人間賛歌・もっちゃん4649

地域の中で生きる

Eちゃんは詰襟の学生服が似合う凛々しい男の子でした。
祖父母と両親と弟の6人家族で靴下製造業の跡取りとして生まれたのです。

歩き始めて名前を呼んでもどんどん歩いていくし、その時にちょっとおかしいのでは~と母親は思ったそうです。
自閉症の障害がわかった初めでした。

言葉を持たないので理解させるのに早めにカレンダーに予定を書いておかないとパニックになってしまいます。
彼が困っていると分かるのは体操服の胸のゼッケンを両手でサッとつかみ、口に持っていく動作でわかります。

学生服を着ているときはタオルのハンカチを持たせるとそれを口にほお張って、気持ちを鎮めていました。

何も持たない時・・・
それもありました!

後部座席にYちゃんとEちゃんを乗せて家まで送ってあげようとした時でした。
幼・小・中合同学習会を終えて、機嫌よく自宅まで送っていく途中、終わりの会をみどり学級でするとEちゃんは思い込んでいたようです。
中学校の前を通り過ぎて、Eちゃんの家から先に行こうと思って車を走らせていたのです。

なぜ、みどり学級に行かないのだろうと思い始めたEちゃんはパニック状態に陥り始めました。
バックミラーでEちゃんの両手が大きく動くのが分かります。
手に触れたらそれをつかみ、口を持っていくのです。

後部座席には私の後ろがYちゃんです。
先に降りるEちゃんを助手席の後ろに座らせていました。

Yちゃんは130センチ足らずの小さな女の子ですから、つかまったら最後熊に襲われたみたいに悲惨な目に遭ってしまいます。

MR2というツウドアーのスポーツ車ですから、私が降りないとYちゃんは袋のねずみ状態なんです。
それがルームミラーで確かめられますから、Yちゃんを守らなくっちゃ~ととっさに思いました。

運転中ですから左に寄せて停車させて、その間にEちゃんの腕をつかみ、Yちゃんに延びない様にしながら左手をEちゃんに差し出しました。

「噛みたいのならばこれを噛みなさい~」という合図とおなじです。

ジャンパーの上からでしたが左腕を6箇所噛まれていました。
どうやってYちゃんを下ろしてあげたのか、その前後を覚えていないくらいでした。

その代わり、Yちゃんを守ることが出来ましたけどね~~

長いなが~い3年でした~
愛しい愛しい3年でした~

Eちゃんの素晴らしいところをたくさん発見できた3年でもありました~

サオリ織りに興味を示し色使いが独特だ~と感心したこと~
クロスステッチでランチョンマットを何枚も仕上げたこと~
書家のような字体の作品を書き、優勝したこと~
足し算の才能は何桁の足し算であろうと、あっという間に正解を出していたこと~

卒業して20歳になったときに成人式に来賓として招待してもらったのですよ~
Eちゃんの嬉しそうな笑顔を今思い浮かべています~

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー通信より抜粋

みどり学級の担任になり、多くの感動とやすらぎをもらい命の尊さや人間の素晴らしさを実感させられた8年間でした。

初めて担任したのがEちゃんでした。
みどり学級2組の情緒障害児学級で自閉的傾向のある生徒でした。

Eちゃんの成人式に今年招待されたのです~~

Eちゃんは最初に見た教室内の物の位置が、次の朝、変わっているとパニックになります。

一度見たものはカメラのように記憶の中にインプットされるようでした。

物の配置にこだわりがあるのです。

ごみ箱が自分が見たときにあった場所と、今日見たときに変わっているとイライラして体操服の胸のゼッケンをかみ始めます。

自分の意志表示はゼッケンをかむ態度で知らせます。
言葉が出ないからこれが意思表示なのです。

機嫌のいいときは、それはそれは最高の笑顔ですよ~
ハンサムだし、えくぼが出来るし、彫りの深い、眉のきりっとした好男子です。

横顔を見ていて、惚れ惚れするEちゃんでした。

悪い癖で、みんなに出会うごとに良いところが見えて好きになり、心の恋人に育ててしまうのです。
心の底から好きになるから、Eちゃんも心の底から付いてきてくれます。

イライラの解消法は、柔らかい手触りの良いタオルハンカチを持つことです。
当時、私の上着のポケットには3枚以上のタオルハンカチがあり、大きく膨れていたものです。

中学校を終え、送迎バスのある高等養護学校に3年間行き、そして今は地域の作業室に通っています。
タオルの好きなEちゃんだった事を思い出し、カバンに2枚しのばせていきました。

中学校を卒業して以来、たくさんの先生方の指導のおかげでEちゃんはタオルを卒業していました。
じっと式典の3時間を立派な態度で、最高の笑顔で過ごせました。

秋場所で、貴乃花が、膝の半月板の怪我に耐え、優勝したとき「痛みに耐えてよくがんばった!感動した!」と小泉前首相がおっしゃったように、
「ハンディを乗り越えてよくがんばったねえ!感動しています。」と祝辞を述べました。

Eちゃんの学校時代に、たくさんの先生方との出会いがあった中で、私を指名してもらえたことを誇りに思いました。

新聞にも「各地で成人式、大荒れ。逮捕者7名」という活字が大きくおどっていました。
昨年の成人式も大変でした。

成人式の有り様が問われています。

参加させてもらった成人式は、各地の範となれる厳かで、喜びと祈りにあふれた素晴らしいものでした。

「地域の中で生き、自立と社会参加を」という当たり前のことが実現することを願って、努力を続ける人たちと関わりながら、ともに生きていきたいと強く願いました。

明日に続く~

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