Myselves

言葉と音楽に隠された魔法を探して放浪中。
そんな『自分自身』たちの旅の様子は?

【実験的SS】悪夢のあとは

2011-10-19 09:29:00 | Weblog
同じ出だしで違うジャンルを書けるのか?
という実験。






※BL注意※







『悪夢のあとは』

【GS3 ver.】
「どうした?」
「怖い夢見た」
黒い影は、部屋の入り口に佇む白い影を見た。
「ガキじゃねえんだから、1人で寝ろ」
黒い影は白い影に告げたが、白い影は返事をしなかった。白い影は寄る辺のない子どものように頼りなく見える。
逡巡したのち、黒い影はベッドの端により、スペースを作った。白い影が隣に滑り込んでくる。
白い影が黒い影の腕を抱く。
「ッオイ……」
「ちょっとだけ、腕貸して」
白い影がそう呟いた。

窓からの月明かりを浴びながら、琥一は波の音を聞いていた。
ちらと視線を横にずらすと、弟が琥一の肩に額を押し付けていた。ひとつ息をついて、空いている方の手で弟の髪を撫でる。さらさらの金髪が手に心地いい。
弟が顔をあげる。
月明かりに照らされた弟はいつにも増して美しく、儚い。
琥一はその唇にそっと唇を寄せた。

琉夏は兄の唇を受け止めながら、波の音を聞いていた。
唇がゆっくり離れていく。
月明かりに照らされた兄は、いつもより穏やかで、優しい。
兄が向きを変えて琉夏と向かい合った。兄の大きな手が琉夏の頬に触れる。
そのまま顎の下に手が当てられ、ぐいと引き寄せられた。
再び唇が重なる。
琉夏は目を閉じた。

「これで、怖い夢も見ねぇだろ」
黒い影――琥一が言う。
「うん……ありがと、コウ」
白い影――琉夏が答える。
琉夏の腕が琥一の首に巻き付き、琥一の腕が琉夏の腰に回される。
それから2人は口づけを交わした。

1枚、また1枚とお互いが着ているものを脱がせ合う。
生まれたままの姿になったお互いを見て、2人はもう一度抱き合い、唇を重ね合った。

「コウ……っん……あ」
「……ふっ……ルカ……」

2人が1つになるのに、そう時間はかからなかった。

「ルカ……くっ、出すぞ……」
「きて、コウ……んあ……っ」

月の光に2人の影が映る。
波の音が辺りに響いていた。





【Les Miserables ver.】
「どうした?」
「怖い夢見た」
マリウスの答えに、クールフェラックはうなずいた。
「君、最近ちゃんと眠れてないんじゃないのか? そして、見るのは悪夢ばかり。一度ジョリに見てもらうんだね」
仲間である医学生の名前を出すと、マリウスは一瞬躊躇した。
「……変な薬を出されたら、僕は嫌だよ」
「大丈夫だよマリウス。ジョリはそんなことしない」
「――……」
マリウスがクールフェラックのファーストネームを読んだ。
「なんだいマリウス」
「なんか話してくれ。眠れそうにないんだ」
「政治の話はしない方がいいね? じゃあ……」
クールフェラックは最近会ったという女優の話を始めた。今まで知り合ってきたお針子や女工、メイド、それこそ女優などとは違うのだという。
「大事にしたい、と思うんだ」
「……前もそんなこと言ってた気がするけど」
「そうだったかな。でも今回は特別なんだ」
うっとりと語るクールフェラックを見ながら、マリウスは別の、女の人を考える。

リュクサンブール公園で毎日会う人。黒っぽい服を着た、彼より4つか5つ年下の、品の良い可愛らしい女性……

「マリウス?」
「ああ、ごめん」
「……うん、その顔なら、大丈夫そうだね」
「えっ」
「君が余りにも落ち込んでたからね。ちょっと心配だったんだ。そういうときは、美しい女性のことを考えるに限るよ」
そう言ってクールフェラックはウィンクした。
マリウスは、この、気まぐれで軽薄そうに見えて実は友情に篤く、誠実な革命家である親友に感謝した。





――――――――――――――
実験の結果は、はてさて……?!
1本目、単にコウ×ルカが書きたかっただけです。ルカ×コウにならないようにするのに苦労しました(そこかよ)。もっと色っぽい方がよかったかな? バンビちゃんを出してもよかったかなあ、と思ったり思わなかったり。実は青春コンビでもいけるネタだというのは内緒だ。
2本目、これは逆にBLにならないようにするのに苦労しました。名前はさんざん出てきてるマリウスくん初登場でございます。クールフェラックはABC友の会の1人でみんなの人気者。マリウスの親友でもあります。
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