■葛布①秋の七草
葛の花は、秋の七草のひとつで、山野に自生し、大きくなると長さが6メートル以上にもなる蔓草で、縄文時代から日本人に親しまれ、利用されてきました。葛は葉から花、茎、蔓、根まで、そのすべてが暮らしに有用な植物で、全く捨てるところがありません。葛の根は、有名な漢方薬の葛根湯(かっこんとう)やお菓子の葛餅、葛きり、葛湯などの材料になります。また葛の花を乾燥したものは葛花(かっか)と呼ばれ、二日酔いや嘔吐の予防薬としても知られています。さらに葉はたんぱく質が豊富で、牛や馬などの家畜の飼料になり、新芽や若葉は食用にもされています。そして、蔓は繊維を績んで、織り、“葛布”という織物になり、古くから珍重されてきました。また最近では、他の樹木にからみつき、成長も早く葉を茂らせる生命力の強さから、土手や堤防などに植えて土砂防止にしたり、砂漠の緑化にも有用と評価が高まっています。
葛の語源は、奈良県吉野の国栖(くず)から来ているという説と、木や草の枝葉や花を髪に挿したり、飾ることを髻華(うず)といいますが、そこから転じたという説があります。葛は、織物の技術が伝わる前から編んだり、組んだりして使われていましたが、科、楮、藤など同じような植物繊維を糸として織られた古代の布を“木綿(ゆふ)”と総称していました。