こつこつと書き続けてきたショートショートが
ようやく2000本を越えました。
ここまで来ると、もはや自分との戦い以外の
何物でもありません。
素人が作るボトルシップの気持ちとでも言えるでしょうか。
『不便な思いをして肩こりにさいなまれながら
ちいさなパーツを突っ込んで瓶の中で船を作ることに
何の意味があるんだろう。
なんでこんなことやってるんだろう』
――考えたら負け、の思考が後ろでうろうろしています。
最近はショートを進める事ばっかり。
長いのも書いてみたいです。
せめて昔のショートをきちんと推敲して、
装丁して本棚に並べてみたいと思って、
小部数印刷をいろいろ調べてみましたが……
冗談じゃなく高いんですねえ、びっくりです。
本文なんてモノクロレーザー印刷で、
表紙だけまともなつやつやカラーで印刷、
それをまとめて製本してくれるだけ、
みたいなものはないみたいです。
世の中は常に、ままなりません。
とりあえず、2001本目はこんなのです。
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ショートショート2001本目
●ムダム
その会議室の一室では熱い論戦が繰り広げられていた。
とあるダムを建設するかしないかという話題である。
「とにかく、ダム建設を中止するわけにはいかない!」
と、政府の関係者は言った。
「中止すれば何のために土木建設会社に金もばらまいたか
わからなくなるし、見返りもなくなってしまう!
それに下流域への洪水災害も防げなくなるぞ」
「くだらない!」
と、環境保護団体の関係者は言った。
「ダムを作れば山が死に、木が死に、川が死に、
海が死にます。生態系に取り返しのつかない
損害を与えることになるのです。
ダム建設は中止すべきです!」
「虫や獣や魚の損害がどれほどのものだ!」
市民団体の一派の代表は言った。
「我々は、ダムが作られるからと
先祖代々住んでいた土地からの移住を余儀なくされた。
町の中では移住受容派と拒否派で争いもした。
そうして移住先では、せめてダムを観光資源にして
恨みを晴らしながら生きて行こうとしていたのに、
ダム建設が今さらなくなったら、
どうやって生きていけばいいんだ!
どうやって食っていけばいいんだ!
ダム工事はやってもらう。
いや、やってもらわなくてはならない!」
「ふざけるな!」
「おまえこそふざけるな!」
「ふざけるなとはなんだ、ふざけるな!」
怒号が飛び交う中、
「あの、少々よろしいでしょうか」
どこにも属さない司会の女性が声を上げ、
野次の言葉がおさまる。
「それぞれの意見をごく単純化して考えますと、
まずダムを作る問題点は、
ダムを作って水をためることで木々が沈み、
生き物が住処を追われ、
ダム底には泥がたまってその泥が将来的に
川まで汚染するといったことに思われます。
次にダムを作らない問題点は、
ダム工事と管理にお金がばらまけないこと、
ダムを観光地としてお金を稼げなくなること、
将来まかりまちがって万が一降雨量が増したときに
洪水の被害を防げなくなることと思われます。
……よろしいでしょうか?」
多少納得のできない顔をしながらもうなづく面々。
「では、簡単です」
彼女は言った。
「ダムだけ建設して、
水をためなければすべて解決です」
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