
絵画中心の制作が1996年辺りから立体に移行し始める。
素材はベニヤから木へ、そして現代的で無機質なアクリル板、
塩ビ板へと変わってきた。アクリル板による制作の最初の数年間は
乳白色の半透明を活かしていたが、塩ビ板も使うようになり
白黒の世界に入る。そして近年、赤も加わり有機的な要素が強くなってきた。
『内包』というテーマは人としての普遍的な共通項を見出したいという
願望そのものである。
『内包』をテーマとして制作し始めてすでに10年近くになっ
ている。最初の頃は自分自身を定義付けるものは何なのか
を追い続けていた気がする。内面に潜む深層に目を向けて
いるうちに自分の存在理由は外側にあるとの意識が強まり
個人としてというより人として動物として生き物としての
共通項を探し求めるようになった。
このテーマはライフワークにしていきたいと思っている。
赤い作品は実像と虚像の関係を表現している。原寸大の自
分とちょっと遠くにいる気恥ずかしくなりそうな自分を同
時に確認できる。どっちも紛れもない自分。白と黒の凸型
のものは誕生をイメージしている。それらの形は似ている
が決して同じではない。凸面は次へ繋がるエネルギーの膨
らみでもある。方形の連なる作品は絶えることのない時を
意味している。波のようにいつまでも過去と未来を彷徨う。
制作前に意図が明確にあるというよりは完成後に作品から
その意味を知らされ教えられる場合が多い。今回の作品も
そうだった。
『内包』ー時と場と人の内に包まれて 今 ここにいるー
制作年2009〜2011年
作品の寸法と素材
赤と黒 30×6×6㎝ アクリル板 カッティングシート 白と黒 10×10×2㎝ 塩ビ板

