ガラッ
今晩は…
いらっしゃい。久しぶりだね。
仕事が忙しくて・・あ、日清焼きそば。具無しで。
今日は具無しで良いんだね。
はい…
なんだかずいぶんやつれたようだなあ。
はい、焼きそば具無しだ。
ズズ…ふう・・ううう。。
何かあったのかい?
ええ。結婚しようと思っていた彼女に振られましてね。
彼女とはお金のない大学時代からの付き合いでした。
月末には2人で具の入ってない焼きそばを良く食べたものです。
貧しかったけど、あの頃は幸せでした。2人とも奨学金を
もらい、アルバイトをしながら苦労して卒業をしました。
就職活動が実り、私は大手商社に、彼女は一般企業の事務に仕事が決まりました。
私たちはお金を貯めて結婚をする事が目標でした。
しかし就職をして給料をもらうようになると、
学生時代の反動でしょうか、少しだけ贅沢を覚えたのです。
商社に勤める私の給料は彼女の倍ほどありました。
ある時、彼女が言いました。
久しぶりに焼きそば作ろうよ
え?昔良く食べてたやつかい?
焼きそばならこの間仕事の接待で使った中華屋の五目海鮮焼きそばが美味かったよ。
今からタクシーで出かけようよ。お金は気にしなくて良いからさ。
そんなやりとりのあと食事を済ませ、部屋に戻ってから別れを切り出されたんです。
今思えば私は思い上がっていたのかもしれません。
収入が良いことを鼻にかけたような態度を取っていたのでしょう…。
ガラッ
こんばんは・・
あっ清美!
キヨシさん・・
すまん!僕が悪かった・・
(隣に座る)
・・今食べているのは・・?
あの頃の焼きそばだよ。もう一度やり直そう!
すみません。私にも同じのをひとつ・・・
ふたり、仲良く手を繋いで帰ってったよ。
お土産に日清焼きそばの袋麺を2つ持たせてあげたさ。
music * velvet velvet / carnation