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A Single Woman

洋画、本の完全ネタバレレビューブログ ※作品を観る前、読む前の閲覧厳禁※

長い酷暑 HEAT WAVE

2013年03月10日 | 読書
 アメリカ HEAT WAVE Richard Castle (訳)入間眞


 本の紹介をする前にこの本が出版されるまでの経緯を説明します。

 ――海外ドラマ『キャッスル ミステリー作家のNY事件簿』シーズン1で、何を書いても大ヒットしてしまうことに飽き飽きしていた人気ミステリー作家リチャード・キャッスル(ネイサン・フィリオン)の本を模倣した事件が起こり、キャッスルを参考人として聴取したことからケイト・ベケット(スタナ・カティック)たちと知り合う。今の生活から抜け出すために、キャッスルのファンであるNY市長のコネを使い、ケイト・ベケットをリーダーとするNY市警12分署殺人課に作品の調査という名目で無理矢理捜査に参加。シーズン1途中でベケットをモデルにした“ニッキー・ヒート”シリーズを執筆中であるとベケットに報告。シーズン2で『HEAT WAVE(長い酷暑)』を出版。その後も『NAKED HEAT』『HEAT RISES』『FROZEN HEAT』を出版し、ベストセラーとなり、映画化も決定する。


 ■あらすじ■

 記録的な熱波に襲われたニューヨークで、高級アパートメントの六階からひとりの男が墜落死する。男の名はマシュー・スター。総額数千万ドルの絵画コレクションを所有する不動産業界の大物だ。検死の結果、遺体から特徴的な六角形の指輪の殴打痕が発見され、殺人の疑いが強まる。NY市警殺人課の女性刑事ニッキー・ヒートは同行取材中の記者ルークとともに捜査を開始。やがて、被害者と齢の離れた若妻それぞれに怪しい過去や愛人の存在が判明し、次々と容疑者が浮かび上がる。二転三転する捜査、果たして犯人は誰なのか……!?(ヴィレッジブックス『長い酷暑』より)


※※以下ネタバレを含みます※※


 ☆ 感想 ☆

 『キャッスル ミステリー作家のNY事件簿』がそのタイトルの通り、キャッスルを中心にキャッスル目線でストーリーが進んでいるのとは対照的に、あくまでキャッスルが書いたということではありますが、この『長い酷暑』ではヒート目線でストーリーが展開されます。簡単にいうともう一つの『キャッスル』の物語といったかんじです。簡単にキャラクター紹介!

 物語の主人公ニッキー・ヒートはケイト・ベケットがモデル。本書が発売された2009年時点で29歳。女性ながら20代でNY市警殺人課まで上り詰める聡明さと行動力のある美人で硬派な刑事。ノースイースタン大学の学生だった19歳の感謝祭の日に、自宅で母親を殺害され、刑事を目指すこととなる。ルークが近づくたびに、頭の考えとは裏腹にドキッとしてしまう自分に困惑している。
 ヒートに同行する記者ジェームスン・ルークはリチャード・キャッスルがモデル。ピューリッツァー賞受賞経験もあり。NY市警殺人課の記事の取材でヒートの班に同行中で、殺人現場で冗談を言ったり、ヒートの皮肉混じりのきついジョークも笑って返す軟派な記者。ヒートには鬱陶しく思われているが、同僚のオチョアとラリーとはクイズを出したり、冗談を言い合ったりと仲が良い。母親のマーガレットは有名な舞台女優。記者らしく事件関係者に鋭い質問をしたり、著名人や判事、裏業界に至るまで、あらゆる記者としての人脈を使い、チームの手助けをしている。
 ヒートの同僚オチョアはエスポジートがモデル(オチョアは既婚者)。同僚のラリーはライアンがモデル。ヒートはこの二人のことを親しみを込めて“ローチ(ゴキブリ)”と呼んでいる。ヒートの親友で検死官のローレン・パリーはラニがモデル。頼れる上司モントローズ警部はモンゴメリー警部がモデル。

 “キャッスルが書いた”ということをかなり強調していて、本の裏にある著者の写真がネイサン・フィリオン(笑)さらにキャッスルから読者への後書きがちゃんとある等、ファンとしてはこれ以上ないほど満足してます。実際は誰が書いたのか分かりませんが、内容も手抜きせずに書かれていました。特に本の魅力は、ドラマのキャッスルとベケットはお互いに惹かれあいながらも仕事のパートナー以上の関係には進みませんが、本書ではそのやきもきを解消出来ます。さらに、ヒートの私生活が垣間見れるのもこの本の魅力です。ある意味、“『キャッスル』の『キャッスル』のスタッフよる『キャッスル』のファンのためのミステリー小説”というわけです。読んでて、「これ、あのエピソードのあの場面に似てる!」なんていうのもあります。そして、チームの“ルークいじり”も健在です(笑)

 本書はドラマのファンもファンでない人も楽しめると思います♪何となく犯人の検討はついてしまうのですが、その巧妙な手口と「ショータイム!」と言わんばかりのヒートたちの証拠の突き付け方は圧巻です。もし“ニッキー・ヒート”シリーズの次回作の日本語訳出版を検討中なのであれば、出版してほしいです。『キャッスル』のファンのために、ミステリー小説のファンのために!(笑)



P.S.『キャッスル ミステリー作家のNY事件簿』と『BONES 骨は語る』って似てますよね~。男女コンビで、どちらかが本を出版していて、片や普通の公務員で、もう一人は印税でリッチなセレブリティ。女性の方の母親は共に殺害されていて、憶測より証拠重視の硬派なタイプ。男性の方は推測や直感、勘を重視する軟派なタイプ。(ブレナンとブースはシーズン6で結ばれましたが)友達以上恋人未満の関係。チーム内で仲間が恋愛関係になっていても、温かく見守る。⇒こういうドラマって好き嫌いがきっちり分かれますが、私は好きです。余談まで読んでくれた方に感謝いたします。

インフェルノ Gabriel's Inferno

2013年02月08日 | 読書
 アメリカ Gabriel's Inferno Sylvain Reynard (訳)高里ひろ


 早川書房〈リヴィエラ〉から発売された『トワイライト』ファンフィクション第2弾を読みました。以下、あらすじと感想です。


 ■あらすじ■

 大学院に進学した女子学生ジュリアは、親友のハンサムな兄ガブリエルと思いがけない再会を果たした。彼は彼女をダンテ研究へと導いた人物だったが、ジュリアのことをすっかり忘れていて、冷淡で人を寄せつけない“教授”としてしか振る舞わなかった。偶然と誤解ばかりの散々な再会だったものの、それでもやがて、ふたりは惹かれあっていくのだった。教授と学生の禁じられた恋だとしても……。(早川書房Riviera 『インフェルノ(上)』より)

 六年前、高校生のジュリアがガブリエルと過ごした、林檎園での一夜。ダンテの恋人ベアトリーチェの話をしてくれた年上の男性とのはじめてのキス。あの優しかったガブリエルは夢の中の天使が目の前にいると気づき、みずからを解放することができるのか。それとも過去の悲劇や教授と学生といういましめに縛られるしかないのか。(早川書房Riviera 『インフェルノ(下)』より)


※※以下ネタバレを含みます※※


 ☆ 感想 ☆

 『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』よりも最速の3日間で上下巻制覇しました(笑)美しいストーリー展開で、(お互いに)言えない秘密、過去を持っているという設定です。話題沸騰だった『フィフティ・シェイズ』に比べると地味な宣伝しかされていない『インフェルノ』。あらすじだけ読んでもまったく話が掴めないと思うのでもう少し詳しくお話します。

 主人公のガブリエル・オウエン・エマーソンは、33歳の謎めいていて冷淡な新進気鋭のトロント大学教授。専門はダンテ。教授とは思えぬほど魅力的な外見を備え、オシャレで裕福で、いつも高級ブランド品で身を包んでいる。
 ヒロインのジュリア・ミッチェルは、23歳の美しく聡明なトロント大学の修士課程へ入学したばかりの優秀な女子学生。ハーバード大学の修士課程にも合格したが、金銭的な問題で行くことが困難だったため、ガブリエルがいると知りつつ、トロント大学へと入学する。
 -6年前、当時高校生だったジュリアは、親友のレイチェル・クラークの家に遊びに行った際、当時ハーヴァード大学博士課程にいたガブリエルのオックスフォード大学時代の写真を見つけて一目惚れする。ある日、クラーク家に招かれた夕食に行くと割れたガラス片と血が渾然一体となっており、レイチェルとその彼氏アーロンは、「ガブリエルがスコット(ガブリエルの義理弟でレイチェルの兄)を病院送りにした。」と泣きながら説明し、ジュリアは唖然としたが、部屋の奥に誰かがいるのに気づき、入ると、そこには夢に見たあのガブリエルがいた。ジュリアはガブリエルを慰め、ガブリエルはジュリアを自宅裏の森にある林檎園へ連れ出す。ガブリエルは「君はまるでベアトリーチェだ」とジュリアを讃え、大学でダンテを専攻していることを話した。ガブリエルは天使のように優しく、そのときジュリアはガブリエルにキスされ、彼だけを待つと決めたが、ガブリエルに「地獄へ探しに来て」と言われてしまう。二人は再会までの6年の間にお互いに一生消えない傷痕と絶望を味わう。
 ジュリアが入学してすぐのゼミの後、ガブリエルはジュリアを呼び出したが、ジュリアが部屋へ行くとガブリエルが泣いていたため、メモを残して帰る。ジュリアが家に帰宅すると父から電話があり、レイチェルの母グレースが亡くなったと知らされ、花を贈った。2回目のゼミの後、再びガブリエルに呼び出されたジュリアは、前回来なかったことと家に花を贈ってきたことを責められる。ガブリエルはジュリアを覚えていなかった。ジュリアは傷ついたが、芯が強く、屈しなかった。
 ジュリアは初めてのゼミで、隣席したポールというガブリエルとは正反対の紳士的で優しく、正義感のある博士課程の青年と仲良くなる。二人の仲が縮まるにつれ、ガブリエルはなぜかポールに嫉妬し、ジュリアとは運命を感じはじめる。

 こんなストーリーです。ダンテ研究をしている二人が、まるでダンテとそのミューズであったベアトリーチェのような運命の再会を果たし、禁断の恋に落ちるというストーリーです。上巻の最初に出てきたガブリエルと謎の女性の関係、1年間行方が分からなくなるほどジュリアが恐れ、傷ついた大学時代の過去など、共に惹かれあいながらも自分の秘密を明かせば、どちらかが去るのではないかと怯えています。しかも、その秘密は明かされそうで明かされず、最後の最後まで秘密のままで…。ところどころヒントはあるんですが、全貌が分かるのは下巻の終盤。複数人の目線でストーリー展開され、男性目線の描写も凄く丁寧に書かれていて、ユーモアも多いです。イタリア・フェレンツェの虜である教授と学生の話なので、宗教、芸術、古典文学、フェレンツェとトロントの美しい景色などが、美しく書かれています。この作品は『Gabriel's』シリーズの第1弾で、(私も確信は持てませんが恐らく)ダンテの『神曲〈地獄篇・煉獄篇・天国篇〉』を土台としていて、今回は〈地獄篇〉です。

 ちなみに私が好きなキャラクターはガブリエルの義理の妹レイチェル・クラーク。家族思いで、ちょっとお節介で、彼氏や親友を家族と同じくらい大切にする心優しい彼女が好きです。あと、ガブリエルに色目を使いまくってる博士課程のセクシー系美女クリスタ・ピーターセンも(笑)

 完結できそうですが、続編『Gabriel's Rapture(原題)』が発売されるそうなので、楽しみです。