ろまんてぃっく

今まででいちばんロマンティックだったことって何だっただろう？
僕は記憶の奥底でそれを見つけた。それはある彼女との一番初めのデートでのできごとだった。

それは僕が創ったものだったのか？それとも彼女のおかげで僕が創ったものだったのか？
後者だったと思ってる。彼女のおかげで僕が創ることができた。なぜなら彼女は僕にかける魔法をもっていたし、僕にそれをさせる力をもっていた。
僕がしたことといえば、彼女の魔法と力を感じて、ただ創るだけだった。


僕が創ったもの、いやこういうべきかも知れない、僕らが創ったものは、、、

ある寒い冬の夜に、家庭用洗剤で噴水を泡だらけにすることだった。
彼女の僕への愛とぼくの彼女への愛が僕らにいくつかの家庭用洗剤-ママレモン-を東京の公園の噴水に投げ込ませたのだった。

ほんの数本のママレモンは、初めは小さな泡のかたまりになっただけだった。しかしその泡のかたまりはみるみる大きくなっていった。僕らはどんどん大きくなっていく泡のかたまりが浮かんだ噴水を見るためにちょうど道の反対にあったイタリアン・レストランに行くことにした。

初めの赤ワインの栓を外したとき、泡のかたまりは、オーブンで焼かれているケーキのように膨らんでいた。噴水のまわりにいた人々もちょうどこの泡に興味を持ち始めていた。
子供たちは噴水の周りを走り回り、あふれ出た泡をけとばしていた。恋人たちは寄り添っていた。噴水内の照明は、寒くて透明な空気の中に美しいイルミネーションを浮かび上がらせていた。　みんなが幸せを感じていたように感じられた。

僕は信じている。いや少なくともそう願っている。僕の彼女への愛と彼女の僕への愛が噴水のまわりにいた人々に幸せを与えたということを。　こう感じていた僕たちも幸せを感じた。　その感覚の中で、僕らは初めてのキスをかわした。