微生物学研究BANK(Microbiology Science Study(MSS))

微生物学研究BANKのニュースブログ。生物学・遺伝子工学などのニュースを掲載。(記事時系列は無視して下さい)

「おしっこ力」でいつか宇宙に?尿をロケット燃料に変える細菌(ラドバウド・ナイメーヘン大学)

2011-10-04 17:36:56 | Weblog
 【10月3日 AFP】酸素なしで生きる細菌「嫌気性アンモニウム酸化(Anammox)細菌」が、尿に含まれるアンモニアをロケット燃料のヒドラジンに変換するメカニズムを分子レベルで解明したと、オランダの研究チームが英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した。

「Anammox細菌」は1990年代に初めて発見され、大きな話題を呼んだが、そのメカニズムはこれまで解明されていなかった。

 ラドバウド・ナイメーヘン大学(Radboud University Nijmegen)水・湿地研究所の微生物学専門家、マイク・ジェッテン(Mike Jetten)氏らのチームはこのほど、「ヒドラジンを生成する複合タンパク質を突き止めることに成功した」という。

 ジェッテン氏の研究には当初、米航空宇宙局(NASA)が関心を示していたが、製造されるヒドラジン量が少なく「とても火星までは行かれない」ことが分かってから手を引いてしまった。しかしジェッテン氏は「現在、この複合タンパク質の結晶構造を正確に解明しようとしているところだ。理解が進めば、生成過程を改善することもできるかもしれない」と語っている。

 Anammoxは、アンモニア分解のエネルギー効率がとても良いため、現在は浄水技術として商業利用されている。また、下水の汚泥処理に活用すれば、空気をポンプで送り込むことなく汚泥処理が可能となるうえ副産物としてメタンを得ることもでき、バイオ燃料への適用の可能性も秘めている。((c)AFP 2011年10月03日)

http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/science-technology/2832312/7866564

<古細菌>仲間の「体」再利用…深海底の微生物(海洋研究開発機構)

2010-11-08 11:37:52 | Weblog
 深海底にすむ微生物「古細菌」が、自分の体を作るのに死んだ仲間の体を使い回していることが、高野淑識(よしのり)・海洋研究開発機構研究員(地球化学)らの分析で分かった。エネルギー源の乏しい深海底ならではのエコライフで、有害物質の分解にも応用できる成果という。7日付の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(電子版)に掲載された。

 古細菌は、熱水の噴出口など他の生物が生きられない特殊な環境に生息したり、牛の胃の中などでメタンガスを作る種類が知られている。深海に多く、その量は地球全体で10億トンと推定されている。神奈川県沖の深さ1453メートルの海底に無人潜水艇で培養装置を設置。放射性物質で目印を付けたブドウ糖を「餌」として与えて405日間調べた。

 その結果、古細菌の細胞膜から目印は見つからず「餌」を細胞膜作りに使っていないことが判明。代わりに仲間の死骸(しがい)の細胞膜を流用していることが分かった。

 多くの生き物は、細胞膜のような分子量の大きな物質は細胞膜を通過できず、酵素などで一度分解・吸収し、細胞内で再合成している。古細菌がどのような仕組みで巨大物質を取り込むのかは不明だが、分解力が強い酵素が必要になる。高野研究員は「(ホルモンの作用を乱す)ノニルフェノールなど人工有害物質の分解に役立てることができるのではないか」と話す。【山田大輔】(毎日新聞 2010年11月8日(月))

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101108-00000012-mai-soci

イグ・ノーベル賞:粘菌の“知恵”優れたネットワーク(公立はこだて未来大学、広島大学)

2010-10-18 21:41:49 | Weblog
◇「同じ粘菌で2度目」 小林・広島大教授ら共同研究
 ユーモアのある科学研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の今年の「交通計画賞」に、中垣俊之・公立はこだて未来大教授(47)、小林亮・広島大教授(54)=応用数学=ら9人の「真性粘菌」を用いた共同研究が選ばれた。アメーバのような単細胞生物の粘菌が、実際の鉄道網よりも輸送効率やコストなどに優れたネットワークを作り上げることを示した。小林教授は「人間だけに知性があるというキリスト教圏の観念を覆す感じが受けたのでは」と話している。

 米科学誌サイエンスに今年1月、論文を発表した。研究は、関東地方を模した箱を使い、主要36都市に餌、東京駅に粘菌を置き、その動きを観察した。粘菌は時速1~2センチの速度で面状に広がり、1日ほどで、餌と餌を結ぶ鉄道網のようなネットワークを形成した。

 粘菌の動きをコンピューターでシミュレーションすると、▽輸送効率▽コスト▽耐故障性(1本の線が切れてもほかで代替できる)--を実際の鉄道網よりもバランス良く満たすパターンが見いだされたという。小林教授は「単細胞生物の粘菌は人間の100倍も長く生きており、ネットワーク作りにかけては大先輩」と語る。

 中垣、小林両教授は北海道大電子科学研究所の元同僚。小林教授はこれまで、結晶成長などさまざまな現象を数学的に表してきた。「粘菌に学ぼうと思ったら数学が必要」と、中垣教授らと粘菌の研究を進めた。議論のため2カ月に1度は広島を離れ、北海道や東京に足を運んだ。2年前には、粘菌が迷路の最短経路を導き出すことを発見した研究で、同賞の「認知科学賞」を共同受賞した。「同じ粘菌で2度目はないだろうと思っていた。本当にびっくり」と笑顔。今回の研究には、広島大から小林教授の他、伊藤賢太郎・助教(30)、卒業生の弓木健嗣さん(28)も参加した。

 小林教授は現在、アメーバのように動くロボットの研究を進めている。人間を模したロボットは実社会で役立っているが、「アメーバのように、人間の脳のような中心がなく『地方分権』的な制御で動くロボットも必ず役に立つ」と、あくまで“独創的”だ。【星大樹】(毎日新聞 2010年10月13日 地方版)

http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20101013ddlk34040568000c.html?inb=yt

致死性の新種の藻を発見(帝京大学医学部)

2010-05-25 23:41:07 | Weblog
 ヒトが感染すると皮膚病を引き起こし、合併症で死に至る可能性があるという新種の藻が発見された。

 この新種の藻はプロトテカ・クティス(Prototheca cutis)で、藻に感染し潰瘍ができて入院していた日本人の患者から皮膚のサンプルを採取して分析した際に発見された。

 プロトテカ・クティスは南極を除く世界各地の土と水の中に生息すると考えられている。塩素処理などの消毒を行っても死なないほど生命力が強いため、特に農村部の下水や家庭廃棄物の中で繁殖する。

 プロトテカ・クティスに感染した日本人患者は現在では完治しており、この患者以外に感染例は確認されていない。

 しかし、今回の研究を率いた帝京大学医学部の准教授槇村浩一氏は、この新種の藻が近縁の有害な微細藻類(世界中の水の中に生息する単細胞生物)によく似た振舞いをするのではないかと考えている。

 そうだとすれば、プロトテカ・クティスは汚れた水などによって傷口からヒトの体内に入り、腕、足、顔などの炎症や潰瘍の原因となる。槇村氏によれば、症状の進行は遅く、発症するまで2週間以上かかることもあるという。また、微細藻類による同様の感染症は、ウシ、シカ、イヌ、ネコでも報告されていると同氏は話している。

 微細藻類の感染症が重篤になると、血液に侵入した細菌が引き起こす敗血症や、脳と脊髄の周辺の細胞が炎症を起こす髄膜炎を発症し、死亡する場合もある。研究によると、このような病状の進行は体の弱った入院患者に見られるのが普通だという。

 微細藻類の感染症はまれなため、治療方法も少ないと槇村氏は話す。現在のところ、唯一の効果的な治療薬は抗真菌薬である。微細藻類は真菌ではないが、最も重篤な微細藻類の感染症患者の59%が抗真菌薬で治ったとのデータがある。治癒できない患者は極度に重い感染症によって死亡するという。

 もっとも、世界の微細藻類のほとんどは「通常は無害」であり、だからこそ今回発見されたプロトテカ・クティスは「重要で興味深い研究対象」なのだと同氏は強調する。

 この研究は「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology」誌2010年5月号に掲載されている。(Christine Dell'Amore for National Geographic News:2010年5月25日(火))

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100525-00000000-natiogeo-int

微生物がレアメタル回収 新たな循環型技術(大阪大学大学院工学研究科)

2010-05-09 01:27:56 | Weblog
 携帯電話やテレビ、自動車などにも使われるレアメタル(希少金属)。今やITやハイテク産業に欠かせない金属だが、需要の高まりとともに獲得競争は激しくなり、価格も軒並み上がっている。一方でこれらの産業にとって、廃水に含まれるレアメタルは悩みの種。高濃度では毒にもなるため処理が必要だがコストが高い。そんな中、「廃水を安価に浄化しながら、レアメタルを回収する」という一挙両得な研究に注目が集まっている。“救世主”は、土の中にいる微生物だった。(天野健作)

 「地球はバランスの世界で、その世界の底辺にいるのが微生物。自然の中で動物の排泄(はいせつ)物がなくなるのは、微生物が分解してくれるから。本当の循環型社会をつくるには“彼ら”の力を使う必要がある」

 こう力説するのは、大阪大大学院工学研究科の池道彦教授(環境工学)。微生物の分解能力を利用した廃水からのレアメタル抽出の研究を続けている。

 もともとの研究のきっかけは、ハイテク産業などから排出されるレアメタルが環境を悪化させ、環境省により排出基準が定められたためだった。レアメタルの価格の高騰もあり、リサイクルも兼ねる研究は、最近になって俄然(がぜん)注目を集めている。

 池教授は約10年前、研究段階として、微生物を使ってレアメタル「セレン」を廃水から分離することに成功した。セレンは半導体やガラスの着色などに使われる金属。廃水中では水に溶けているため、通常は電気還元して集めなければならないが、多大なエネルギーとコストがかかる。

 微生物が電気還元の代わりになってくれたら…。池教授らの研究グループは微生物の中から、呼吸とともにセレンを取り込む微生物を探し出した。「バチルス・セレナトアルセナティス」と名付けられ、新種として世界で認められた。

 廃水中のセレンは「セレン酸」という酸化物イオンの形で溶けているが、この微生物は、セレンに付いた酸素を使って呼吸することで、セレンを元素状態に戻してくれる。セレンは濾過(ろか)でも水中から回収できるし、微生物の体内にも残っているので燃やして回収することもできる。

 微生物の環境技術への利用は理想的だ。微生物はお金がかからないし、自分勝手に増えるばかりでなく、有害な副産物を出すこともない。池教授らは現在、太陽電池に使われるレアメタル「テルル」や「バナジウム」などにも研究の範囲を広げている。

 セレンの価格は数年前まで1キロ500円程度だったが、今は1万円にまで上がっている。実用化には、今後、さらに高い温度や塩濃度にも耐えられる微生物を見つける必要があるというが、すでに化合物メーカー「新興化学工業」(兵庫県尼崎市)の協力を得て、回収実験に成功。実用化に向けて一歩踏み出した。

 「この研究は、レアメタルを地球へ戻す廃水処理といういわば『静脈技術』と、レアメタルを取り出すという『動脈技術』を結びつける新たな循環型技術だ」と池教授。新たな環境ビジネスのモデルを示していると言えるだろう。(2010年5月8日 産経新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100508-00000073-san-soci