「だれとでも会えるとしたら、
あなたは、だれと会いたいですか?」
その文章を見たとき、ふと頭の後ろをかすめたのは、
小学校のクラスメイト。
低学年までのわたしはとにかく無鉄砲で考えなしで、
たとえば体育館に長いはしごがかけてあったら、
体育館の屋根まで登ってしかられたり。
どこにつながっているかわからない隙間があれば
校庭の端の倉庫の下にもぐりこんでしかられたりしていました。
でも、そんなわたしにも
好意をもってくれた子がいたらしく……。
ある日、学校に行くと。机の中に何かが入っていました。
なんだろうと取り出そうとする前に、
わたしの後ろの席だった子がそれを取り出します。
そして高らかに叫んだその物体の名称。……ラブレター。
まさか自分にそんな大それたものがくるとは
思ってもいませんでした。
とまどううちにその子は封筒を開け、
出した人の名前も、内容も読んでしまったのです。
出したのは、クラスでも目立たない感じの子。
そんなわたしでも知らないような相手がわたしの何を見て、
どうして好きになってくれたのか。
かなりはずかしかったのですが、嬉しくもありました。
その手紙はきっと、わたしの宝物になっていたはずです。
でも、わたしの机から手紙を出した子は、
くだらない駄洒落とともに
破いてゴミ箱に捨ててしまいました。
そのとき。差出人の子は薄ら笑い……
恥ずかしくて、悲しくて、悔しくて、
それを自分でもごまかそうとするような笑みを浮かべていました。
それを見たとき、わたしは体が凍りつくのを感じたのです。
あの顔……あの表情がずっとはなれません。
今回思い浮かんだのもその子、というよりその表情。
帰ってから、すこし気持ちが落ち着いてくると、
その時のことを何度も悔やみました。
なんでわたしはあのとき手紙を取り返さなかったんだろう。
なんでわたしは黙って見ているだけだったんだろう。
なにもできなかった自分がすごく情けなくて悔しいです。
そのことは、後のわたしに少なからず影響を与えたようです。
できるなら善意の人を守りたい。
まともなひとがまともに暮らせるような世界に住みたい。
そう思っているのですが、それは叶わぬ夢。
その後、高校のとき電車で、あの嫌な子を見かけました。
ラッシュなのに二人でべたべた。
周りが恥ずかしくなるような声で甘えていました。
その瞬間、いろいろこみあげるもの。
他人を傷つけておきながら自分はさも楽しそうに。
きっと自分がどれだけのことをしたかなんて
おぼえてもいないのでしょう。
さすがにあの時は、憎しみを感じたほどです。
中学に入る頃、引っ越していってしまった、手紙の子。
あのことがトゲになってない? わたしのこと、恨んでる?
会って話したい……とまでは言えませんけど、
どうしているのか、すこし知りたいです。
そんなことを気にしているのはわたしだけ、
そんなおまぬけな話なら
それが一番いいのですけど。
元気ならいいなと、思っています。
あなたは、だれと会いたいですか?」
その文章を見たとき、ふと頭の後ろをかすめたのは、
小学校のクラスメイト。
低学年までのわたしはとにかく無鉄砲で考えなしで、
たとえば体育館に長いはしごがかけてあったら、
体育館の屋根まで登ってしかられたり。
どこにつながっているかわからない隙間があれば
校庭の端の倉庫の下にもぐりこんでしかられたりしていました。
でも、そんなわたしにも
好意をもってくれた子がいたらしく……。
ある日、学校に行くと。机の中に何かが入っていました。
なんだろうと取り出そうとする前に、
わたしの後ろの席だった子がそれを取り出します。
そして高らかに叫んだその物体の名称。……ラブレター。
まさか自分にそんな大それたものがくるとは
思ってもいませんでした。
とまどううちにその子は封筒を開け、
出した人の名前も、内容も読んでしまったのです。
出したのは、クラスでも目立たない感じの子。
そんなわたしでも知らないような相手がわたしの何を見て、
どうして好きになってくれたのか。
かなりはずかしかったのですが、嬉しくもありました。
その手紙はきっと、わたしの宝物になっていたはずです。
でも、わたしの机から手紙を出した子は、
くだらない駄洒落とともに
破いてゴミ箱に捨ててしまいました。
そのとき。差出人の子は薄ら笑い……
恥ずかしくて、悲しくて、悔しくて、
それを自分でもごまかそうとするような笑みを浮かべていました。
それを見たとき、わたしは体が凍りつくのを感じたのです。
あの顔……あの表情がずっとはなれません。
今回思い浮かんだのもその子、というよりその表情。
帰ってから、すこし気持ちが落ち着いてくると、
その時のことを何度も悔やみました。
なんでわたしはあのとき手紙を取り返さなかったんだろう。
なんでわたしは黙って見ているだけだったんだろう。
なにもできなかった自分がすごく情けなくて悔しいです。
そのことは、後のわたしに少なからず影響を与えたようです。
できるなら善意の人を守りたい。
まともなひとがまともに暮らせるような世界に住みたい。
そう思っているのですが、それは叶わぬ夢。
その後、高校のとき電車で、あの嫌な子を見かけました。
ラッシュなのに二人でべたべた。
周りが恥ずかしくなるような声で甘えていました。
その瞬間、いろいろこみあげるもの。
他人を傷つけておきながら自分はさも楽しそうに。
きっと自分がどれだけのことをしたかなんて
おぼえてもいないのでしょう。
さすがにあの時は、憎しみを感じたほどです。
中学に入る頃、引っ越していってしまった、手紙の子。
あのことがトゲになってない? わたしのこと、恨んでる?
会って話したい……とまでは言えませんけど、
どうしているのか、すこし知りたいです。
そんなことを気にしているのはわたしだけ、
そんなおまぬけな話なら
それが一番いいのですけど。
元気ならいいなと、思っています。
