「祐一……」
「無視しろ無視……」
登校中の事、川澄舞は少し殺気だっていた。
それもそのはず、自分らの背後には他校生やら社会人やらフリーターなどの、むさくるしい野郎総勢20人がオレ達の後をつけまわしていたからだ。
かなり異様な光景。プレッシャーを感じるのは舞だけではなく、登校中の生徒は駆け足で我先にと学校に逃げ込んでいく。
だが、オレ達には逃げるに逃げられない事情があった。
「舞、この原因 . . . 本文を読む
「相沢君、はい」
「……は?」
寒い中、学校に死に物狂いでたどり着き、暖房で少し暖かくなって、ウトウトして気合い入れて寝ようとしたら、枕になるハズだった机の上に何かが置かれた。
「プレゼントよ」
「顔を上げると、美坂香里が偉そうにオレの事を見下ろしていた」
「二番煎じは芸人としてよくないわね」
「いいんだよ、オレは学生だから。それはそうと、プレゼントに黒板消しを貰ったのは初めてだ」
「貰ったなら . . . 本文を読む
「祐一」
「何だ?」
オレがリビングで寝転がりながらマンガを読みつつテレビを聞くという至福の時を過ごしている時に、名雪にカットインされて少し不機嫌そうに答えてしまった。
「今から商店街に行くんだけど、おつかいがあるなら頼まれるよ」
「じゃあ、広辞苑を頼む」
「えええええええええええっ!」
普段声を張らない名雪が絶叫した。
「驚きすぎだ!」
「冗談だよ」
「ウソつけ! 前にエロ本をリクエストした . . . 本文を読む
※リメイク作品につき、ネタが古いです
「大きな猫さんのぬいぐるみ、欲しいよね」
唐突だった。名雪のこの口調は何かをたかる時の戦法なので、
「オレはいらないと思う」
軽く受け流した。
「私は欲しいの」
「そもそも、大きな猫って、ライオンだろ?」
「そうじゃなくて、大きな、ね、こ、のぬいぐるみが欲しいの」
「そうなのか~」
オレは雑誌から目線を外さずに会話して、気のない合の手を入れる。
「 . . . 本文を読む
※リメイク作品につき、ネタが古いです
「大きな猫さんのぬいぐるみ、欲しいよね」
唐突だった。名雪のこの口調は何かをたかる時の戦法なので、
「オレはいらないと思う」
軽く受け流した。
「私は欲しいの」
「そもそも、大きな猫って、ライオンだろ?」
「そうじゃなくて、大きな、ね、こ、のぬいぐるみが欲しいの」
「そうなのか~」
オレは雑誌から目線を外さずに会話して、わざとらしい合の手を入れる。 . . . 本文を読む
「もーっ、祐一ったら信じられないんだからぁ~っ!」
何やら朝からキッチンが騒がしいな。
名雪と秋子さんがあれだけテンションが高いわけがないので、犯人はおのずと一人にしぼられる。
「それは困ったわね」
秋子さんまで同調している?
オレ、何かやったっけ?
「ちっす~」
「あっ、出たな、でばがめ野郎っ!」
「朝から口汚いな、真琴」
「何よぅ、人がお風呂に入っているところを覗いたヘンタイの分際で . . . 本文を読む
「うーっ、さみっ!」
オレは外から帰ってくるなり、コタツにスライディングするようにして潜り込んだ。
うー、入りたての麻痺した脚と手に赤外線が……あぁ~、染みてきたぁ。ぽかぽかだぁ~。
「……………」
向かいには、先客の名雪がテーブルにアゴを乗せてキツネ目になっている。寝ているのか起きているのかはさだかではない。
ぴと。
「ひゃっ!」
「あ、悪ぃ」
大きめのコタツだが、足をのばしたら名 . . . 本文を読む
「やっと見つけた……」
「誰だよ、お前」
商店街で突如としてオレの前に現れた、ボロ布と殺気を体躯に覆ったアンノウン。
「……あなただけは許さないから」
ヤツがボロ布を派手脱ぎ捨てると、中から出てきたのは見覚えのない幼げな少女だった。少女は切れるような鋭い眼光で、オレをキッと睨みつけてくる。
ただごとではない雰囲気に、オレも思わず腰を落として斜に構えをとる。
「お前に恨まれるような覚えはないぞ . . . 本文を読む
「やばい……」
草木も凍る丑三つ時(うつみつどき)……から一時間経過した冬の午前三時。北国の夜はまだまだ明ける気配はなかった。
と、空をのんびり眺めている場合ではない。
オレは水瀬家に下京してから、最大のピンチに陥っていた。
こともあろうか、盛大に「夢精」をやらかしてしまったのだ。
とりあえずパンツを脱いで、ティッシュで股間とパンツを拭う。
「うわぁ……こりゃ出しましたなぁ」
自分でも . . . 本文を読む
「香里……」
「何?」
「パンツ見えてるぞ……」
香里は椅子に片足あげて靴紐を結んでいた。
当然、膝にスカートの裾が持ち上げられ、下着と生太股がオレの眼前にさらされている。
……スキだらけだぞ、おい。
幸い角度的にオレの席のからしか見えてないようだが。昼休みだし、教室に人はまばらで他には誰も気づいていない。
意外と中学生みたいな事するな、コイツ……。
「見たいの?」
「いや、そうじゃなく . . . 本文を読む
「急げ名雪っ!」
「……うん」
今日もまた、水瀬家の慌ただしい朝が始まった。もっとも慌ただしくしているのは、寝起きの悪い名雪をせかすオレ一人。
なんだかな……。
名雪は反射的に歩いたり返答したりするが、たぶんまだ97%は寝ている。こいつは人間じゃない。
「って、お前まだパジャマじゃないか!」
「……うん」
「早く着替えろっ!」
「……うん」
と、名雪は玄関でいそいそとパジャマのボタンを外し . . . 本文を読む
「ここがゲーセンだ」
「知ってますよ。勤勉で真面目な少女が、ちょっと不良な男の人に連れられてゲームセンターにくるのって、マンガのお約束みたいですね」
「……誰が勤勉で真面目な少女で、誰が不良な男なんだ?」
「私と祐一さんです」
……言い切りやがった。あいかわらずベタが好きなヤツだ。
「そういう設定の方が絵になると思いませんか?」
「……思わない」
そんな訳でオレは、栞を連れて商店街に遊びにきた . . . 本文を読む
「あれ、佐祐理さん?」
「あ、祐一さん、こんにちは」
「3年生はもう登校しなくてもいいんじゃなかったっけ?」
「私、卒業アルバム委員なんです」
「へえ、卒業アルバムこの時期に作るんだ。結構ギリですね」
「ええ、せっかくですから舞の写真もアルバムに載せようと思うんですけど、どれがいいか迷ってたんです」
「ふーん、どんな写真があるんですか?」
佐祐理さんは鞄から、広辞苑ぐらい分厚いアルバムを取り出し . . . 本文を読む
「ねー」
「ん? 何、真琴?」
家の廊下。名雪が自分の部屋から出てきたところを真琴が呼び止めた。祐一や秋子を通さず、自分から名雪と会話をするのは初めてではないだろうか。
「夜に祐一の部屋の前を通ったらさあ、なんか部屋から荒い息が聞こえてくることがあるんだけど、何してんだろ?」
「荒い息?」
「うん、別に他に物音はしないんだけど」
「うーん、何だろうね。カゼとかひいてる様子はなかったし……」
「バ . . . 本文を読む
・・・昼休み・・・
「あたし、ちょっと部室に寄ってから戻るわ」
「わたし、待ってるよ」
「わかったわ、すぐ戻ってくるから」
がらがら。
ばたん。
「そういえば、香里って何の部活に入ってるんだ?」
「祐一、知らなかったの? 香里はSB部だって」
「何、ソレ?」
「たぶん、ソフトボール部」
「……たぶんって何だよ。でも、体育会系だったのか。意外だな。名雪ほどではないけど」
「……何か失礼な事言っ . . . 本文を読む