『火の鳥 いのちの物語』
手塚治虫/原作 鈴木まもる/文・絵
金の星社 32ページ 1400円+税
2024年4月26日初版発行
花、虫、魚、鳥、動物……
地球にはたくさんのいのちがいきています。
いのちのふしぎ、いきることのたいせつさ、
地球のたいせつさをつたえる
ふしぎな鳥、火の鳥。
火の鳥からのいのちの物語。
(カバーソデより)
とびら
©TEZUKA PRODUCTIONS, Mamoru Suzuki
裏表紙
初版オビ
(裏に手塚るみ子さんのメッセージあり)
<制作ノート>
子供のころから絵を描くことが好きだったせいか、小学生の頃は手塚治虫先生の「鉄腕アトム」が大好きでした。
中学生のころから漫画家になろうと思ってマンガを描き始めたころ、月刊誌「COM」に「火の鳥」が連載され始め、その壮大な世界観、生命への賛歌など心打たれ何度読んだかわかりません。
高校生のころ描いたマンガを講談社に持っていき見てもらいました。でもそのころは「明日のジョー」とか「巨人の星」など、スポーツ根性物が全盛で、ちょっと自分にはそういう世界を描くのは向いていないと思い、画家で絵本作家という道を選ぶようになりました。
それでも手塚先生の作品だけは見ていました。特に「火の鳥」はテーマや物語の組み立て、コマ割りの使い方、人物描写の適格性、世界の多様性、表現の斬新生など、絵本作りに大きな影響を受けました。
そんな「火の鳥」の絵本を描くことになったのは、2年前NHKの「ラジオ深夜便」に出たことがきっかけでした…。
幸い視聴者の方に好評で再放送することになり昨年7月14日に再放送されました。
早朝4時からの番組なのですが、手塚治虫プロダクションのNさんという方が、たまたま早く起きて聞かれたそうです。そしてぼくが手塚先生のファンだったこと、現在の作品が生命の大切さ、平和の大切さをテーマにしていること、鳥の巣を研究していることなどを聞き興味を持ち、ちょうど今年が「火の鳥」70周年ということもあり、「何か一緒にできることはないか?一度お話したい」というNさんからのメールが、その日ぼくに届いたのです。
手塚先生は子どものころからの憧れで、お会いしたいのは山々ですが恐れ多くて遠い存在の方でした。そのプロダクションの方からなので、取るものもとりあえず高田馬場の手塚プロダクションへすっ飛んでいきました。
メールをくれたNさんと会い、漠然と「火の鳥」の話になり…
Nさんいわく、「壮大な歴史観で多様な人間の生きざまの物語りから、小さい子にはむつかしいし、最近の若いお母さんたちは読んでいない方もいる」とのこと。
そこで、「小さいお子さんがわかるような絵本のような形になるとよいのですかね」と答えると、
「そうですね、そんなの描いていただけますか?」
「 ”手塚治虫原作、鈴木まもる絵と文” ということですか?」
「そうです!」
ということで、予想外で「火の鳥」の絵本を作ることになり、椅子からひっくり返りそうになりました。
まさか子供時代から憧れの、それも名作、傑作の誉れ高い「火の鳥」の絵本を描くことになるとは夢の夢にも思っていなかったことでした。
「黎明編」から始まり「宇宙編」「大和編」など全12巻の未完の大傑作をいかに1冊の絵本にするか?
熱烈な手塚先生ファン、「火の鳥」ファンがいることは明らかです。そういう方たちが見ることを思うとプレッシャーで最初相当に心が乱れました。
でも巣にいる火の鳥を描き始めたら、火の鳥の周りに自然に鳥さんや動物さんが集まってきて楽しい世界を教えてくれました。
「あー、この世界を描けばよいのだ」とわかり、あとは楽しく絵が描け、この絵本が完成しました。
小さなお子さんが、この絵本から、手塚先生の大きな世界に入るきっかけになってくれたらうれしいです。
(鈴木まもる)
Amazon.jp (2024年4月26日発売)