夜中の裏森の奥から声がする

駐車場に車を停めて、
自宅まで歩いて帰る。
ふと、裏森の前を通りかかると
何やら人の声がする

『ヒソヒソヒソヒソ…。』
良くは聴き取れないけど、
小さな子供の声の様だ。
幼児の声よりも幼く、
まるで赤子の様な声…。
楽しげな様でもあり哀しげな様な、
不思議な声色。

…って、真夜中ですよ！？
人様の家の裏山に子供がいて良い時間
じゃない。
まさか迷い子？遭難者か？

恐る恐る目を凝らして見ても
見えるは闇ばかり。
何か話してる声だけが聴こえる
…怖い怖い怖い。

幽霊の類？勘弁して下さいよ。
裏森の怪談なんて聴いた事もない。
幽霊なんぞ信じてないケド、
怖いもんは怖い。


無い勇気を振り絞って、
右手に懐中電灯と
左手にノコギリを持って、
裏森を下る。

段々と声が近くなってきた。
『なーん…なーん…なんなん。』
甘える様な切ない様な…。
まさか人様の家の裏森でカップルが
イチャイチャタイム？

…いや？違うな。
姿は見えないが、やはり子供の声の様
だ…。

ザワザワザワザワと木々がざわめく。
私の勇気もそろそろ限界。。


恐怖のあまり引き換えそうと
したその瞬間！！
『な"あ"あ"あ"あ"～～！！…』
と、人間の物とは思えない声が
響き渡ったかと思うや否や

ガサガサガサガサガサガサガサ
ガサガサガサガサ…。
何かが私の前方から
背後にすり抜けて行った様な気配

ぎゃーーー!!



…猫でした。
ははは…、めっちゃ怖かった。
なんて人間っぽい声で鳴くんだ。
野良ニャンコ野郎め…。

あ～あ…冬だってのに
めっちゃ汗かいたよ。
勘弁して下さい。
…やっぱ猫は苦手です。


ところで、娘が新しいヌイグルミを
買ってきた。
【じばにゃん】という名前らしい。


ニャンコの地縛霊だから、
【じばにゃん】なのだそうだ。
地縛霊の人形が売ってるなんて
世も末ですな。