宮城の作家希望

作品など

沈黙の森

2020-10-25 22:09:00 | 小説
はじまりの森
世界が始まりし頃はそう呼ばれていた。
この場所は最初に聖女が現れた場所である。
緑に覆われた大木の茂る巨大な森だった。
大柄な神獣と呼ばれる獣が住む森。

そこから現れた聖女は始まりの聖女と呼ばれた。
だが間も無くして聖女は光の中に消えてしまった。
神獣も姿を消し森は力を失ったかの様に木々が倒れて行った。森は少しずつ縮小して今の大きさになり魔石が獲れる様になる。

魔石はそれ自体が魔力を持ち魔法の使えない者の助けとなった。
やがて魔石を加工する職人が集まり町が商人を呼び街へやがて人々を呼び国が築かれた。
南洋の国ナラの始まり。

それより少し前に海洋国ナーガの地には癒しの力を持つ女性が人々に何やら紙切れ渡し御守りだと言って渡していた。
それは魔石に似た力を持っていた。

その女性はのちの世代にグランデシアの王妃となる人物の祖先である。
御守りの紙切れこそが女神の書。
聖女に助けられた時に盗んだ物だったが彼女は自分の為ではなく人々を癒す為に使った事が幸いしたのか何の咎めも受けなかった。

とは言え、書は本来なら女神かそれに準ずる者が使う者で魔力の消耗は計り知れない。
だが、書に祈りを捧げると魔力が回復したと言う。

しかしそれは聖女を死に追いやる行為である。
聖女は書の癒しが必要だった。更には勝手に使用され聖女の力は失われて行った。
それを補うかの様に森は人々の魔力を吸い出した。
やかて、沈黙の森と呼ばれる事となる。



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