみつめているためスンナリと観られる。
色々なスタンスではあるが、なにか人生の波に乗りきれない子どもたちが
多かれ少なかれこのバレエで何かを得た姿が爽やかで気持ちいい。
時折挟まれるラトルやマルドゥーム氏のインタビューは
ひとつひとつがいちいち頷けるものだった。
チャーミングな人というのは自分の立場をきちんとわきまえていて
さらに謙虚な心を忘れてはいないのだ。
その上まだまだ成長しようとしている。脱帽。
色々な立場の人の真摯な姿が見られるいい映画だった。
で、冒頭のベルリンフィルは実は重要性が低い(邦題に疑問)。
また今年のコンサートが近づいてきたので、そっちを楽しみに待ってみようかな。