1 9 6 7年!
ダスティン・ホフマンも キャサリン・ロスも
ポール・サイモンも アート・ガーファンクルも
そして この僕も
みんな みんな 若かった!

僕の前を僕の物言わぬ影が、僕と同じように黙々と歩いている。
3月中旬とはいえ陽ざしが強い。
今日も川べりを歩いている。
暑さを避けようと日陰に入ると、影はすっと姿を消してしまう。
少し休もうと、そこにしゃがみ込んでも姿を見せることはない。
「さあ、もうひと頑張り」と言って歩き出すと、
影もやっぱり姿を現し、日陰から抜け出してくる。
知らぬ間に『Sound of Silence』を口ずさみながら歩き
さらに2度は見た『卒業』へと記憶が連なっていく。
青春も名残りの1967年、この映画は公開された。
ダスティン・ホフマン扮するベンジャミンが
他の男性と教会で結婚式を挙げていたキャサリン・ロス演じる
レーンをウェディングドレスのまま連れ出し
通りがかったバスに飛び乗って去っていくという
感動のラストシーンが印象に残る映画だった。

その場面に流れた曲がサイモン&ガーファンクルの
『Sound of Silence』である。
この曲はメロディの美しさの半面、何とも知れぬ不安感を
漂わせる難解な歌詞であり、それが幸せそうに見える
若い2人に影を投げかけるラストシーンにマッチした曲だった。

歌詞の中には『暗闇』とか『静寂』といった言葉が、たびたび出てくる。
『暗闇』や『静寂』は時として、人に不安や恐れを抱かせたりもするが
歌詞にあるこの『暗闇』『静寂』は、一体どんな意味なのだろうか。
たとえば一番の歌詞は
やあ「暗闇」 僕の古い友人 また君と話をしに来たよ
なぜかって あるビジョンが忍び寄ってきている
僕が寝ている間に残された「種」
そして 僕の頭に残るビジョンは 今もまだ「静寂」の中に潜んでいる
である。このような歌詞が5番まで続く。
そして、最後は
「予言者の言葉は地下鉄の壁や安アパートの玄関に書かれている」とある。
聖書の一節かと思えば、そうではないようだ。
何だか不気味ささえ潜ませる。
僕の影は、そんな『Sound of Silence』のメロディーに乗って
不安も恐れもなく、他愛なく遊んでいる。