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知らないことや気になることをいろいろと調べて記録していきます
 




今年2月にレスリングがオリンピックの中核競技からの除外となり、その上で9月に残留が決定したことは記憶に新しい。
どの種目が対象になるかはともかくとして、オリンピック競技に新しい種目が採用されること、また外れる種目があることについて異論はない。人類が技を競うスポーツは時代とともに変化して当然だ。

オリンピックで過去の行われたことのある競技は、以下の13種目だ。(復帰予定のゴルフとラグビーを除く)
クリケット、クロッケー、 バスクペロタ、 ラケッツ、 ジュ・ド・ポーム、 モーターボート、綱引、 ポロ、 野球、 ソフトボール、ラクロス、ロック、芸術競技  

オリンピック競技 過去の実施競技
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E7%AB%B6%E6%8A%80#.E9.81.8E.E5.8E.BB.E3.81.AE.E5.AE.9F.E6.96.BD.E7.AB.B6.E6.8A.80

異質なのはやはり芸術競技だろう。
古代オリンピックは神を讃えるという信仰的要素が強いものであり、スポーツは強く美しい肉体で神を表現することから生まれたものであり、芸術表現も同じく神を表現する一手段であった。また、近代オリンピックにおいてもその理念として「肉体と精神の向上の場」が掲げられており、クーベルタン男爵の希望もあり芸術競技が採用されたのだが、芸術作品について客観的な基準をもって採点を行うことが困難であり、しばしば恣意的な判定があったのではないかとの批判が生じて、正式競技から外れた。
1912年のストックホルム大会から1948年のロンドン大会まで7回にわたり正式競技として実施されており、1936年のベルリン大会では、絵画部門で藤田隆治の「アイスホッケー」が、水彩部門で鈴木朱雀の「古典的競馬」が、それぞれ銅メダルを獲得している。

日本スポーツ芸術協会の歴史と現在
http://www.sportsarts.gr.jp/about.html

他の廃止種目の中にも、聞いたことがないスポーツがいくつかある。これらを纏めて調べてみよう。

クロッケー (Croquet) は芝生のコートで行われるイギリス発祥の球技で、日本におけるゲートボールの原型だ。
イギリスで19世紀中ごろから人気が出て、1900年のパリ大会で採用された。

日本クロッケー協会 クロッケー歴史年表
http://www.croquet.jp/HistricalTable.htm



3つの競技(シングルス1ボール、シングルス2ボール、ダブルス)に7人の男性プレーヤーと3人の女性プレーヤーが参加した。国籍は1名がとベルギーで、他はフランスだった。そしてメダルは全てフランス勢が独占した。シングルス1ボールとダブルスで2つの金メダルを手にしたGaston Aumoitteは若干15歳だ。

Croquet at the 1900 Summer Olympics
http://en.wikipedia.org/wiki/Croquet_at_the_1900_Summer_Olympics

オリンピックのクロッケーはこの1回のみだが、続く1904年のセントルイス大会では、ロック (Roque) が行われた。これはハードコートで行われるクロッケーと言える。
競技に参加したのはアメリカの4選手のみで、必然的にアメリカ勢がメダルを独占。金メダルのCharles Jacobusは64歳。オリンピック史上最年長金メダリストはスウェーデンのオスカー・スパーン (64歳258日、1912年・ストックホルム大会 射撃競技) だが、ほぼ匹敵する。

Roque at the 1904 Summer Olympics
http://en.wikipedia.org/wiki/Roque_at_the_1904_Summer_Olympics


1900年のパリ大会ではバスクペロタ (Basque pelota) も行われた。これはスペインのバスク地方発祥の球技で、ミット状のものを手につけて壁にボールをぶつけ合うものだ。
細かいルールはわからないが、以下の映像を見るとイメージがわく。これは面白そうだ。



競技にはスペインとフランスの2チームのみが参加し、直接対決でスペインが金メダルを獲得した。尚、1924年パリ大会、1968年メキシコシティ大会、1992年バルセロナ大会でも公開競技としての実施されている。

1908年のロンドン大会ではジュ・ド・ポーム (jeu de paume、英real tennis) が行われた。これはテニスの先駆となったスポーツで、16世紀から17世紀にかけてのフランスおよびイギリスの絶対王政時代に全盛期を迎え、王侯貴族や市民に広く親しまれた。現在の競技映像があるので見てみよう。



競技にはイギリスから9名、アメリカから2名が参加し、アメリカ人のJay Gould IIがイギリス勢を押さえて金メダルに輝いた。大資本家Jay Gouldの孫でテニスの英才教育を受け、1906から1926年まで第一次世界大戦によって試合が行われなかった時期を除いて、大会を18連覇したという。いかにも高貴な雰囲気を醸し出している。



そして同じくロンドン大会では、ラケッツ (英Rackets、米Racquets) という競技も行われている。
ラケッツは18世紀に、ロンドンの刑務所で娯楽として始まった。囚人たちが刑務所の壁にボールをぶつけていたのを、スピードを高めるためにテニスラケットを使用したことが原型になっている。スカッシュと起源が似ているが、ボールが違うので何とも心地の良い音がする。これも現在の競技映像があるので見てみよう。



競技にはシングルスとダブルスにイギリスの7人のみが参加し、当然イギリスがメダル独占したのだが、シングルス金メダリストのEvan Noel、ダブルス金メダリストのVane Pannellはジュ・ド・ポームにも参加している。ラケッツは壁打ち、ジュ・ド・ポームは対面型という違いはあるが、テニスに加えてインドアのラケット競技が2つというのはちょっと多かったようで、ともにロンドン大会を最後に廃止になってしまった。

Rackets at the 1908 Summer Olympics
http://en.wikipedia.org/wiki/Rackets_at_the_1908_Summer_Olympics

このように見ていくと、クロッケーとロックはほぼ同じ競技と言えるし、ジュ・ド・ポーム、ラケッツ、バスクペロタもインドアでボールを打ち合ったりぶつけ合ったりするという共通点がある。
以前「オリンピックのゴルフ」という記事の際に調べたが、黎明期のオリンピックは本当にのどかなものだったようで、競技種目について気にされることはなかったのだろう。或いは当時はそれほどスポーツのレパートリーがなかったというのが実態かもしれない。スポーツ・文化は100年単位で見ると面白い。



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