地理講義   

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(8) 百瀬川扇状地の概要

2010年10月30日 | 地理講義

百瀬川扇状地概要

滋賀県高島市の百瀬川扇状地
百瀬川扇状地は扇頂から扇端まで、長さ1.5kmの小さな扇状地である。
上流山地は比良山地の支脈野坂山地である。
比良山地が隆起した時、比良山地内の石田川上流が、百瀬川流域に流入するようになった。
これは、[河川争奪]といわれ、山地の河川ではよく起こることである。

河川争奪の結果として、百瀬川上流の流域面積が拡大した。
百瀬川上流で洪水が起こると、百瀬川中下流の運搬能力以上の砂礫が、流出するようになった。
百瀬川は砂礫を琵琶湖まで運搬できず、現在地(扇央)に砂礫を置き去りにした。
つまり、百瀬川は比良山麓に砂礫を堆積し、百瀬川扇状地を形成した。
されに、百瀬川上流からの砂礫運搬量が増加すると、天井川は砂礫とともに河床を上げ、天井川になった。





1967年百瀬川扇状地
図の西半分が百瀬川扇状地である。
百瀬川は南岸(右岸)堤防が強化されて、流路は固定された。
百瀬川の流れは、扇頂から流れる途中、砂礫質の扇央の地下にもぐって、分流した。この地下水は扇状地扇端の集落付近でわき出る。百瀬川の流水は、百瀬川の地下を流れているのではなく、扇央の地下を分流している。
扇端でわき出る地下水が、扇端から琵琶湖までの水田で使われる。水田は区画整理前である。





1975年 百瀬川扇状地(扇状地部分の拡大)
1967年とほとんど変わらない。
百瀬川にはせき(砂防ダム)と堤防が建設され、扇状地が百瀬川の洪水被害を受ける恐れはなくなった。
扇央の森林地域には、農地・宅地開発のために、作業用道路が縦横につくられた。
扇端では、集落に隣り合って、工場と病院が建設中である。
天井川部分では、百瀬川の下を道路トンネルが通っている。百瀬川の方が高いことが分かる。

百瀬川と並行する生来川は道路の下を流れ、トンネルにはなっていない。生来川は天井川ではない。
つまり、百瀬川は高い位置を流れる天井川であり、その流れを低い位置を流れる生来川に流せば、百瀬川の洪水被害を防ぐことができる。
このような想定計画で、生来川の河床掘り下げと、川幅拡張が進められた。





1975年 百瀬川扇状地下流から琵琶湖岸までの沖積平野
扇端から琵琶湖までの沖積平野は、地形は三角州、土地利用は水田稲作である。
扇央の伏流水は扇端で湧出する。わき出た地下水は、扇端集落と、水田で利用される。
1967年の図と比較し、1975年には水田が区画整理されたことが分かる。
水田の区画整理の理由は
(1)1区画を広くし、長方形にすると、農業機械・農薬・肥料を使いやすい。
(2)あぜ道(農道)を減らすことで、1戸当たりの水田面積が増加する。
(3)農閑期に区画整理の仕事に出た農民が、高い日当を得ることができる。


 ※ 湖西線は1974年に開通した。京都まで59分なので、農業との兼業が可能になった。



2001年 百瀬川扇状地


2001年 百瀬川扇状地の地形名







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天井川解消計画概要



生来川
百瀬川は天井川であり、洪水の危険がある。
生来川は小川であったが、川幅を広げて川底を掘り下げ、百瀬川の洪水を流す。
百瀬川の扇端集落では、百瀬川の洪水の恐れが解消される。
先ず、百瀬川の水を生来川に落とすために、落差工が建設された。


 
落差工
百瀬川は天井川である。その洪水を遊水池にため、遊水池からあふれた分を、階段(落差工)で、20m下の生来川に流す。
上は百瀬川で天井川、実際は百瀬川の遊水池である。
下は生来川であり、百瀬川の洪水を受ける。




落差工(2004年)
百瀬川遊水池の堤防を切り、ここから生来川に洪水を落とすための落差工建設が始まった。
百瀬川は天井川で高い位置を流れる。遊水池も同じ高さである。
生来川は沖積低地を流れる小川だが、これを拡幅し、百瀬川の洪水を生来川に流す工事である。







落差工(2010年)
百瀬川は天井川を、右から左に流れる。左は琵琶湖方向である。
コンクリートの階段は高さ20m、百瀬川から生来川に、洪水を流す落差工である。
落差工は、上部を鉄板で閉鎖され、使うことができない状態である。




生来川
コンクリートの階段が落差工である。
完成したが、使用できないように、上端が鉄板で閉鎖してある。
時間とカネをかけて改修した生来川には、まだ百瀬川の水が流れていない。



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