第7話 「現れた存在」
このままでは争いになる。
その時、守里はアストラーダが味方ではないことを知った。
「敵には回したくなかったよ。可愛い妹だと本気で思っている」
手にしていたのはセイナと初めて会った時のアサルトモードだった。
しかも、それはセイナに向けられていた。
「艦長がいなくても動くのかな。このゲンナ号も戦艦だよね?」
なぜゲンナ号と知っていたか考えると、思い当たるのはマイールしかいない。
セイナを守らないといけないが、武器らしきものがなかった。
その時「ゴン」という鈍い音がした。
同時にアストラーダが頭をかかえる。
ベラーナが見過ごすはずもなく、飛び蹴りでさらにダメージを加える。
「あ、あのね、えっと…これしかなくて…」
照れたようにカンナがフライパンを両手に持って立っていた。
「ナイスだぜ!カンナ!」
ベラーナが言うと同時にララが少林寺で習った決め技で縛り上げた。
それと同時に麻生はララに手荒くしないで閉じ込めるように指示をする。
「どこに?あ、倉庫なら狭いけど空いてるけど?」
ララが言った時にはアストラーダの意識はなく、ただ連れられて行くだけだった。
倉庫といっても食料を保存して置くスペースで、人1人入るか、それより少し広い程度のほど。
「アサルトモードにゲンナ号の名前を知っているのが不思議ね。マイールに聞いたにしては簡単に話すかしら?」
トキノの言葉にはみんなが納得した。
そもそもあの倉庫に長くは入れられない。
「食糧不足が丸見えだわ…」
と、カンナは相変わらずフライパンを手にしてキッチンに座っている。
キッチンはいつの間にかみんなの相談の場になっているからだった。
セイナが息を切らしているのを守里が見ていると、もう一つ疑問点があった。
「こんなやすやす「来ましたよ〜」ってくる?もっと違うんじゃないかなぁ?」
ララが不思議そうに話すと、麻生が話す。
「意外に本当に妹の様子を見に来ただけかもしれん。偵察かどうかは分からんが、今現時点で危害を加えるとかじゃないんじゃないかな?おそらく…ついでに機体が見たいとかじゃの」
カンナが大きな声で言った。
「セイナを狙ったのに?…あり得ないわ」
するとセイナは元気な様子で話す。
「あのね…耳元で言ったの。危害は加えないから大丈夫って」
麻生を始め、リリアン、トキノ、カンナやララ、ベラーナに守里は顔を見合わせた。
黙っているみんなに対して麻生は言った。
「普通に帰ってもらうべきだな。機体のことにも触れず、帰ってほしいことだけ告げよう。ララ、意識の戻し方は知っているな?」
頷くララにベラーナは納得がいかないようだったが、意識を戻させ帰るように麻生が言う。
「まあ、いきなりの訪問者に随分と手荒い仕打ちだけどね。まあ当然かもしれないかな。帰るよ」
痛みを堪えるようにしていたアストラーダだったが、不思議な目で守里を見た。
「君に質問だが…アル・レレン艦長を知っているかい?」
助けてくれてそのまま去って行ったエンド・カンパニーの艦長を忘れていなかった。
頷きもできずにいると一言だけ告げた。
「生きている」
謎の言葉を告げたまま、アストラーダはどこに行ったか分からないまま帰って行った。
守里はなぜ存在を知っているか疑問と同時に、どことなく安心感も覚えていた。
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