MIRO ITO発メディア=アート+メッセージ "The Medium is the message"

写真・映像作家、著述家、本物の日本遺産イニシアティブ+メディアアートリーグ代表。日本の1400年の精神文化を世界発信

空から学ぶことー葛藤を手放す

2007-08-04 18:57:59 | Weblog
空から学ぶことー葛藤を手放す

空を観ることの素晴らしさは、視点が変わることです。
空は多くのことを教えてくれますが、葛藤に満ちた日常にあって、空から学べることは、まず悩みや落胆をいかに手放すか、ということかもしれません。

禅が説くがごとく、「葛藤という束縛」から解放されるためには、「自然や雲の精神そのものになること」「われわれ一人一人に本来備わっているすべての力を解き放つこと」(鈴木大拙)が理想ですが、そこまでジャンプできなくても、一度自分の視点を空の高みにまで、飛翔させることで、何かが変わるかもしれません。

空を見上げていると、全てが瞬時に移り変わるという無常観とともに、それでも空は空であり続ける、という普遍的な力にうたれる思いがします。
その普遍的な力に我が身を預け、すべてをあるがままに受け入れようと決意するなら、いま捕われている経験の別の側面が見えてくるかもしれません。

別の側面とは、苦しみを与えた相手の心の闇だったり、嫉妬や侮蔑などのネガティブな感情だったり…そこまで見え始めたら、相手が差別したり、苦しませる理由は何か、ということも思いつくかもしれません。
といっても、相手の頭の中までを変えることはできないのですが、少なくとも相手と同じレベルで対峙せず、相手も含んだ自分の経験そのものを、あたかも自分の身に起こったことではないことのように眺められるほどの、距離感と冷静さを持つ事が大切です。そうすれば、状況自体を容易に変えられないとしても、辛い状況自体には、もう振り回されなくなります。振り回されなくなることで、原因への洞察を勝ち得、心の中で次の段階を準備できます。

そして太陽が陰り、雨が降り、空が荒れ、嵐があっても、いつかまた日は昇り、太陽が照り出すのを待つのです。
台風シーズンの空の表情は、怒りや悲しみ、葛藤をいかに手放すか、人生という嵐の中で、教えてくれるように思います。

大切なのは、これは私自身の永年の経験ですが、嵐に振り回されず、嵐が過ぎ去るのを、次のステップを準備しながら、忍耐強く待つことです。
忍耐とは、魂の成長のために実に不可欠な階段といえるものですから。

台風の合間に撮った空を眺めながら

伊藤美露

text and photo by miro ito, all rights reserved.
sky over kamiuma, 28/07/2007