ひねもすひねひねネイチャー絵日記

ちょっとマニアックに自然を見てる、うしの絵日記です。

墓標

2006年09月21日 | 展覧会出品作



この「墓標」は、バードストライクにより死亡したオジロワシ若鳥の、実際の死体の写真を元に描いたものです。写真はニムオロ自然研究会より許可を得て使用させていただきました。

http://homepage2.nifty.com/NNRG/bird%20strike/041210.htm

 

 このワシが発見されたのは2004年12月、北海道根室市昆布盛に建ち並ぶ5基の風力発電用風車のすぐそばでした。
 傍目にはゆっくりと回っているように見える風力発電用風車の羽でまさかと思いますが、翼がすっぱりと切断されたワシの姿を見ると、その破壊力がいかに激しいものなのかがよく分かります。  

 北海道内では、2004年2月から2006年7月末日現在までに、5羽のオジロワシが風力発電用風車によるバードストライクのために死亡しています(ニムオロ自然研究会調べ)。


 オジロワシ及びよく似たオオワシは、同じようなルートで渡り同じような環境で生きる巨大な海ワシです。彼らは、種の保存法により国内希少野生動物種に指定されている絶滅の危機に瀕した猛禽たちです。このような種では、ほんのわずか死亡する個体が増えただけでも絶滅へ加速がかかってしまう危険性があるのです。


 彼らは、風に乗って渡りをしたり餌を取りに出かけたりと、風を利用した生活をしています。よって彼らの生息地は、風力発電用施設に適していると言えます。
 実際、オオワシ・オジロワシの主要な渡りのルートである宗谷には、大規模な風力発電施設が建設されました。現在さらに、重要な越冬地である根室にもまた、大規模な計画が持ち上がっています。

 風力発電施設建設による影響は、ワシだけではありません。小型鳥類も、植物も、小動物たちも、影響を受けます。建設される場所は、日本ではもう少なくなった、人の手が入っていない貴重な自然が残る場所が多いのです。


 「風力発電はエネルギー問題を解決するためだから、仕方ないじゃないか。」と言われるかもしれません。人間が生きていく以上、自然に影響を与えるのは仕方ないことでしょう。

 けれど同時に、影響を最小限に抑え、このすばらしい自然を後世に残すべく努力する義務もあると考えます。
 

 風力発電自体は、私はいけないことだとは思いません。だから、建設を決定する前に自然への影響を調査して「ここは希少種の生息地だからだめ」と言う地域を選定しておき、そこを除いた場所に設置を検討する、つまりゾーンニングが、今、一番必要だと考えます。


 そのためには、多くの人に事実を知っていただき、一緒に考えていただきたい、そんな想いから、この絵が出来上がりました。


(参考文献:風力発電用風車へのバードストライクシンポジウム報告集 ニムオロ自然研究会 2004)