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硝子のスプーン

そこにありました。

『蛍火の杜へ』(愛蔵版)

2012-05-19 13:45:33 | 漫画(感想等)
『蛍火の杜へ』著者:緑川ゆき(愛蔵版/ HC SPECIAL(白泉社))

先日映画を観て、失礼ながら、いまひとつ不完全燃焼の印象を抱いた私。同じく緑川ゆき先生の作品である『夏目友人帳』が好きなこともあり、なんか納得できなくて、「これは原作のほうが、私にはいいんじゃないだろうか」という思いに駆られ、原作である漫画(しかも愛蔵版vv)を買って読んでみました。

原作読んで、大正解。

以下、ネタバレだらけ(笑)。内容を知りたくない人は、この先読んだら危険。


原作読もうと思った自分を褒めてやりたい。←? 感じ方は人それぞれだろうけど、私にはやっぱり、夏目にしろ蛍火にしろ、緑川先生の作品はアニメより、漫画のほうが合っていると、改めて再確認。映画では、いまいち伝わってこなかった蛍ちゃんの想いが、染みこむように、じーんと胸にきた。

映画のほうの感想で、私が不満を漏らしていた、ギンと蛍ちゃんの最後の別れのシーン。消えていくギンの胸に、蛍ちゃんが飛び込むところ。好きな人が、成仏っていう良い形であれ、突然消えてしまって二度と会えなくなるのに、17~8の娘がよく躊躇なく、あんな満面の笑みで相手を送れるなぁ、精神強すぎだろ。って、不満というか疑問?を抱いたあの時の蛍ちゃんの表情。
原作漫画見て、納得。原作漫画のほうには、ギンに笑顔で「来い」って言われて、駆け寄る蛍ちゃんの、お面を外す一瞬前の表情(実際には、お面の陰になってて、はっきり顔は描かれてないけど)が、しっかり描かれてて、蛍ちゃんの複雑な想いが、雄弁なまでに表現されてた。あのコマ(絵)だけで、泣きそうになった。

もしかしたら、映画のほうにも一瞬あったのかもしれない、そういう描写が。でも一瞬すぎて、私が見落としてしまったのかも。アニメは尺の関係もあるし、どうしても展開が早くなってしまいがちだから、緑川作品みたいに繊細な優しさ(ある意味、厳しさ)が詰まってる作品は、ちょっと勿体無いと思う。
一秒一秒コマ送りでじっくり観る人、もしくは、心の目の動体視力が異様に鋭い人は別かもしれないけど、私みたいに、話の流れに流されて、ほんの一瞬の刹那に垣間見られる心の描写を見逃してしまう人には、絶対、漫画のほうが向いてると思うな。緑川作品は。

「忘れてしまっていいんだよ」というギンに対して、蛍ちゃんが「忘れないで」っていうシーンや、ギンが「もう夏を待てないよ」っていうシーン。あれらのシーンは、映画でも充分に二人の気持ちが伝わってきて、切なかったけれど、まだ幼かった頃、蛍ちゃんが木から落ちて、ギンに「何があっても絶対私に触らないでね」って泣くシーンや、最後に抱きつくシーンの蛍ちゃんの心の揺れとか、ギンが逝ってしまった後の、蛍ちゃんの「しばらくは夏を心待ちに出来ないでしょう ~(中略)~ さぁ、いこう いきましょう」っていうモノローグに込められた心の痛みや力強さは、漫画じゃないと、絶対私には伝わらなかった。

あっ、後ね! これまた映画のほうで不満垂らしてた、最初、蛍ちゃんが歳相応の子供に思えない件。漫画のほうでは、ちゃんと歳相応に思えたよ! ちょっと言葉遣いが、大人びてる印象は拭えないけど、屈託のない笑顔に躊躇いのない行動は、家族や周囲から愛されて大事に育てられている子供の特徴。蛍ちゃんは、みんなから愛されて、その愛を素直に吸収して育ったから、思春期に差し掛かった時、あんなに心の強い、優しい子になったんだねぇ。と、しみじみ。これも、漫画の蛍ちゃんの表情じゃないと、私には分からなかった。

いやはや、何というか。
さすが緑川先生なんデスネー。(←ちょっとギンの真似してみた。キャー、怒らないでー蹴らないでー)

一緒に収録されてる短編も、すごく良かった!

『体温のかけら』は、なんかもう、深い。一度大事にするって決めた人を傷つけたくないって思いは誰にでもあって、でも、想う心も誰にでもあって、これぞ情理の難しさ……って、何を言ってるか自分でも分からない(笑)。話のテーマは上手く説明できないけど、竹田くんの気持ちは、私よく分かるんだ。すごく良く分かるんだ。おかげで、苦しくなったぞ、チクショー(笑)。

『星も見えない』は、やるせなくも、優しいお話だった。一応、少女マンガなんだから(失礼)、優しくてふわふわした面だけしかない世界で物語を展開させてもいいのに、緑川先生は必ずといっていいほど、ふわふわ世界に、現実の厳しい一面を入り込ませるよね…。おかげで、読み手は非常に、やるせない(笑)。まあ、そこが、緑川作品の魅力なんだけどさww

『蛍火の杜へ 特別編』は、蛍ちゃんじゃなくて、ギンを主人公にしたお話。
実を言うと私、蛍火本編より、こっちで泣きそうになった。本編も切なくて、うるうるっときたけど、特別編は、それ以上にやばかった。私が、妖怪ものに弱いせいだろうか(笑)。ギンの純粋で一途な感情。孤独と寂しさ。妖怪達の温かみ。想う相手を思いやる優しさ。ありがちって言われれば、ありがちだけど、でも、(本編も含め)いい作品だと思う、本当に。
そんでまた、この話の、ギンが妖怪たちから大事にされている様子が、私の大好きな『夢やしきへようこそ』の勇太と被ってさぁ。そのせいで余計、泣きそうになった。もう、緑川先生を責めるべきなのか、さちみ先生を責めるべきなのか、分からない(笑)。私がこの人生で流した涙や、感じた胸の痛みの原因の何割かは、間違いなく、先生方のせい(笑)。


漫画『蛍火の杜へ』、買ってよかった。読んでよかった。本当に。
人によって様々だと思うけど、原作未読で映画を観た人は、機会があったら是非一度、原作も読んでみてはいかがでしょう。映画だけじゃ見えない、それこそ触れたら壊れてしまいそうな繊細な煌きが、漫画のギンと蛍ちゃんにはあると私は思う。何回も何回も、繰り返し読みたくなる。本当、おすすめです。


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2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
蛍ちゃん (りんご)
2012-05-21 00:35:22
早くも感想アップされてる!(*'v'*)

蛍ちゃんのことが分かってもらえて良かったぁ~!(;▽;)
ギンに飛び込んで行く前の蛍ちゃんの口元、あのたった1カットがすごく大切ですよね。

ギンの特別編も感動されたみたいで、愛蔵版をお勧めして正解でしたね(^^)
(私的にはこちらの方が手に入りやすいと思ったからなので)


初版の単行本と収録されてる短編やあとがきの内容が違ったりするので、良かったらこちらも…(押売り(_ _;)
古本屋とかで緑川先生の他の作品も読んで頂けたらと思います(^,^)

素敵な感想を読ませて頂きありがとうございました(*'-'*)
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こちらこそ♪ (のん)
2012-05-21 16:52:40
原作勧めてくださって、ありがとうございます♪
本当に、読んで良かったですvv 
ギンが一秒でも早く転生して、蛍ちゃんがおばあちゃんになる前に出会って、今度こそ、二人が一緒になれればなぁって、ちょっと無茶な願いを抱かざるを得ません(笑)。

特別編のギン、確かに、あっちの世界に行っちゃった夏目少年に見えましたww にゃんこ先生が傍にいないのが、不自然に思えるほど(笑)。
私的には、松蓑(←柿食べちゃった可愛いやつ)が、愛しくてたまらないです。抱きしめてあげたいvvv(≧▽≦)

ああ、また読みたくなってきた…!(←会社です(笑))
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