asahi.com「注目集める協同労働」マイタウン千葉
2010年05月02日
働く人が資金を出し合い、経営にも加わる「協同労働」が注目を集めている。
この労働の形に法人格を与えようという法案が、連休明けにも超党派の議員立法で国会に提出される。9日には法制化を踏まえた記念フォーラムが市川市内である。先駆的に取り組んできた県内の「職場」を訪ねた。(鶴見知子)
働く人が資金を出し合い、経営にも加わる「協同労働」が注目を集めている。この労働の形に法人格を与えようという法案が、連休明けにも超党派の議員立法で国会に提出される。9日には法制化を踏まえた記念フォーラムが市川市内である。先駆的に取り組んできた県内の「職場」を訪ねた。(鶴見知子)
船橋市高根台にある労協船橋事業団のヘルパーステーション「ゆりの木」。小さな事務所に夜、13人のヘルパーが集まった。月2回、全員の仕事予定の一覧表を点検しながら、皆で利用者の様子を確認していく。
向き合うのが難しい利用者もいる。「怒るとつえが飛んでくるの」「さっとよけて。『そこはダメよん』って返したら、悪態つきながらも笑顔になったわよ」。上手な対処法や知恵を口々に伝え合う。
チーフの名久井はる江さん(60)は「何でも話し合って共有すると、『こうすればもっと良くなる』と考えるようになる」と説明する。
今年24年目の同事業団は、「ゆりの木」など12の協同労働に取り組む。働く人は全員1口5万円以上を出資し、1人の出資額の合計目標額は給料2カ月分だ。12の協同労働では17歳から74歳までの計約100人が働き、年商2億円。常勤は3割で年収は300万円ほどだ。杉本恵子理事長(63)は「働くのに何でお金を払うの? と怪しまれたこともある。地域密着であれこれ仕事を開拓し、何とか続けてきた」と振り返る。
大手会社のヘルパーから1年前に「ゆりの木」に移った中嶋めぐみさん(38)は、カルチャーショックを受けたという。「以前は、決められたことをやっていた。ここは介護の仕事に熱い人が多く、そういう仲間がいるから勉強になるし、やりがいもある」
ゆりの木のヘルパーの定着率は高い。利用者も昨年より10人増えて、現在は50人を担う。今月の売上金額が読み上げられると、「目標達成ね」「期末手当、期待しよう」と仲間の声が弾んだ。
生活クラブ生協で活動した主婦を中心に始まった事業集団「ワーカーズ・コレクティブ」も協同労働を実践している。
佐倉市王子台の「回転木馬」は、3階建ての店舗に、無農薬野菜や手作りケーキ、贈答品や古民具などのリサイクル品が所狭しと並んでいる。1985年の設立。演奏会やカルチャー教室に使われる多目的スペースもある。
「暮らしの情報交換ができる地域のたまり場がほしかった」と代表の西山美代子さん(66)。出資金は1人80万円。景気に左右されるため、固定給でなく時給制だが、メンバー5人全員が扶養家族の枠から出て、社会保険に加入している。「自分の価値観を大切に、地域のために働けるのが一番」という。
売り上げの半分を占めるまでになったリサイクル着物の販売も、「嫁入り持参の着物が邪魔でも捨てられない」という地元の主婦の声をきっかけに、需要をつかんだ。
県内16団体が加入するNPO法人ワーカーズコレクティブ千葉県連合会は「法人格がないと個人の責任が無限に大きくなる。みんなで協同で担うにふさわしい法人格が必要」と話している。