ひねもすひねひねネイチャー絵日記

ちょっとマニアックに自然を見てる、うしの絵日記です。

オオバンヒザラガイを食べてみました

2011年05月19日 | 自然-その他生物
北海道根室の海の浅瀬を歩いていたら、ソフトボールぐらいの大きさの、なんか変な丸いもの↓を見つけた。




ウラはこんな感じで、ボール状に丸まっている。
動きは非常にスローモーだけれど、生きている。



一緒に歩いていた他の人に聞いてみたら、地元の人でもあまり知った人はいなかったのだけれど、色丹島からの引き上げしてきた方から、
「それは、ムイというものだ。」
と教えていただく。
包丁の背で表面の茶色い皮をこそげとり、ごく薄く切って、刺身にして食べるという。

なので、持ち帰ってやってみた。
この時点ではもうに死んでしまったらしく、まるまっていたのが解けてびろんと伸びてきていた。

皮をこそげ落とすと、ゴボウのような外観↓に。



裏側は、こんな感じ。
裏側の指のほうにある端っこが、口らしい。
真ん中あたりから、消化管が出ていて、包丁でぐりぐり皮をこそぎ落としていたら、その消化管から、食べたらしい海藻類が出てきて、流しに散乱した。




半分に切ってみると、肉はピンク色で、内臓を守るように、薄い骨格のようなものが肉の下、つまり内臓の上面を覆っていた。



刺身にしてみると、最初、5mmぐらいの厚さに切ったら、歯が立たなかった。
なので、筋肉の繊維の走行と直角になるように気をつけながらごく薄く切ってみた。



味は、ほんっとに硬いあわびのよう。
取り立てて美味しくはないけれど、あとを引く。
人によっては好き嫌いが激しく分かれるとは思うけれど、日本酒でも飲みながら、ぐだぐだ時間をかけてつまむような酒の肴に丁度いいような感じ。

これを一人で食べるのはなんなので、根室の学芸員さんたちのところにお持ちして、同定&味見していただく。

結局、この物体は、オオバンヒザラガイという原始的な貝の仲間で、大きいものだと40cmにもなるという。
この貝の場合、貝殻が完全に肉の中に埋もれているらしい。
貝殻は1個体の中に全部で8枚もあって、この1枚1枚の貝の形が蝶に似ているので、蝶々貝と呼ばれる。
学芸員さんのお話だと、カモメのペリットに、この蝶々が時々含まれているらしい。

「ムイ」という呼び名はアイヌ語で、アイヌ民族がこれを食用にしていたとのこと。
アイヌ民族の伝説では、オオバンヒザラガイの神とエゾアワビの神が戦って、北海道沿岸の東側をオオバンヒザラガイ、西側をエゾアワビがすみわけをするようになったとのこと。分布をちゃんと認識していたのが面白い。

しかし食用にしていたのはアイヌ民族に限らなかったようで、根室ではあまり知られていないけれど、北方四島では食用にされていたようだ。




なんか、怖いものが世の中から一つ一つ減って行くような気がする今日この頃。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
さすがぁ! (さし○かき)
2011-06-14 10:20:10
体長40センチのオオバンヒザラガイを丸呑みにしてペリットを吐き出す・・・。
北のカモメはスケールが違いますねぇ!

根室のオオワシは翼開長が7mあるとか、オオモズがハイカーをハヤニエにしたとか、噂は聞きますが、本当だったんですね!
ムイ (もうすぐ赤いちゃんちゃんこ)
2015-10-02 22:56:08
50年近く前になりますが友達とよく干潮時に磯に貼り付いているムイを無理矢理剥がしてその場で食べました。
味も食感もアワビに近かったですね。

ゴメ(ウミネコ)は時化の後に波際にうち上がった40センチは補食せず15センチ程のものを飲み込んで
ました。

えりも産まれで埼玉県のオヤジです。
大変遅い書き込み失礼致しました。

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