注染③■型紙のこと
注染の型紙を彫る人は、今は都内に4人しかいないそうです。型紙というと伊勢の白子の「伊勢型紙」が有名ですが、注染は、伊勢型紙のような精緻な彫りでは、線が細すぎて注染では表現できないので、伊勢型紙よりは、もう少しザックリとした線の太いものです。しかし型紙の作り方は伊勢型紙と全く同じで、薄い和紙を重ね合わせたものに彫り込み、柿渋加工で強度を強め、さらに紗張りして補強します。注染の型紙と伊勢型紙との一番の違いは、大きさ。伊勢型紙の小紋型紙より、注染の型紙はかなり大きく、約1mあります。
伊勢保さんでは、それぞれの問屋さんや発注先などからオリジナルの型紙を預かっていて、その枚数は正確にはわからないそうで、「多分2万枚といったとこか」と結構多くい。しかしその型紙はコンピューターで管理しているわけではなく、注文があると「このあたりにあったな」とすべて職人さんや社長の頭の中にその所在が記憶されています。1年に1回でも使うと頻度にもよりますが10年は持つそうですが、使わないとかえって傷んでしまうとは不思議な話ですね。
「この型紙なんか人気で毎年使われ、けっこう痛んだきているので、2重に紗張りして、補強して使っているんですよ」と、見せて頂いた型紙は薊の柄でした。