12月3日、
私の執刀医となる ドクター マズガニ と会う。
緊張して連れと待っていると、そこに入って来たのは 私と同世代くらいの、
彫の深い美人、、、いや、笑顔の素敵なチャーミングな ドイツ系の女性だった。
話していても サバサバしていて はっきりとものを言う。話しているとなんだか安心した。
(この人だったら、心配いらない。この人に お任せしたい )
すぐにそう思った。
この前 カナダの医療崩壊について書いたが、
私の職場も友人も 私がいつ 医者と連絡がついて、手術できるのか心配してくれていて
(私も心配だった)
ドクター マズガニ にあった後、
「すごく素敵な女性の先生だった」と みんなに報告のメールを送ったら、
数人の友人らから
「私も以前 病院にかかったことがあったけど 医者と相性が悪くて、、、
ケイコさん、良かったね」 と 言われた。
日本のように セカンドオピニオンなどとは言っていられないカナダの医療、
ドクター マズガニに会えたのはラッキーだった。
手術までには2度ほど 検査に行き、
何度もいろんなオフィスから電話が来て 質問を受けた。
ドクター マズガニに
「患者がいっぱいいて、手術は4週から6週後になると思うんだけど
できるだけ 順番は早くなるように努力する」 と 言ってもらった。
(すでに12月、クリスマスに新年となれば、下手すりゃ、2月初めまで待たなきゃか?)
と 覚悟したが、意外と早く連絡が来て 1月6日に手術した。
手術から目が覚めて、ケアルームに6時間近く居たのではなかろうか。
その後 4人部屋に運ばれたのだが
(アレ?隣のベッドの人って男なの?)
と 思ったくらい隣の人が野太い声で唸っている。時に叫び、 オーマイガー!オーマイガー!を連呼。
私のもとに 看護師が 「これ使って」 と 耳栓を持ってきた。本当にうるさい。
翌日、病室の他の3人は、すべて私の倍くらいはある巨漢の女性で、
昨夜 騒いでいた婆さんのところには カウンセリングの女性が来ていたり、ご家族がきたりしていて
日中は穏やかに過ごしていた。
が、しかし、
夕食が終わったころからまた 隣のベッドの婆さんの様子が変わっていく。
ブツブツと文句を言いだし、
消灯後から ナースコールを連打。オーマイガー!オーマイガー!オーマイガー!と言い続ける。
(え?昼間 普通に過ごしてたじゃん) と 突っ込みどころ満載。
最初は 様子を見に来ていた看護婦も、
隣の婆さんが どこも悪くないようなので、だんだんと来なくなった。
この人は かまってちゃん なんだろう。
看護婦が すぐに来ないことに 腹を立てる婆さんは さらにナースコールを連打。
連打 連打 連打。
もう、なにかゲームでもやっているかのような連打に呆れていると、
ピタッと ナースコールが鳴らなくなった。
壊れたか?と 思ったが そうではない、後からわかったのだが、
ナースステーションで 婆さんのナースコールを切ったのだった。
看護婦から拒否される患者。。。。
隣の婆さんは 「ナース! ナース‼ ナ―――――ス!!!!!」 と 叫ぶが
誰も来ない。 そして オーマイガー!オーマイガー!オーマイガー!
そしてついに
「だれか、私のために ナースコールを押しなさいよ」 と 叫んだ。
しかしなあ、
これだけ 大声で呼んでるのに、看護婦もわざわざ無視してるのは明白で、
私が押すのもなあ、 と思っていたら、
隣のカーテンが シャーっと開いた。
そして 私のカーテンをつかんだのが見えて 思わず、
「開けないで。」と 言った。
「あなた、起きてるなら 私のためにナースコール押してくれてもいいでしょう?押さないなら
私にナースコール貸しなさいよ」 と言ってきた。
「私は病気でここにいるの、アナタを助けるためじゃない」
というと、その手は見えなくなった。
その後 婆さんは 「誰も 私を助けない!」 と 泣き叫び、吐く真似をして
「ナース! ナース!」と 呼び続けた。
しばらくすると その迫真の演技からか、
コポっと口から 吐き出してしまい、ベッドを汚したようだった。
時間にして午前12時くらいだったと思う、そこから 婆さんの声は更に大きくなり、
さすがに看護婦がやって来た。
婆さんは
「汚れたから ベッドを取りかえて 」 と言ったが
看護婦は
「それは無理」 といって 出て行ってしまった。
廊下には あちこちの病室からのナースコールが響いている。
そりゃ、看護婦にベッドを取りかえている暇はない。
私も なんで私がこんな目に、、、と この病室になったことを恨まずにはいられなかった。
婆さんの独り言と泣き叫ぶまま 午前3時。
お掃除担当らしき黒人の女性がシーツや毛布を持って入ってきて、
「汚れたものだけでも取り替えます」 と 言った。
婆さんは そこで落ち着きを取り戻し、淡々と彼女に
「だれも私を助けてくれない、ナースコールも壊れた」と言った。
黒人女性が 婆さんのナースコールを押すと、ちゃんと鳴った (笑
取り替えたシーツを持って、その黒人の女性が 「とりあえず、これでいいでしょう」と言ったので、
私も(やれやれ、やっと静かになるか) と 思った瞬間、
その婆さん、
「私も こんな肌の浅黒い女の世話になるなんて」 と言った。
助けてくれた人への差別発言、
ものすごい不快感、
ナニコノ人、何様?
翌朝、日勤の看護婦らが仕事に来て、話題は 問題児婆さん一色だったようだ。
昼間は 入れ替わり立ち代わりカウンセリングの人が来て、
夕方からは 看護婦が 婆さんの文句を先手先手で阻止、
婆さんのリクエストに応えて 新しいベッドや椅子が運ばれて
「これで 問題ないですね? あなたのリクエストはすべて叶えましたよ。吐き気止めも飲んでくださいね」
と 念を押されていた。
鳴らなくなったナースコールは自分の態度が悪いせい、と知った婆さんは
3日目の夜はおとなしかった。