めもっち

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スウェーデン国民の「個性と自立心」

2012-09-03 06:00:00 | 思ったこと
県が将来、どんな地域になってほしいか考えるにあたって、実在する地域を参考にするのが考えやすいので、割と同じ北国ですし、人口も2010年2月末で935万人とだいたい東北地方ぐらいで、1人当たりGDPが日本より高いということで参考になりそうなので、スウェーデンについて少し調べてみました。



◆北岡孝義「スウェーデンはなぜ強いのか~国家と企業の戦略を探る~」によると、スウェーデンの特徴は「個性と自立心の強い国民性」だということです。そして、その国民性は昔からあったものではなく、第2次世界大戦直後に政権につき経済成長路線に舵を切ったエランデル首相が新たな労働力として女性の就業を促進したことに端を発する。それにより夫婦が対等な関係になり、夫婦分業という伝統的な家族が崩壊し、例えば夫婦間での経済的依存関係が弱くなり離婚率が高くなった。そこで家族が人々を扶助する主体としての役割を果たせなくなったので、国が「国民の家」としてその役割を担うようになってきた。しかし、国は経済的な面は支えることができるが、精神的な面までは国が支えることができないので、個人個人が強くならざるを得ず、個性が強く、精神的に自立心の強い国民が育っていったとのことです。

また、上記のような個性と自立心の強い個人を尊重するため、その障害となるものの除去に支出されている。例えば、大学院まで授業料無料、医療費も低い定額です。こういった支出により大きな政府となり国民負担は大きくなっていますが、それが成り立つのも国民の間に、「国への信頼」と「平等の価値の共有」がなされているからということです。このことは80%を超える高い投票率と低いジニ係数で証拠づけられます。

こういう国民性だからこそスウェーデンの企業の戦略は顧客一人ひとりの個性を尊重する商品展開で、かつ、すべての顧客が購入可能な低価格で提供するというものになります。H&Mは低価格で多様な商品ラインナップですし、IKEAも低価格でデザイン重視で個性重視のラインナップとなっており、どちらもスウェーデン国内のみならず、巨大なグローバル企業となって成功を収めています。

ただし、個人が失敗から保護されるわけではなく、自由が尊重されるので、リストラは認められるし、ボルボやサーブのような大きな企業でも破たんの際には公的資金は導入されなかったというように市場による自由競争も大きく尊重されています。

◆では、日本の国民性は特に個性と自立という点で国際比較だとどうでしょうか。

下の表は岡野雅雄「コミュニケーション学」から抜粋です。ホフステードが、IBMの各国の支店に勤める約12万人の従業員を対象に、仕事に関してどのような価値観を持っているのかアンケート調査・分析したものです。



ここで「権力格差」とは「社会における不平等をどのくらい許容できるか」を表しており、不平等を許容できる国が順位が上ということになります。「不確実性回避」は「不確実なことや曖昧なことをどれほど避けたいか」を表しており、不確実なことを避けたい国が上位になります。「個人主義」は「個人をどの程度集団の一部として位置づけるか」を表し、集団の顔色をうかがわない国が上位になります。「男性らしさ」は「性別による役割分担をどの程度重んじるか」を表し、重んじている国が上位になります。

1人当たりのGDPが高い国と、個性という観点から比較すると、日本は、平等をそれほど求めておらず(つまり格差で下の人を尊重しない)、不確実性を徹底的に排除し(そうするために事前規則を厳しくし個性を潰す)、個人よりも集団を尊重しがちで、性別による役割分担を相当重んじることでという傾向が示されます。日本の中でも地方とだとさらに強調されるかもしれません。

■スウェーデンが教訓として示すものは、「個性と自立心の強い県民性」を育てることの重要性ではないでしょうか。実際、地方自治体でも起業や革新を生み出すための様々な連携を支援したりしていると思います。起業や連携の支援は必要だと思いますが、起業や革新を生み出すための最大の核は「個性と自立心の強い県民性」ではないでしょうか。例えば、渡邉美樹「東京を経営する」では、「起業に本当に必要なのは、補助金や税制の優遇措置ではありません。起業を成功させるためにもっとも大切なのは、強い動機です。」とし、動機づけをするための施策が必要だとしています。前述の県民性があってこそ、そのような強い動機が生まれやすくなるのではないでしょうか。そのために、地元で生まれた人がそのような県民性を持つように育てていくという方法もありますし、そのような価値観を持つ人はどういう場所で生活することを好むかを調べ、それに合わせた街づくりをすることで、そのような人を引き付けたり、出ていくことを阻止するという方法もあると思います。

■また、スウェーデンは、長い時間がかかるかもしれないが県民性は変えられることも示しているのではないでしょうか。第2次世界大戦後の女性の社会進出促進がきっかけで今の国民性が形成されたのでは、ということですから。普通、県民性は変えられない所与のものとして考えるかもしれませんが、そうではないということです。たしかに、スウェーデンのような手段は、家族の崩壊につながるとなると受け入れにくいかもしれないですし、そもそも所得再配分を強めることを地方が行うと、地方間は国家間と異なり境界をまたいだ移動が容易なため、高所得者が減り低所得者が増えることになりかねないので持続可能性という意味でも、実行は難しいかもしれません。でも、行政も含めたあらゆる組織で失敗を恐れず一人ひとりの個性を尊重する取組を強く促進すること、成人も含めた全年齢対象の個性の発露先として学べる機会を設けること、個性が強い人にとって魅力的な街づくりなどどれほど時間がかかっても地道に行う必要があると思います。


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