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魅央屋「パロパロミニシアターMAX」

水華ミオの同人テキストサイト。ライトな下ネタありアングラネタありのの13歳以上推奨。嫌いな人は読まないよーに。

カードキャプターさくらパロ『桃矢君の苦悩』R

2005-08-02 | CCさくら
「バイトのねー日は家事にいそしむ…か」
 桃矢は洗濯機に、慣れた手つきで洗濯物をどかどかと放り込んでいた。
 数々のバイトでスケジュールがびっしりの高校生、木之本桃矢のオフの日は、家族三人とローテーションでこなしている家事の日でもあった。彼に完全なる休日はない。勤労学生の鏡である。
「へっ、これはさくらのパンツか」
 桃矢は、木之本家で唯一の女性物の下着をつまみあげて、鼻で笑った。
「怪獣がはくには小さなパンツだがな」
 脚の部分が自分の腕ほどしかない、小さな純白の下着。
「あ?」
 しかし、桃矢は純白であるはずのそれを見て、一瞬目を丸くした。そして、
「おわっ!」
 顔の血の気が一気に引くほどに驚愕した。
「これは……血!?」
 少女の無垢であるはずの下着に、赤い液体が付着していたからである。
「まさか、病気か、あいつ!?」
 桃矢は普段は妹をからかって遊んでいる、さくらからしたら憎たらしい兄だ。しかし、実のところ彼は極度のシスコンであった。
 たとえば、さくらが病気にかかり特効薬が大蛇であると聞けば、密林に飛んでいってアナコンダをも食いちぎってくるだろう。それほどの妹バカなのだ。
「いや……これは」
 桃矢には生まれ持っての、霊能力的な感の鋭さがある。今朝のさくらを見る限りでは、何の異状は感じられなかった。
 さっきも元気に、ローラーブレードで友達の家に出かけたばかりだ。
「もしや……」
 さくらの年頃の少女は、急激的に大人への体に移行していくもの。その一つとして、男にはない女性だけの身体的変化が表れる。それはいわずとしれた。
「生理が……始まったのか?!」
 がーん!
 桃矢は鉄パイプで頭を殴られたような衝撃を受けた。いつまでも子供だと思っていたさくら。他の虫がつかないように影ながら眼光鋭く監視していたさくら。そして、愛しい妹で、一番身近にいる女性であるさくら。できれば鳥かごで外敵にさらすことなく一生涯愛でていたい妹。
 そのさくらが、ついに大人としての機能を備えてしまった。イコール、それはさくらが他の男の物になってしまう可能性が飛躍的に上がってしまう。それは桃矢にとって戦慄を覚えるに十分な事件であった。
 まとめるに、桃矢の鮮明なる思考でここまで考えるのに5秒とかからなかった。
 だが、彼はあまりのショックに洗濯機の前で、小一時間動けなかったのだ。
(ど、ど、どうする……やはり父さんに相談するべきか!?)
 桃矢は情緒不安定気味にリビングをうろつき、今後妹にどう対処するかを悩んでいた。
「いや、父さんは出張で明後日まで帰ってこない……」
 桃矢は、こういうとき母親が生きていてくれたらと、初めて心底思っていた。今までどんな事態も親子三人で乗り越えてきた。だが、今回ばかりは、どんなに秀才な男でも役不足なのだ。
 そういう女性特有の生理現象を教えるのは、母親以上の適任者はいないと思う。しかし、母親はさくらが三歳の時に亡くなっている。無い物ねだりはできない。
 父親不在の今、その役割は自分が担わなくてはならない。桃矢は何度も自分にそう言い聞かせた。だが、未知の領域、妹の繊細な領域にどう入っていったらいいか、不安はどうしても拭えない。脂汗がにじむ。
「さくらは平気そうにしているが、自分の体調の変化にとまどって不安になっているかもしれないのに……だぁああああ!」
 桃矢は自分の無力さを呪い、頭をかきむしって絶叫した。普段は口数が多い方ではなく、クールで通っている彼も、この状況で叫ぶなというのは無理な話であった。
「こうしていてもしかたがない……と、とりあえずだ!」
 桃矢はきっと目を見開くと、ぐっと拳を握った。
「オレに知識がないのなら、専門家に聞けばいい!」
 桃矢は気難しいように見えて、以外に柔軟な男である。わからい事は、素直に人から学ぶ。
 桃矢は玄関に向かい靴を履くと、一目散に事件解決に向けて、ある場所目指して全速力で駆けていったのだった。
・・・その日の夕食後・・・
「ごちそうさまでしたっ」
 珍しくさくらの方が早く食べ終えた。それもそのはず、桃矢の今の心境は、プロポーズの指輪を渡すタイミングを計っている男の、それに近い。口に運んだ物も味など全くわからず、ただ喉だけが異状にカラカラになって、水だけを何杯もおかわりしていた。
 それ以外は、極めていつも通りにふるまっていたので、さくらはすこし怪訝そうにしながらも、あまり気にはしていないようだ。
「よいしょ、と」
 先に食事を終えたさくらが、食器を片づけに席を立とうとした時、いよいよその時がやってきた。
「さ、さくら」
 桃矢が極めて平静を装って妹の名を呼んだ。
「何? お兄ちゃん?」
「あ、あのだな、実はこれを…」
 どさっ。
 桃矢は目を伏せがちに、隣のイスに置いていた紙袋を二つ、食卓に置いた。
「これ、わたしに?」
 兄は目線を横に置いたまま、こくりと頷いた。さくらは桃矢の様子がいつもとあからさまに違うのを不審がっている。
「ま、まあ、何だ、話はそれを見てからだな、うん」
「……じゃあ、開けるよ?」
 さくらは、紙袋の一つを手に取り、ごそごそと中身を取り出した。
「?」
 さくらの手にした物は、どうやら衣服のようだった。広げてみたが、Tシャツほど大きくはない。
「??? 何、これ?」
「それはだな、その、あんまり腹冷やすと体に悪いと思ってな」
「お腹? ……これって、はらまき?」
 桃矢のプレゼントは、まごうことなき腹巻であった。しかも、桜の花びら模様をあしらった、どこで買ったんだ? と疑問したくなる一品だ。
 小学生といえど、10歳も超えると腹巻は似合わないと思うが、もしかしたらさくらマニアの親友である知世なら「さくらちゃん、腹巻姿も超絶可愛いですわ!!!」と言ってくれるかもしれない。
「何ではらまきなの……あと、こっちは……?」
 紙袋には、小島薬局と書かれていた。すでに、中身が医薬品だということは推測できるが、健康体の少女に薬のプレゼントは不可解としか思えないだろう。
 がさごそ……。
「それは……なんだ、これから必要になるだろうと思って買ってきた。でも、これからはお前が買いにいけよ……」
 言いながら、耳まで熱くなる思いをして、しぼりだすように桃矢がぼやく。そして、照れ隠しにマグカップをかたむけた。中身はすでにカラ。それほど緊張で間が持たないのだ。
「さらさーてぃ?」
 中身は生理用品と、ごていねいに子供用鎮痛剤まで入っていた。これは、桃矢が薬局の女性店員に、しどろもどろでジェスチャー混じりに三十分ほど説明して、苦労して手に入れてきた品々である。その姿はあまりに滑稽だったが、その様子を詳しく描写すると彼のイメージとプライドが著しく傷つくので、ご想像にまかせよう。
「あの……お兄ちゃん?」
「な、なんだ?」
「これ……どうするの?」
「ど、どうするのって……それぐらいもう学校で習ったろ。生理の時に使うんだよ」
 桃矢がストレートに言うと、さすがにニブいさくらでも、兄の不可解な行動の全ての線が一本に繋がった。瞬間沸騰、頬がかああっと朱に染まる。
 そして、頭から蒸気機関車のように、音まで出そうなほど勢い良く湯気が立つと、
 だん!
「わたし、まだ生理なんてきてないよっ!」
 テーブルに両手をついて、桃矢に噛みつかんばかりの形相で睨みつけて、ふるふると震えている。
「へ?」
 目が点になる桃矢。聡明な桃矢も、この反応は予測だにしていなかった。よけいなお世話とは言われても仕方がないと思っていたのだが、この答えは想定外である。
「だ、だって、お前、パンツに血が……」
「ほえーっ! あ、あれ、見たの!?」
「あ、ああ、今日洗濯している時に……」
「あれは、ちょっとチョコレート食べ過ぎちゃったのか、急に鼻血出しちゃって、その時たまたま洗濯物を畳んでたの。だから、とっさに近くにあったパンツで顔拭いちゃったの!」
「な……?!」
 歯を剥き出しにして力説する妹に、桃矢は蛇に睨まれた蛙状態である。おそらく、初めてさくらから受けた「威圧と恐怖」であった。
「信じられない! 妹の下着をまじまじと見るなんて!」
「ま、まじまじとなんか見てねぇぞ!」
「お兄ちゃんのヘンタイ!」
 ずどん!
 ずどん!
 ずどん!
 さくらは怪獣が闊歩するように、一歩一歩床を踏み鳴らして二階へと消えていった。
「そうか……オレのフライングだったかぁ」
 この事実に桃矢は嬉しいような、変態呼ばわりされて悲しいような複雑な気分だったが、まだ誰の物にもならずにすむというシスコン魂が勝って顔がちょっとニヤけていた。
 こうして桃矢の心配は杞憂に終わった。しかし、さくらは一日ごとに急成長している。シスコン桃矢の気苦労は、まだまだ始まったばかりである。
 ・・・END・・・

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