貧者の一灯 ブログ

掲載しているお話は、当ブログには著作権はありません。
掲載内容に問題がある場合は、お手数ですが ご連絡下さい。

貧者の一灯・特別編

2023年03月28日 | 貧者の一灯

















※…
特別支援学校の元教諭・山元加津子先生


山元先生が大学を卒業し、特別支援学校
に赴任する一年前に、法律が変わりました。

特別支援学校が義務教育となったのです。

それまでは重い障がいを持つ子どもは
就学免除だったのです。 山元先生が
赴任した特別支援学校の近くに、知的
障がいや身体障がいのある子ども達の
施設がありました。

特別支援学校に通える子はその施設から
通ってきていましたが、通えない子は施設
の中にいました。

山元先生はそういう子ども達の担任になり
ました。その中の一人にちいちゃんという
子がいました。

初めてその施設に行った時、ちいちゃんは
ラジオもテレビもないとても静かな真白い
部屋にいました。

それぞれの子どもは柵のついた白いベッド
に寝ていて、まったく動きませんでした。

その施設の園長はお医者さんでもありました。
その方が山元先生に「ちいちゃんには脳が
ないんだよ。だから目も見えないし、耳も聞こ
えない。

何もわからないんだよ。あなたが何をしても
無駄だから、そばで時間つぶしに本でも
読んでいてくれたらいいよ」と言いました。

ちいちゃんには命を司る脳幹はあっても、
高度な精神作用を司る大脳がありません
でした。

それでも山元先生は、ちいちゃんを
”可愛いな”と感じて、毎日抱きしめて
「ちいちゃん、可愛いね。大好きだよ」
と声を掛け続けました。

ちいちゃんはこの時、15歳ぐらいでした。

それまで動いたこともないし、触られたこと
もありませんでした。

普通の15歳の子と比べると、とても小さな
体でした。華奢な山元先生が簡単に抱っこ
できるほどでした。

ずっと寝たままだったので、手足が固くなっ
ていました。骨も脆くなっていました。

山元先生は、そのちいちゃんを毎日抱いて
は「可愛いね。大好きだよ」と声を掛け続け
たのです。

ある日、看護師さんが「山元先生、大変なこと
がわかりました」と言いに来ました。

山元先生は、”私が抱っこしすぎてちいちゃん
を骨折させてしまったのか”と思いましたが、
違いました。

看護師さんは言いました。

「ご存知のようにあの部屋の子ども達は、身体
をまったく動かしません。音も立てません。
だから本当に静かです。

ところが朝8時のおむつ替えをしている時に、
ちいちゃんだけが手足をバタバタ動かすん
ですよ。

”どうしてなんだろう”と思っていたのですが、
わかりました。

山元先生、あなたがやってくるからです。

他の人の足音とあなたの足音を聞き分けて、
ちいちゃんはあなたが来るのが楽しみで、
待ち遠しくて手足を動かすんです」

それを聞いて、山元先生はうれしくて
号泣しました。

それからより一層ちいちゃんに寄り添うよう
になりました。

「可愛いね。大好きだよ。愛してるよ」と毎日
声を掛けました。

そうしたら、「大好きだよ」と声を掛けると、
ちいちゃんが微笑むようになりました。

「今日は先生これで帰るよ」と声を掛けると、
悲しそうな顔をするようになり、そのうちに
泣くようになりました。

言葉を掛けられたことがないちいちゃんが、
言葉がわかるのです。

こんなこともあったそうです。

くすぐり遊びで山元先生がこちょこちょと真似
をするだけでちーちゃんは笑うようになりました。

園長にその話をすると「それは単なる反射に
すぎません。脳がありませんから」と言いました。

でも山元先生は思いました。 ”触ったことに
よる反射じゃない。

私がくすぐる真似をしただけでちいちゃんは
くすぐられることを察知して、笑っている。
喜んでいる。

これは普通の人間の反応だ。

期待する気持ちがちいちゃんには間違いなく
ある”

それから山元先生はちいちゃんに絵本を
読むようにしました。

きつねの親子の物語です。悲しい場面に
なると必ずちいちゃんは涙をポロポロと流し
ました。

山元先生はこの経験から「どんなに重い障がい
があっても、どんな状態にあっても、誰もが深い
思いを持っているという確信を私はちいちゃん
から得ました」と言っておられます。

また、この経験が、それ以後の特別支援学校
での子ども達に対する指針になったそうです。

どんな人に対しても愛のある言葉をその魂に
語りかければ、その人間の奥深くに語りかけ
れば、その人に命を吹き込むことができる
のです。

言葉は食べ物以上に人間の命をつなぐも
のです。言葉は大切です。…












※…
その家族が飼っていた犬が、 突然姿を
消しました。

頑張って捜索をしても、一向に見つかりません。
それまで家族のことも、家のことも大好きだっ
た飼い犬です。

その犬の家出に、家族みんなが悲しみに
くれました。

まだまだ寒い季節なので、 「もうだめかも
しれない」と、 切なる思いを吐露したことも。

しかし、一ヶ月後、 その犬は帰ってきました。

少し痩せこけて、汚れていましたが、 力強い
目で、家族の元に帰ってきました。

みんなが安堵していた時に、 長女が気づき
ました。 飼い犬の口には、携帯電話のサイズ
ほどの、 「小さな小箱」がくわえられていました。

その後、その飼い犬が「家出をした理由」を
家族が感じとり、その場でみんなが 泣き崩れ
ることになるなんて、 誰も思いませんでした

※…
その小箱に、母親が驚きの声を出しました。
それにつられて、 父親も手で口を覆いました。

その小箱は、間違いなく、 その家族の祖父母
の家にあったものでした。

そしてその小箱の中には・・・ 祖父母とともに
撮った家族写真や、 長女や次女の小さな
子供の頃の写真が 入っていたのです。

祖父母の家は、東日本大震災で ほぼ全壊
してしまいました。

また、祖父母も、震災をきっかけに 命を失っ
てしまいました。

家族みんなが大好きだった祖父母。 飼い犬も
何度も祖父母の家に 連れて行ってもらい、
またたくさん愛情を注がれていました。

震災で祖父母も、祖父母との思い出も 失く
してしまったことに、 家族みんなは悲しみに
包まれていました。

もちろん、その飼い犬も、 悲しい気持でいっ
ぱいだったのでしょう。

そんな中、家出した飼い犬が持ってきたのが、
祖父母との思い出のたくさん詰まった小箱だっ
たのです。

家から何十キロも離れている場所で、 家は
原型を留めていないくらいボロボロで…。

もちろん、この小箱のことを 飼い犬が知って
いるはずもないのに、 間違いなく、そこには
たくさんの 思い出が詰まった小箱がありました。

まるで、 「みんなの思い出は、なくならないよ」
と飼い犬が家族に訴えかけるかのように…。

家族みんな、その場で泣き崩れました。
誰もがボロボロと、大粒の涙を流して泣き
崩れました。 ……












最新の画像もっと見る

コメントを投稿