オオカミになりたい(遺言)

ずっとそばにいるよ

見立多以尽 御座つきをつけたい

2018-12-11 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『御座つきをつけたい』

 

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

松は大夫(たいふ)の打かけは 蔦(つた)の模様に藤色の

チンテンとんだ 面白い 遊びも初手(しょて)は交際(つきあい)が

いつか増長(こう)じて陰密(こつそり)と おやかましゅうの聲(こえ)も絶(たえ) 

話のような文がらを 綺語(のろけ)の種に巻かえし 

長いなじみとなるのも基は 初会席店(や)の坐つきから 

噫(ああ)この寸緒(すんちょ)の一曲は 

戀の実生(みばえ)の まだ二葉町

稗官 轉々堂人記


御座付き(おざつき): 宴席に呼ばれた芸者が最初に弾く三味線音楽 

またその唄。

すんちょ【寸楮】 : 短い手紙





見立多以尽 どふもねむッたい

2018-12-10 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『どうもねむッたい』

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

唐土(もろこし)に日に三たび ねぶる柳あり

之(これ)を号(なずけ)て 眠柳(みんりゅう)という

人に比(たと)えていう時は 夜を以(も)て昼の出稼に

春 初鴉(はつがらす)の声をきかず 秋 桂花(あさがお)の盛見ず

昨日に今日と替(かわり)ゆく 客に枕はかわれども

熟(とけ)どけ 根津の八重垣街(やえがきちょう)

八重がきつくる神殿の 鏡ならねと心なく

素顔をうつす塗物の 漆のような濃情夫(よいひと)に

尽す誠も多かるにや 昼も眠らぬ思いをなすとぞ

轉々堂戯題

 

唐土 : 中国の古称

 

 

 


見立多以尽 手があらひたい

2018-12-09 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『手があらいたい』

 

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

西日を除けて蛭(えび)釣に 絆(もや)いし船も首尾の松

見て見ぬふりの船頭が 捨(すて)てお庫(くら)の石垣を

出這入る蟹も舟虫も 手のたんとある婀娜(あだ)ものは

涼し過ると青簾 おろして絞る肌の汗

嬉の杜と見ゆれども 虚言(うそ)を筑波の夕颪(おろし)

秋にうつるも近かるべし

轉々堂酔禄

 

婀娜者 あだっぽい女。粋な女。



 


見立多以尽 よいのがだしたい

2018-12-08 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『よいのがだしたい』

 

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

摘(つま)んだ形(なり)が つく羽根のかたちに似たる煎餅を

妬(やく)といふ字も白絲(しらいと)の 染るに易(やす)き柳巷(さと)習い

恋風吹な ナアふくなと 金の羽子板 夫(それ)ならで

金玉(きんぎよく)よりも尚尊(なおたか)き

押絵の二字は俳優の 肖像(にがお)え入(いれ)る綿も紡(つ)み

機(はた)も おりおり辻占(つじうら)に 末はかならずよくなるよ

願い叶って嬉しいよ というを守つて 堅固(ものがた)く

勉強するのが雛妓(おしやく)の道ぞと

家暮(やぼ)をいうのも 記者(かきて)の性質(もちまへ)

藍泉散士醉題


衝羽根(つくばね) : 羽子板遊びの羽根

柳巷 : 色町のこと





見立多以尽 どうかかちたい

2018-12-06 | 見立多以盡

月岡芳年が女性のしぐさを「~したい」と描いた美人画

見立多以尽(みたてたいづくし)より

『どうかかちたい』

 

国立国会図書館デジタルコレクション

大蘇芳年筆 

 

詞書

夫(そり)ゃ卑怯です鉄砲を 隠してうつは怪(け)しからない

唯(ただ)一戦に花々しく 勝負をなさいと鹿児島拳

おも城山の篭城も 纏頭(はな)の軍費に勢い労(つか)れ

終(つい)に果敢(はか)なく降参して 身代限りとなる者あれば

節倹家(しまりみせ)だといわれても 他に交際(まじわ)らぬ篭城が

商法上の軍略を除く外(ほか)は 上策なるべし

南茅場街 轉々堂筆記

 

纏頭(はな):歌舞・演芸などをした者に褒美として与える金品。

Weblio古語辞典より